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第56回SCCJセミナー(オンライン/ライブ配信)SDGs と化粧品の未来 ~環境、資源、ジェンダーを考える~
「第56回SCCJセミナー」 参加レポート
2021年2月19日に開催された「第56回SCCJセミナー」に参加しました。
今回は「SDGsと化粧品の未来~環境、資源、ジェンダーを考える~」と題し、産学多方面の講師を招き、近年グローバルに関心が集まっている「SDGs (持続可能な開発目標)」に焦点を当てた幅広い内容が学べるセミナーであり、参加人数は184名(講師、セミナー委員、事務局合わせて総勢213名)でした。
注目すべきは、多岐にわたる講演内容は勿論のこと“開催形式”であり、COVID-19 感染状況を踏まえたオンライン(Zoomウェビナー)で開催されたことです。夕刻にはフリーディスカッションと質疑応答時間が取られました。
さて、講演内容に翻ると、午前は先ず産官学を経験されてきた笹谷秀光先生からSDGs (17目標)の基礎からビジネスへの応用展開までグローバル視点での日本の状況まで詳細解説下さいました。藤原泰之先生からはPM2.5 を中心に健康面と環境面の課題について詳述頂きました。午後の第1部は産業界より3社の取り組み事例をご紹介頂きました。具体的には味の素株式会社(太田史生氏)よりパルプとヤシ油にフォーカスしたサステナブル調達、株式会社資生堂(宮原令二氏)からは低エネルギー化製剤技術、キユーピー株式会社(倉田幸治氏)からはキャベツと卵殻の用途拡大と、それぞれ具体的なSDGsへの取り組みや成功事例を拝聴することができました。第2部では小松道男先生より海洋プラスチックによる環境問題とその対策技術についてポリ乳酸に焦点を当て分かり易くご紹介頂き、最後はメイクアップアーティスト兼僧侶兼LGBTQ活動家である西村宏堂先生よりメイクアップ技術についてご自身の生い立ちを交えながらジェンダー・多様性の受容といった大変興味深いテーマを講演頂きました。「男らしく、女らしく」は「その人らしく輝く時代」に確実に変化していることを実感できる講演でした。
講演終了後は各講師が6つの会場にスタンバイしての1時間のフリーディスカッションに移行しました。前半は各講師との質疑応答、後半は個別に講師と1対1のディスカッション・相談できるという粋な取り計らいでした。講師の方々と直接質問し議論し、更に個人ベースで深い質問や相談ができたことで参加者の皆さまには非常に有意義な知見が得られたものと確信します。
以上、今回のセミナーに参加してWebで気軽に参加できるアクセスの簡便さと、Face to Faceに近いディスカッションの機会を頂くことができ、COVID-19の影響による新しいセミナーの開催様式が見えた様な気がしました。
セミナー委員や事務局の皆さまにおかれましては事前準備や当日の進行など大変ご苦労様でした。心より感謝してレポートとさせて頂きます。
第56 回SCCJ セミナー 2021 年2 月19 日(金)オンライン開催(講演数:7題/参加者:184名)
テーマ:SDGs と化粧品の未来~環境,資源,ジェンダーを考える~
演題①「ビジネスの必須常識となったSDGs とは何か」
CSR/SDGs コンサルタント,千葉商科大学 教授 笹谷 秀光 先生
講演タイトルのとおり,ビジネスの世界はもちろんのこと,もはや教育や生活の中でも常識となりつつあるSDGs(持続可能な開発目標)について,日本における取り組みの第一人者である演者に講演をいただいた。
前半はSDGs の概要について,従来のESG 投資との関係性も交えながら説明いただいた。特に,5 つのP という考え方は一見把握しづらい17 の目標を俯瞰的に理解するために有用であると感じた。また,チャンスとリスクの両面(SDGs コンパス)からの視点が重要であるという点は,これから取り組む企業にとっても参考になるものと思われる。
後半は日本の状況として,特にESG/SDGs 経営に注力している企業とその成果についてご紹介いただいた。改めてSDGs は今すぐ取り組むべきビジネスの常識となっていること,さらに企業ブランドをデザインし,企業価値を高めるための重要なファクターとなっていることを考えさせられる,貴重な講演であった。
講演②「大気汚染物質とヒトへの健康影響~ PM2.5 を中心に~」
東京薬科大学薬学部 教授 藤原 泰之 先生
本講演では,公衆衛生学の観点から「化学物質の健康影響」を研究されている藤原先生に,基本的な大気汚染物質およびそれらの状況,人体に及ぼす影響についてわかりやすくご講演いただいた。
地球環境下にある主な大気汚染物質は,大きく6 種(二酸化硫黄,二酸化窒素,一酸化炭素,光化学オキシダント,浮遊粒子状物質,微小粒子状物質(PM2.5))に分けられる。現在PM2.5 は,光化学オキシダントについで削減目標である環境基準達成率が低くなっている。
人為起源由来のPM2.5 には多種類の有機汚染物質が含まれているため,それらを吸うことで,肺胞に溜まるなど健康被害が多く報告されている。現在では汚染リスク要因による死亡者数1 位となっているが,近年突然発生したものではなく,大気中濃度は年々改善してきているため,過度に恐れる必要はない。
なお,PM2.5 には物質的な定義がないため,たとえば化粧品原料であっても2.5 μm より小さい粒子であればPM2.5 に位置付けられている。
演題③「持続可能な調達による環境と社会への貢献 味の素グループの取り組み」
味の素株式会社 太田 史生 氏
各企業が環境,社会,経済的に持続可能な事業を行うことを求められる中,味の素グループでは,紙とパーム油が森林破壊に直結する課題と考え,持続可能な調達100%の実現に向けて数々の方針を打ち出し取り組まれてきた。紙の調達については,環境保全と人権問題を盛り込んだ独自のガイドラインを策定し,原則としてFSC® 認証紙を使用するとし,認証外の紙であっても独自の条項を設けることで同等性を確保するように取り組まれていた。パーム油に関してもRSPO への加入後,独
自のガイドラインを策定し,RSPO 認証油の確保に向けてさまざまな取り組みを行われていた。
これら課題について,環境破壊だけではなく,現地で暮らす人たちの生活環境や労働者の安全配慮など,人権を強く意識しながら活動に取り組まれており,そのような視点は,今後,サスティナビリティへの課題に取り組むうえでも不可欠であると理解することができ,とても有益な講演であった。
演題④「乳化化粧品の低エネルギー製造」
株式会社資生堂 宮原 令二 氏
持続可能な開発を考えるにあたり,環境への配慮は欠かせない視点である。容器の再利用等多くの試みがされてきたが,従来のビジネスと比べて品質が下がったり,コストが上がるなどのデメリットも生じるため,特に企業活動にとって持続可能な活動へと昇華しにくい側面もある。
本講演ではエネルギー消費に着目し,化粧品の製造の際に使用されるエネルギー消費量を最小限に抑える試みについて詳細が述べられた。化粧品製造にはその製造プロセス中に加熱工程を加えることは必須となるが,加熱後の冷却プロセスに使うエネルギー消費を抑え,かつ品質の高い製品を作り出すための理論や方法について詳細に解説があった。持続可能な開発のあるべき姿について,多角的にとらえていくと,エネルギー消費も重要な視点であり,今後の化粧品づくりの一指針となり得る講
演であった。
キユーピー株式会社 倉田 幸治 氏
「SDGs(持続可能な開発目標))」が国連サミットにて採択されたことにより,企業へも積極的な取り組みが求
められている。今後のSDGs への取り組みはさまざまな波及効果を生み,大きな市場となることが期待される。循環経済への転換は,「環境と成長の好循環」につなげる新たなビジネスチャンスでありビジネスモデルの転換を図る機会となる。
本講演では,持続可能な社会の実現に向けて,線形経済から循環経済への転換が求められていることや企業として資源循環の捉え方,食品製造業の資源循環活動および具体的な取り組み事例として野菜と卵の資源循環活動,家庭でのフードロス削減の取り組みをご紹介いただいた。
資源循環の取り組みについて,付加価値性の経済性や環境対応の配慮,企業としてのイメージ向上,ブランド価値の向上など,他業界のビジネスモデルを学ぶ良い機会であった。
演題⑥「海洋プラスチック問題の現状と生分解性プラスチック応用技術の国際動向」
小松技術士事務所 小松 道男 氏
石油や天然ガスから作られるプラスチックは,分解されることなく海に流され波で砕かれてマイクロプラスチックとなる。2050 年には魚類の総重量を超えることが予想されており,表面に有害なPCB などが濃縮されるため海洋生物や人体への影響が懸念されている。
プラスチックは石油由来かバイオマス由来かの軸と,非分解か生分解かの軸で4 つに分かれ,持続可能な社会の実現を目指しバイオマス由来や生分解性プラスチックの普及が求められている。ポリ乳酸やポリヒドロキシアルカン酸などが双方に該当し,厚さ0.65 mm の美しい透明なカップや,天然繊維やガラス繊維との混合による強化,粉砕した陶器や木材との混合など,生分解性にデザイン性と耐久性を兼ね備えた素材や製品への応用が進められている。
本講演により,プラスチックがもたらす環境への影響と生分解性プラスチックの応用に加え,化粧品容器への活用における利点と課題について学ぶことができた。
演題⑦「性別を超えるメイクアップ」
メイクアップアーティスト 西村 宏堂 氏
本講演では,メイクアップアーティストであり,僧侶であり,LGBTQ 活動家という立場から,メイクアップ技術に関する話題を軸にお話しいただきながら,これからのジェンダーの在り方を考えるうえで非常に重要なメッセージをいただいた。ご自身のメイクアップアーティストとしての経験をもとに,身体が男性の方をメイクするうえで重要なポイント(口の周りの陰や汗,テカリ対策)について,実演も交えながら説明いただき,大変参考になる内容であった。
また,これからは「男性らしく,女性らしく」という表現ではなく,「その人らしさ」を表現することが大切であり,日本では今も男女を二分化するような商品提案が主流であるが,世界的にはすでに大きく変化しており,メイクブランドが男性の体をもつモデルを起用したり,トランスジェンダーの女性がヘアケアブランドに起用されている事例などは非常に考えさせられる話題であった。
今後の化粧品業界が,より多様性を認め,人種や性別を問わずすべての人が「自分らしく輝く」社会の実現に貢献するための,大きな方向性を示していただいたと感じている。
2021年2月19日に開催された「第56回SCCJセミナー」に参加しました。
今回は「SDGsと化粧品の未来~環境、資源、ジェンダーを考える~」と題し、産学多方面の講師を招き、近年グローバルに関心が集まっている「SDGs (持続可能な開発目標)」に焦点を当てた幅広い内容が学べるセミナーであり、参加人数は184名(講師、セミナー委員、事務局合わせて総勢213名)でした。
注目すべきは、多岐にわたる講演内容は勿論のこと“開催形式”であり、COVID-19 感染状況を踏まえたオンライン(Zoomウェビナー)で開催されたことです。夕刻にはフリーディスカッションと質疑応答時間が取られました。
さて、講演内容に翻ると、午前は先ず産官学を経験されてきた笹谷秀光先生からSDGs (17目標)の基礎からビジネスへの応用展開までグローバル視点での日本の状況まで詳細解説下さいました。藤原泰之先生からはPM2.5 を中心に健康面と環境面の課題について詳述頂きました。午後の第1部は産業界より3社の取り組み事例をご紹介頂きました。具体的には味の素株式会社(太田史生氏)よりパルプとヤシ油にフォーカスしたサステナブル調達、株式会社資生堂(宮原令二氏)からは低エネルギー化製剤技術、キユーピー株式会社(倉田幸治氏)からはキャベツと卵殻の用途拡大と、それぞれ具体的なSDGsへの取り組みや成功事例を拝聴することができました。第2部では小松道男先生より海洋プラスチックによる環境問題とその対策技術についてポリ乳酸に焦点を当て分かり易くご紹介頂き、最後はメイクアップアーティスト兼僧侶兼LGBTQ活動家である西村宏堂先生よりメイクアップ技術についてご自身の生い立ちを交えながらジェンダー・多様性の受容といった大変興味深いテーマを講演頂きました。「男らしく、女らしく」は「その人らしく輝く時代」に確実に変化していることを実感できる講演でした。
講演終了後は各講師が6つの会場にスタンバイしての1時間のフリーディスカッションに移行しました。前半は各講師との質疑応答、後半は個別に講師と1対1のディスカッション・相談できるという粋な取り計らいでした。講師の方々と直接質問し議論し、更に個人ベースで深い質問や相談ができたことで参加者の皆さまには非常に有意義な知見が得られたものと確信します。
以上、今回のセミナーに参加してWebで気軽に参加できるアクセスの簡便さと、Face to Faceに近いディスカッションの機会を頂くことができ、COVID-19の影響による新しいセミナーの開催様式が見えた様な気がしました。
セミナー委員や事務局の皆さまにおかれましては事前準備や当日の進行など大変ご苦労様でした。心より感謝してレポートとさせて頂きます。
SCCJ広報委員 石田 賢哉(高砂香料工業株式会社)
第56 回SCCJ セミナー 2021 年2 月19 日(金)オンライン開催(講演数:7題/参加者:184名)
テーマ:SDGs と化粧品の未来~環境,資源,ジェンダーを考える~
演題①「ビジネスの必須常識となったSDGs とは何か」
CSR/SDGs コンサルタント,千葉商科大学 教授 笹谷 秀光 先生
講演タイトルのとおり,ビジネスの世界はもちろんのこと,もはや教育や生活の中でも常識となりつつあるSDGs(持続可能な開発目標)について,日本における取り組みの第一人者である演者に講演をいただいた。
前半はSDGs の概要について,従来のESG 投資との関係性も交えながら説明いただいた。特に,5 つのP という考え方は一見把握しづらい17 の目標を俯瞰的に理解するために有用であると感じた。また,チャンスとリスクの両面(SDGs コンパス)からの視点が重要であるという点は,これから取り組む企業にとっても参考になるものと思われる。
後半は日本の状況として,特にESG/SDGs 経営に注力している企業とその成果についてご紹介いただいた。改めてSDGs は今すぐ取り組むべきビジネスの常識となっていること,さらに企業ブランドをデザインし,企業価値を高めるための重要なファクターとなっていることを考えさせられる,貴重な講演であった。
(オルビス株式会社 工藤 大樹)
講演②「大気汚染物質とヒトへの健康影響~ PM2.5 を中心に~」
東京薬科大学薬学部 教授 藤原 泰之 先生
本講演では,公衆衛生学の観点から「化学物質の健康影響」を研究されている藤原先生に,基本的な大気汚染物質およびそれらの状況,人体に及ぼす影響についてわかりやすくご講演いただいた。
地球環境下にある主な大気汚染物質は,大きく6 種(二酸化硫黄,二酸化窒素,一酸化炭素,光化学オキシダント,浮遊粒子状物質,微小粒子状物質(PM2.5))に分けられる。現在PM2.5 は,光化学オキシダントについで削減目標である環境基準達成率が低くなっている。
人為起源由来のPM2.5 には多種類の有機汚染物質が含まれているため,それらを吸うことで,肺胞に溜まるなど健康被害が多く報告されている。現在では汚染リスク要因による死亡者数1 位となっているが,近年突然発生したものではなく,大気中濃度は年々改善してきているため,過度に恐れる必要はない。
なお,PM2.5 には物質的な定義がないため,たとえば化粧品原料であっても2.5 μm より小さい粒子であればPM2.5 に位置付けられている。
(アサヌマコーポレーション株式会社 栗田 知子)
演題③「持続可能な調達による環境と社会への貢献 味の素グループの取り組み」
味の素株式会社 太田 史生 氏
各企業が環境,社会,経済的に持続可能な事業を行うことを求められる中,味の素グループでは,紙とパーム油が森林破壊に直結する課題と考え,持続可能な調達100%の実現に向けて数々の方針を打ち出し取り組まれてきた。紙の調達については,環境保全と人権問題を盛り込んだ独自のガイドラインを策定し,原則としてFSC® 認証紙を使用するとし,認証外の紙であっても独自の条項を設けることで同等性を確保するように取り組まれていた。パーム油に関してもRSPO への加入後,独
自のガイドラインを策定し,RSPO 認証油の確保に向けてさまざまな取り組みを行われていた。
これら課題について,環境破壊だけではなく,現地で暮らす人たちの生活環境や労働者の安全配慮など,人権を強く意識しながら活動に取り組まれており,そのような視点は,今後,サスティナビリティへの課題に取り組むうえでも不可欠であると理解することができ,とても有益な講演であった。
(株式会社日本色材工業研究所 佐藤 正幸)
演題④「乳化化粧品の低エネルギー製造」
株式会社資生堂 宮原 令二 氏
持続可能な開発を考えるにあたり,環境への配慮は欠かせない視点である。容器の再利用等多くの試みがされてきたが,従来のビジネスと比べて品質が下がったり,コストが上がるなどのデメリットも生じるため,特に企業活動にとって持続可能な活動へと昇華しにくい側面もある。
本講演ではエネルギー消費に着目し,化粧品の製造の際に使用されるエネルギー消費量を最小限に抑える試みについて詳細が述べられた。化粧品製造にはその製造プロセス中に加熱工程を加えることは必須となるが,加熱後の冷却プロセスに使うエネルギー消費を抑え,かつ品質の高い製品を作り出すための理論や方法について詳細に解説があった。持続可能な開発のあるべき姿について,多角的にとらえていくと,エネルギー消費も重要な視点であり,今後の化粧品づくりの一指針となり得る講
演であった。
(株式会社資生堂 松井 隆)
演題⑤「キユーピーグループにおける未利用資源を活用した資源環境の推進」キユーピー株式会社 倉田 幸治 氏
「SDGs(持続可能な開発目標))」が国連サミットにて採択されたことにより,企業へも積極的な取り組みが求
められている。今後のSDGs への取り組みはさまざまな波及効果を生み,大きな市場となることが期待される。循環経済への転換は,「環境と成長の好循環」につなげる新たなビジネスチャンスでありビジネスモデルの転換を図る機会となる。
本講演では,持続可能な社会の実現に向けて,線形経済から循環経済への転換が求められていることや企業として資源循環の捉え方,食品製造業の資源循環活動および具体的な取り組み事例として野菜と卵の資源循環活動,家庭でのフードロス削減の取り組みをご紹介いただいた。
資源循環の取り組みについて,付加価値性の経済性や環境対応の配慮,企業としてのイメージ向上,ブランド価値の向上など,他業界のビジネスモデルを学ぶ良い機会であった。
(東色ピグメント株式会社 鈴木 利宏)
小松技術士事務所 小松 道男 氏
石油や天然ガスから作られるプラスチックは,分解されることなく海に流され波で砕かれてマイクロプラスチックとなる。2050 年には魚類の総重量を超えることが予想されており,表面に有害なPCB などが濃縮されるため海洋生物や人体への影響が懸念されている。
プラスチックは石油由来かバイオマス由来かの軸と,非分解か生分解かの軸で4 つに分かれ,持続可能な社会の実現を目指しバイオマス由来や生分解性プラスチックの普及が求められている。ポリ乳酸やポリヒドロキシアルカン酸などが双方に該当し,厚さ0.65 mm の美しい透明なカップや,天然繊維やガラス繊維との混合による強化,粉砕した陶器や木材との混合など,生分解性にデザイン性と耐久性を兼ね備えた素材や製品への応用が進められている。
本講演により,プラスチックがもたらす環境への影響と生分解性プラスチックの応用に加え,化粧品容器への活用における利点と課題について学ぶことができた。
(株式会社ノエビア 新垣 健太)
演題⑦「性別を超えるメイクアップ」
メイクアップアーティスト 西村 宏堂 氏
本講演では,メイクアップアーティストであり,僧侶であり,LGBTQ 活動家という立場から,メイクアップ技術に関する話題を軸にお話しいただきながら,これからのジェンダーの在り方を考えるうえで非常に重要なメッセージをいただいた。ご自身のメイクアップアーティストとしての経験をもとに,身体が男性の方をメイクするうえで重要なポイント(口の周りの陰や汗,テカリ対策)について,実演も交えながら説明いただき,大変参考になる内容であった。
また,これからは「男性らしく,女性らしく」という表現ではなく,「その人らしさ」を表現することが大切であり,日本では今も男女を二分化するような商品提案が主流であるが,世界的にはすでに大きく変化しており,メイクブランドが男性の体をもつモデルを起用したり,トランスジェンダーの女性がヘアケアブランドに起用されている事例などは非常に考えさせられる話題であった。
今後の化粧品業界が,より多様性を認め,人種や性別を問わずすべての人が「自分らしく輝く」社会の実現に貢献するための,大きな方向性を示していただいたと感じている。
(株式会社マンダム 志水 弘典)