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第36回「SCCJセミナー」やさしく洗浄する技術―人と環境に配慮する洗浄について考える―

  • 第36回セミナー会場
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  • フリーディスカッションの模様
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【第36回SCCJセミナー】
2010年10月28日(木)パシフィコ横浜にて開催。
当日は約290名の皆様にご参加頂きました。
セミナー受講後は講師先生方とのフリーディスカッションにて、参加者からの質問等にお答え頂き有意義な時間となりました。
SCCJセミナー委員会よりレポートが届きましたので写真とともに掲載を致します。
また、こちらのレポートはSCCJ Journal Vol.44-4(12月末発行号)へ掲載予定です。






講演①「やさしい洗浄の基礎」千葉科学大学 坂本 一民 氏

洗浄とは不要なもの(汚れ)を取り除く行為であるが、身体の洗浄においては部位により不要な成分、本来保持されるべき成分が異なる。種々の化粧品が用いられる現在では、本来の機能を超えて蓄積した成分の洗浄もポイントとなっている。界面活性剤が汚れを取り除くメカニズム、界面活性剤の皮膚への影響と残留性および評価方法について、基礎的な面からお話をしていただいた。1ヶ月ほど前に開催されたばかりの第26回IFSCCにおける研究発表内容もふんだんに交えながら、洗浄剤の使われ方の歴史的変遷を説明された。化粧品業界における日本の潜在的技術力は非常に高いが、まだビジネスとして生かしきれていないので、特に若手に対して如何なく力を発揮してほしいと締めくくった。
(今井健仁/ホーユー(株))
 

講演② 「洗浄システムにおける泡のサイエンス」山形大学 野々村 美宗 氏

単一で存在するシャボン玉(bubble)はほぼ完全に球で科学的にかなり解明されているが、それが多数集合した泡(foam)の構造は非常に複雑で現在でも十分には解明されておらず、今のところは五角形を面にもつ12面体+14面体が最も近いのではないかと考えられている。身近なものを例に、泡の三次元構造、生成と消滅についての観察および研究事例と、破裂しても消滅しない泡、固体粒子によって安定化された泡といった新しい知見も紹介された。日常生活においても幅広く利用されている泡であるが、そこには最先端の科学をもってしても解明されていないテクノロジーが未だに込められており、まだまだ未知の可能性があることを示唆する講演であった。
(今井健仁/ホーユー(株))
 

講演③「ヒトと地球にやさしく洗う〜低刺激性・天然系洗浄用界面活性剤の開発と応用〜」
味の素(株) 押村 英子 氏

洗浄用界面活性剤開発の歴史は、石鹸の使用から合成界面活性剤に、そして、低刺激化への努力と天然系界面活性剤の着目を経て現在に至る。近年、ヒトにやさしい洗浄料には「洗いながら残す」というスキンケア機能が求められ、低刺激性の処方技術開発に関心が高い。また、地球にやさしいという漠然とした目的に対し、原料の生分解性やトレーサビリティー確保、持続可能性やグリーンケミストリーに配慮した製品開発や、天然系、環境対応の視点から派生し、欧米を中心に市場が拡大しているナチュラル・オーガニック化粧品の台頭が見られる。こうしたヒトと地球にやさしい洗浄料開発においては、天然系、植物性界面活性剤の代表であるN−アシルアミノ酸塩とアルキルグルコシドの利用例が多い。原料と製品開発過程や消費者の商品の購入から使用の一連の流れを総合的に捉えて、ヒトと地球にやさしく洗うことについて多面的に紹介された講演であった。
(吉武裕一郎/オッペン化粧品(株))
 

講演④「肌にやさしい洗浄製品の開発」(株)資生堂 木村 友彦 氏

「肌」を「ひとの皮膚+ひとの心(気持ち)」と考え、皮膚への機能面と、心への情緒面でのやさしさの実現を通して、肌にやさしい洗浄製品の処方設計技術や思想についてお話しいただいた。機能的なやさしさの実現には、複数の皮膚刺激評価法を組み合わせて評価した低刺激化の検討が必要である。界面活性剤の開発、選定とその組み合わせや、添加物の配合、特定の微量油剤の添加で泡立ちや使用感への影響を極力抑えた低刺激化処方技術について解説された。また、やさしさを感じる因子は、統計学的な解析より、泡のクリーミーさと肌のしっとり感が大きく関与している。それらのやさしさ感向上のために、脂肪酸石鹸系処方へのカチオン化高分子を配合する技術が紹介された。肌にやさしい洗浄料の開発には、機能面と情緒面のやさしさを組み上げ、商品の謳いと消費者の実感を一致させ、商品全体の価値として、やさしさを実現することが求められる。
(吉武裕一郎/オッペン化粧品(株))
 

講演⑤「頭髪・頭皮にやさしい洗浄技術」ライオン(株)柏井 利之 氏

近年、シャンプー・コンディショナーには、頭髪表面の補修や頭皮の乾燥・刺激抑制機能の付与等のやさしく洗浄する機能が求められている。洗髪のすすぎ時のきしみで、キューティクルの剥離が生じ、毛髪がダメージを受けるため、一般的なシャンプーには、カチオン性高分子が配合されている。さらに、頭髪にやさしいシャンプーを開発するために、コンディショニング成分であるカチオン化界面活性剤と高級アルコールで構成されるカチオン化会合体を、安定に分散したシャンプー基剤開発についての紹介がなされた。一方、フケやかゆみの症状がある頭皮状態は、肌荒れや炎症、乾燥が生じていることがわかり、保湿機能の付与と防腐剤削除等による低刺激化を施したシャンプー・コンディショナーを開発、実使用したところ、頭皮状態の症状改善が確認された。頭髪、頭皮の状態の違いを把握し、それぞれにやさしい商品開発の重要性が実感される講演であった。。
(吉武裕一郎/オッペン化粧品(株))
 

講演⑥「水性洗顔料の使用方法と肌への影響〜肌に優しい理想的な泡による洗顔について〜」
ポーラ化成工業(株) 佐藤 千尋 氏

水性洗顔料は、皮膚刺激性などの安全性に留意した洗浄成分を配合するなど種々の工夫がなされている。しかし、実際にその処方を使用してもらうと、皮膚刺激性において、設計通りの結果が得られない場合がある。本講演では、使用実態に即した評価における皮膚刺激性に対する研究事例が紹介された。水性洗顔料の使用方法に着目し、実際の使用実態に即した調査を実施した結果、使用方法の違いが、乾燥症状などの肌状態に影響を与えることがわかった。消費者自らがクリームや固形などから泡状に形態を変化させて使用する水性洗顔料は、製品が実際の消費者にどのように使用されているか、どのような影響を与えるのかを理解することが必要である。
多様なニーズに即した処方開発のみならず、その処方に適した使用方法の啓蒙を進める必要性を認識する講演であった。
(永原恭生/ライオン(株))
 

講演⑦「地球にやさしい衣料用液体洗剤」花王(株) 石塚 仁 氏

近年、CO2に代表される温室効果ガスによって地球温暖化が進み、異常気象や自然災害との関係性が取り立たされている。環境問題に対する企業対応は必至であり、個人レベルでの環境に対する取り組みも不可欠になってきている。このような社会状況の中、消費者は、家庭環境問題に貢献したいものの、多大な労力を有する行動は敬遠する傾向にあり、衣類用洗剤分野においても消費者価値を有し、かつ地球にやさしい洗剤が望まれている。    
本講演では、洗剤と洗濯工程の水に着目し、洗剤を濃縮し且つ繊維に残りにくい成分を用いることで、すすぎ水の削減に成功した研究事例が紹介された。
「人と地球に最小限の負荷で、最大限の価値発現を実現する技術」を追求し、消費者価値と環境価値をつなぐ商品を開発していく重要性を認識する講演であった。。
(永原恭生/ライオン(株))