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第32回「SCCJセミナー」毛穴周りのサイエンス―毛穴周りの皮膚科学から毛穴かくしメークアップまでー
第32回SCCJセミナー レポート 2007.10.18
■近畿大学医学部付属病院「女性外来(美容皮膚専門)」での毛穴治療とは。
(そのほか、医療機関で行われている毛穴治療とは・・・)
近畿大学医学部皮膚科 小西 奈津子 先生
医療現場における最近の毛穴治療の実際と課題を、近畿大学医学部女性外来での治療実例を交えて解説された。毛穴は医学的には、開(かい)大毛孔(だいもうこう)と呼ぶが明確な定義はなく、50倍のマイクロスコープでも毛穴として確認できないものを正常毛穴とみなしている。若い世代では、過剰な皮脂が毛穴に貯留することにより毛穴が発生するのに対して、40〜50歳代では毛穴周辺のコラーゲンの減少、いわゆる「たるみ」により毛穴が目立つようになる。毛穴治療の基本は創傷治癒の概念であり、一般的にはレーザー治療やケミカルピーリング、光治療(IPL)などの治療によって、コラーゲンの増生を促し毛穴の目立ちにくくする手法がとられている。現状の課題は、実際の毛穴治療は長い時間がかかり、現時点では即効性のある治療法はないことである。また、治療効果が実感してもらいにくく、臨床的には十分な効果が現れているにもかかわらず、患者側の実感度が低い場合もあり、近畿大学の女性外来では、治療前後の皮膚の毛孔数と総面積、毛孔1個あたりの面積の定量的計測による治療効果の確認が行われている。医療現場での実例を多くのスライドで紹介されるとともに、実際に直面している課題についてわかりやすく解説され、毛穴ケア化粧品の開発に対して示唆に富んだ講演であった。(担当:南野美紀、(株)ベルヴィーヌ)
■にきび総論−皮膚科ではどうしているのか−
慶応義塾大学医学部皮膚科 海老原 全 先生
本講演では、ニキビが脂腺疾患の一種であるという観点から、前半は酒さ、口囲皮膚炎・酒さ用皮膚炎などの、ざそう以外の皮脂が関係する疾患について、多くの臨床写真とともにわかりやすく解説された。後半はニキビについて、基礎的な症状分類や病態、ニキビの発生機序、さらに最近のニキビの治療の傾向として、発症機序をふまえた戦略がとられるようになったことが紹介された。具体的には、コメド形成による非炎症性のニキビの場合、基本的戦略として毛包閉塞や皮脂貯留解除を目的とした治療を実施するが、これまで一般的に行われてきたコメド圧出や洗顔指導、イオウ含有製剤の外用にかわり、近年、主流になっているのが、ケミカルピーリングである。この治療は、閉塞部分の開放だけでなく、抗脂腺作用や抗炎症作用、コラーゲンの増生などの複合的な作用によると考えられており、良好な治療効果があることが紹介された。次に炎症時期の場合の治療として、現在は抗炎症性作用のある抗菌剤や、炎症抑制のためのステロイド剤の投与が主となることが紹介され、今後、日本で承認が見込まれているレチノイド類似物質の登場で、ニキビ治療が大きく変わることが期待されていると結ばれた。これまでのニキビケアの考え方について改めて考えさせられる提言に富んだ講演であった。(南野美紀)
■クチコミから見る「毛穴」に対する消費者の悩みとニーズ
(株)アイスタイル・マーケティングソリューション 濱田 兼作 氏
美容・化粧品に特化したコミュニティーサイト@cosmeに登録しているユーザーによる商品評価情報「クチコミ」に寄せられる情報は、3000〜4000件/日ペースで蓄積されている。07年6月から3ヶ月間に寄せられた「クチコミ」の中で、「毛穴」という言葉を含む「クチコミ」の情報を解析した結果を分析した。クチコミから読み取れる毛穴悩みは①毛穴の開き②毛穴の汚れ③ニキビの3つで、この悩みは若い世代の「ニキビ」「黒ずみ毛穴」の目立ちから、年齢が進むにつれて多くなる肌のタルミによる「目立ち毛穴」へと変化している。毛穴に対する効果の実感は、「はり」などの肌の改善効果が「毛穴」に対する効果の実感を得ている。自分の肌にピッタリ合った商品であったかがキーポイントとなる。「毛穴」アイテムは「取り除く」アイテムから「与える」アイテムへと変化している。(担当:塩原みゆき、(株)エフシージー総合研究所)
■毛穴・皮脂の計測方法と実態
(株)カネボウ化粧品 製品保証研究所 村上 泉子 氏
毛穴および皮脂の計測方法の紹介とともに、毛穴、皮脂のヒト皮膚における部位差、年齢差、毛穴形状に及ぼす因子などについて報告した。毛穴の計測については、画像解析を用いた2次元処理(例えばRobo Skin Analazer)と3次元形状解析(共焦点レーザー顕微鏡法:超深度形状測定顕微鏡VK-8500)の手法を用いて、毛穴の実態について把握したデータを開示した。(1)毛穴の目立ち(2)毛穴の形状ともに、40代をピークに多く変化し、40代での毛穴の目立ち、毛穴形状の変化が顕著であることが分かった。(3)毛穴形状と皮膚生理パラメータとの関係は、皮膚開口部の面積と皮膚弾力性、皮膚柔軟性との相関性が高く、20代では皮膚柔軟性と、40代では皮膚弾力性とより強く関連していることが分かった。また40代では顎、頬上などの加齢変化が大きく、部位差が大きくなった。(塩原みゆき)
■新たな毛穴収縮薬剤グリシルグリシンの開発
(株)資生堂 飯田 年以 氏
様々な年齢の女性にとって顔の毛穴の目立ちは肌に関する悩みの上位に挙げられている。目立つ毛穴は毛孔部の出口周囲がすり鉢状に凹んでおり、この部分の角層は、不全角化状態であることを見出した。毛穴の目立つ人は、目立たない人に比べ皮脂分泌量が多くなる傾向があり、さらに不飽和脂肪酸の割合が高く、目立つ毛穴の一因が不飽和脂肪酸であることを明らかにした。更にその機序を検討した結果、オレイン酸が表皮細胞の特定の受容体を介してカルシウムイオン濃度やサイトカイン産生を高め、毛穴周囲の角化異常を引き起こし、目立つ毛穴構造となることが示唆された。
これらの作用への抑制効果が期待される化合物を選定した結果、グリシルグリシンを見出し毛穴への効果を検証した。グリシルグリシン配合溶液は2ヶ月連用塗布で毛穴面積が無配合と比較して有意に小さくなることを確認した。(担当:川上喜美夫、牛乳石鹸共進社(株))
■頬の表皮構造による毛穴目立ちとその改善へのアプローチ
花王(株) 西島 貴史 氏
頬における毛穴の目立ちは毛穴の開きが原因であり、これは毛孔周囲がロート状に凹んでいることによるものである。生体用共焦点レーザー顕微鏡を用いて毛穴周囲の皮膚内部を観察した結果、表面の凹みに一致して真皮乳頭が伸長し、表皮の肥厚した特異的な表皮構造を見出した。毛穴の目立ちを改善するには、この表皮構造を変化させることが有効であると考え、表皮自体を収縮させることに着目した。リゾフォスファチジン酸(LPA)、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の生理活性脂質と類似の構造を持つリン酸化グリセリルエーテル誘導体に表皮細胞の収縮力を促進する作用があることを発見した。リン酸化グリセリルエーテルの毛穴の目立ちへの有効性を検証した結果、表皮構造を改善し、頬の毛穴周囲の凹み面積を減少した。(川上喜美夫)
■毛穴補整用二剤型コンシーラーの開発
(株)コーセー 栗林 さつき 氏
近年、「毛穴の目立ち」を肌の悩みの上位に挙げる女性が増え、毛穴の悩みに対応したスキンケアやメイクアップ化粧料のニーズが高まっている。塗布するだけで毛穴や肌のキメが目立たないことを実感できる新たなメイクアップ化粧料の開発を目指した。
ソフトフォーカス効果と耐皮脂性に優れ、毛穴補整効果の高い新規フッ素変性シリコーンゲルを開発した。さらにシリコーンゲルのソフトフォーカス効果を高めるために6種類の粉体の光学特性を評価し、拡散反射・拡散透過に優れた2種の粉体(シリコーンパウダー、多孔質シリカパウダー)を選択した。シリコーンゲルを配合したジェルの上にルースパウダーとして別途塗布する毛穴補整用二剤型コンシーラーを開発した。この毛穴補整用コンシーラーを使用することにより、開いた毛穴も殆ど目立たない滑らかな質感の肌に補整することができた。(川上喜美夫)
■近畿大学医学部付属病院「女性外来(美容皮膚専門)」での毛穴治療とは。
(そのほか、医療機関で行われている毛穴治療とは・・・)
近畿大学医学部皮膚科 小西 奈津子 先生
医療現場における最近の毛穴治療の実際と課題を、近畿大学医学部女性外来での治療実例を交えて解説された。毛穴は医学的には、開(かい)大毛孔(だいもうこう)と呼ぶが明確な定義はなく、50倍のマイクロスコープでも毛穴として確認できないものを正常毛穴とみなしている。若い世代では、過剰な皮脂が毛穴に貯留することにより毛穴が発生するのに対して、40〜50歳代では毛穴周辺のコラーゲンの減少、いわゆる「たるみ」により毛穴が目立つようになる。毛穴治療の基本は創傷治癒の概念であり、一般的にはレーザー治療やケミカルピーリング、光治療(IPL)などの治療によって、コラーゲンの増生を促し毛穴の目立ちにくくする手法がとられている。現状の課題は、実際の毛穴治療は長い時間がかかり、現時点では即効性のある治療法はないことである。また、治療効果が実感してもらいにくく、臨床的には十分な効果が現れているにもかかわらず、患者側の実感度が低い場合もあり、近畿大学の女性外来では、治療前後の皮膚の毛孔数と総面積、毛孔1個あたりの面積の定量的計測による治療効果の確認が行われている。医療現場での実例を多くのスライドで紹介されるとともに、実際に直面している課題についてわかりやすく解説され、毛穴ケア化粧品の開発に対して示唆に富んだ講演であった。(担当:南野美紀、(株)ベルヴィーヌ)
■にきび総論−皮膚科ではどうしているのか−
慶応義塾大学医学部皮膚科 海老原 全 先生
本講演では、ニキビが脂腺疾患の一種であるという観点から、前半は酒さ、口囲皮膚炎・酒さ用皮膚炎などの、ざそう以外の皮脂が関係する疾患について、多くの臨床写真とともにわかりやすく解説された。後半はニキビについて、基礎的な症状分類や病態、ニキビの発生機序、さらに最近のニキビの治療の傾向として、発症機序をふまえた戦略がとられるようになったことが紹介された。具体的には、コメド形成による非炎症性のニキビの場合、基本的戦略として毛包閉塞や皮脂貯留解除を目的とした治療を実施するが、これまで一般的に行われてきたコメド圧出や洗顔指導、イオウ含有製剤の外用にかわり、近年、主流になっているのが、ケミカルピーリングである。この治療は、閉塞部分の開放だけでなく、抗脂腺作用や抗炎症作用、コラーゲンの増生などの複合的な作用によると考えられており、良好な治療効果があることが紹介された。次に炎症時期の場合の治療として、現在は抗炎症性作用のある抗菌剤や、炎症抑制のためのステロイド剤の投与が主となることが紹介され、今後、日本で承認が見込まれているレチノイド類似物質の登場で、ニキビ治療が大きく変わることが期待されていると結ばれた。これまでのニキビケアの考え方について改めて考えさせられる提言に富んだ講演であった。(南野美紀)
■クチコミから見る「毛穴」に対する消費者の悩みとニーズ
(株)アイスタイル・マーケティングソリューション 濱田 兼作 氏
美容・化粧品に特化したコミュニティーサイト@cosmeに登録しているユーザーによる商品評価情報「クチコミ」に寄せられる情報は、3000〜4000件/日ペースで蓄積されている。07年6月から3ヶ月間に寄せられた「クチコミ」の中で、「毛穴」という言葉を含む「クチコミ」の情報を解析した結果を分析した。クチコミから読み取れる毛穴悩みは①毛穴の開き②毛穴の汚れ③ニキビの3つで、この悩みは若い世代の「ニキビ」「黒ずみ毛穴」の目立ちから、年齢が進むにつれて多くなる肌のタルミによる「目立ち毛穴」へと変化している。毛穴に対する効果の実感は、「はり」などの肌の改善効果が「毛穴」に対する効果の実感を得ている。自分の肌にピッタリ合った商品であったかがキーポイントとなる。「毛穴」アイテムは「取り除く」アイテムから「与える」アイテムへと変化している。(担当:塩原みゆき、(株)エフシージー総合研究所)
■毛穴・皮脂の計測方法と実態
(株)カネボウ化粧品 製品保証研究所 村上 泉子 氏
毛穴および皮脂の計測方法の紹介とともに、毛穴、皮脂のヒト皮膚における部位差、年齢差、毛穴形状に及ぼす因子などについて報告した。毛穴の計測については、画像解析を用いた2次元処理(例えばRobo Skin Analazer)と3次元形状解析(共焦点レーザー顕微鏡法:超深度形状測定顕微鏡VK-8500)の手法を用いて、毛穴の実態について把握したデータを開示した。(1)毛穴の目立ち(2)毛穴の形状ともに、40代をピークに多く変化し、40代での毛穴の目立ち、毛穴形状の変化が顕著であることが分かった。(3)毛穴形状と皮膚生理パラメータとの関係は、皮膚開口部の面積と皮膚弾力性、皮膚柔軟性との相関性が高く、20代では皮膚柔軟性と、40代では皮膚弾力性とより強く関連していることが分かった。また40代では顎、頬上などの加齢変化が大きく、部位差が大きくなった。(塩原みゆき)
■新たな毛穴収縮薬剤グリシルグリシンの開発
(株)資生堂 飯田 年以 氏
様々な年齢の女性にとって顔の毛穴の目立ちは肌に関する悩みの上位に挙げられている。目立つ毛穴は毛孔部の出口周囲がすり鉢状に凹んでおり、この部分の角層は、不全角化状態であることを見出した。毛穴の目立つ人は、目立たない人に比べ皮脂分泌量が多くなる傾向があり、さらに不飽和脂肪酸の割合が高く、目立つ毛穴の一因が不飽和脂肪酸であることを明らかにした。更にその機序を検討した結果、オレイン酸が表皮細胞の特定の受容体を介してカルシウムイオン濃度やサイトカイン産生を高め、毛穴周囲の角化異常を引き起こし、目立つ毛穴構造となることが示唆された。
これらの作用への抑制効果が期待される化合物を選定した結果、グリシルグリシンを見出し毛穴への効果を検証した。グリシルグリシン配合溶液は2ヶ月連用塗布で毛穴面積が無配合と比較して有意に小さくなることを確認した。(担当:川上喜美夫、牛乳石鹸共進社(株))
■頬の表皮構造による毛穴目立ちとその改善へのアプローチ
花王(株) 西島 貴史 氏
頬における毛穴の目立ちは毛穴の開きが原因であり、これは毛孔周囲がロート状に凹んでいることによるものである。生体用共焦点レーザー顕微鏡を用いて毛穴周囲の皮膚内部を観察した結果、表面の凹みに一致して真皮乳頭が伸長し、表皮の肥厚した特異的な表皮構造を見出した。毛穴の目立ちを改善するには、この表皮構造を変化させることが有効であると考え、表皮自体を収縮させることに着目した。リゾフォスファチジン酸(LPA)、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の生理活性脂質と類似の構造を持つリン酸化グリセリルエーテル誘導体に表皮細胞の収縮力を促進する作用があることを発見した。リン酸化グリセリルエーテルの毛穴の目立ちへの有効性を検証した結果、表皮構造を改善し、頬の毛穴周囲の凹み面積を減少した。(川上喜美夫)
■毛穴補整用二剤型コンシーラーの開発
(株)コーセー 栗林 さつき 氏
近年、「毛穴の目立ち」を肌の悩みの上位に挙げる女性が増え、毛穴の悩みに対応したスキンケアやメイクアップ化粧料のニーズが高まっている。塗布するだけで毛穴や肌のキメが目立たないことを実感できる新たなメイクアップ化粧料の開発を目指した。
ソフトフォーカス効果と耐皮脂性に優れ、毛穴補整効果の高い新規フッ素変性シリコーンゲルを開発した。さらにシリコーンゲルのソフトフォーカス効果を高めるために6種類の粉体の光学特性を評価し、拡散反射・拡散透過に優れた2種の粉体(シリコーンパウダー、多孔質シリカパウダー)を選択した。シリコーンゲルを配合したジェルの上にルースパウダーとして別途塗布する毛穴補整用二剤型コンシーラーを開発した。この毛穴補整用コンシーラーを使用することにより、開いた毛穴も殆ど目立たない滑らかな質感の肌に補整することができた。(川上喜美夫)