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第39回「SCCJセミナー」お客様品質を目指して―品質保証に必要な技術・知見を学ぶ―
第39回SCCJセミナー
テーマ:「お客様品質を目指して−品質保証に必要な技術・知見を学ぶ−」
期日:2012年2月27日(月)
会場:きゅりあん(品川区総合区民会館)7,8F
今回は310名のご参加を頂きました。
SCCJセミナー委員会より、レポートが届きましたので掲載致します。また、こちらのレポートはSCCJ Journal Vol.46-No.2(6月末発行号)へ掲載予定です。
1.【皮膚科医の見地からの化粧品の安全性】
和歌山県立医科大学皮膚科/古川福実教授
化粧は患者のQOL(生活の質)の向上につながると考えられる。古川先生の皮膚科の患者へのアンケートでは、望ましい化粧品は医師が効果・安全性を確認したものとの回答が最も多かった。そのため、皮膚科医と化粧品メーカーとが連携して、有用性を正しく評価し、その情報を提供することが重要である。また、化粧品の安全性の評価で用いられているヒトパッチテストの方法論や、最近、問題となっている石鹸中の加水分解小麦による小麦依存性運動誘発性アナフィラキシーの概要と研究状況を、そして、医療安全の観点からの安全性確保について、お話しになられた。「人は誰でも間違える」との観点に立ち、事故に至っていないインシデントを報告させ、その傾向をつかんで対策を実行するという、日々の安全管理活動による安全性を保証する体制が重要であるとされた。安全性の意味を考え直させる、大変意義深い講演であった。
(吉武裕一郎 オッペン化粧品(株))
2.【低刺激性製剤の開発】
(株)資生堂リサーチセンター/杉山真理子氏
化粧品使用による刺激は、誰にでも起こりうる問題で、化粧品の低刺激化は常に課題に挙げられる。低刺激性製剤の代表格ともいえる敏感肌用化粧品の開発では、刺激を単回性、累積性の両面から捉え、それらにあわせた代替法やヒトによる評価法を適用した刺激性原料のスクリーニングが行なわれている。その現状をスティンギングテストの感覚刺激の感度向上、感性工学的手法による評価導入の試みや、低刺激性洗浄料開発時におけるin vitro試験と健常人及び皮膚疾患患者によるパッチテストの相関性を評価した有用性検討の実例を取り上げてお話しされた。また、刺激性のある原料の刺激性低減化のため、原料組合せによる刺激低減化や、感覚刺激の抑制する試みについても触れられ、一口に低刺激化への試みといっても、原料、評価法、処方など様々な観点からの試みがあり、低刺激性製剤の開発のためにやるべきことが多いと感じる講演であった。
(吉武裕一郎 オッペン化粧品(株))
3.【化粧品開発における微生物汚染対策(1)−使用方法から見た汚染対策−】
(株)コーセー基礎研究室 微生物研究グループ/畑 毅氏
化粧品の品質設計において、微生物汚染を防止することは非常に重要であり、この設計を誤ると消費者の健康被害にもおよぶ事故を招きかねない。本公演では品質設計の際に考慮すべき微生物について紹介いただくと共に、商品が消費者に渡ってから生ずる二次汚染の防止に向け、容器や使用方法なども含めた総合的な考え方について講演いただいた。
薬事法の下にある化粧品は、日本薬局方に準じた形で保証され、第56条に「販売、製造等の禁止」が掲げられており、これに該当する化粧品を製造、販売することは薬事法違反となる。日和見感染を起こす病原性の特定微生物種の解説。使用中に生ずる二次汚染について、容器・使用方法といった要因について具体的な事例と注意点を紹介され、使用行動を踏まえた容器、防腐設計等、総合的な対策が必要であるとの見解を示された。多岐にわたる実例を踏まえた有用な講演であった。
(永原恭生 ライオン(株))
4.【化粧品開発における微生物汚染対策(2)−製剤開発から見た防腐設計−】
(株)マンダム/岡本裕也氏
生活者が化粧品を使用する際に、使いはじめから使い切るまで安全に使用できることは化粧品が有すべき重要な品質である。本公演では製品の防腐設計をする際の留意点として、防腐剤の特徴や他の成分から受ける防腐力の影響について講演いただいた。
製品の防腐力を評価するための保存効力試験法の概略、製品の防腐力を付与するために配合する「防腐剤」の種類と化粧品における最近の使用頻度について紹介いただいた。さらに製品の防腐力向上のために留意する点として、水分活性量を下げ微生物を増殖させない環境を作ること、製品中に油相、水相が存在する場合、防腐剤の油相への分配による防腐力低下を防ぐこと、界面活性剤ミセル中に防腐剤が取りこまれ防腐力が低下すること、多価アルコール種の防腐力に対する知見等、多岐にわたる実例をご紹介いただいた。防腐処方を設計するうえで、有用な講演であった。
(永原恭生 ライオン(株))
5.【化粧品開発における微生物汚染対策(3)−製造工程からみた微生物制御−】
�カネボウ化粧品 品質統括グループ(微生物)/福林智子氏
化粧品メーカーは製品に対し微生物学的な保証をする必要がある。そのために、衛生的な製造環境の整備が重要である。本公演では製造性における留意すべき点について具体例を持って講演いただいた。
製造環境の衛生度向上のためには微生物を「持ち込まない」「拡散させない」「増殖させない」3対策が重要である。製造設備の衛生対策上「洗浄」「乾燥」が最も重要な因子であり、汚れのたまりやすい個所等に対する具体的な知見も紹介いただいた。さらに製造工程の微生物を殺菌する方法である熱、薬剤、紫外線等の殺菌における留意点、原材料、作業者から持ち込まれる微生物に対する留意点をご講演いただいた。製造工程の特徴と対象となる汚れや微生物に対し適切な衛生管理を行うと共に、恒常的に維持するための管理体制が重要であるとの見解を示され、今後の衛生管理に有用な講演であった。
(永原恭生 ライオン(株))
6.【化粧品の安定性を保証するスケールアップの技術】
みづほ工業(株)/木和行氏
化粧品製剤技術者にとって、スケールアップに伴う製剤の安定性確保は大きな課題である。ビーカースケールで目標の製剤を作り上げても実製造では目標とするものが得られないことはよく経験する。本講演では、乳化製品に焦点を絞りスケールアップでの留意点を講演いただいた。
乳化を行う方法には処方的な力(界面化学的な手法)と機械力があり、ここでは後者について言及された。乳化に効果的に利用できる機械力としては、せん断力、衝撃力、キャビテーション力を挙げられ、図解により詳しく説明された。そして、スケールアップ技術において重要となるのは、同じ性状の製品の評価項目の中で、一番影響するファクターを探し出し、その要因をもとにスケールアップを検討することであると指摘された。その上で、安定性への影響の大きい粒子径や粒度分布について、添加剤及び主剤の分散性や乳化機のせん断力、回転数の観点から理論的に説明された。製造技術の実践に示唆を与える講演であった。
(中間康成 (株)資生堂)
7.【化粧品GMP−その目的・意義と実施事項概要】
(株)アルビオン 熊谷工場/宮田徹氏
化粧品の製造管理及び品質管理に関する技術指針であるGMPは”Good Manufacturing Practices” の略である。その制定経緯から始まりその目的と意義、実施事項の概要について述べられた。
GMPの狙いは「顧客が安心して化粧品を使えるために化粧品製造所が行うべきこと」を定めたガイドラインであり、「どの担当者がいつ作業しても定められた品質の製品を作るために行うべきこと」が規定されている。この内容について、先ずGMPの三原則(①混合、手違い等の人為的な誤りを最小限にする。②汚染及び品質低下を防ぐ。③高い品質を保証するシステムを作る。)やその考え方を述べられた。その上で、現在の化粧品GMP(IS22716)の要求事項17項目の内容について、従業員、文書化、構造設備、機器、原料及び包装材料、生産、最終製品、品質管理など概要を説明された。化粧品開発に携わる者が知っておくべき内容を要領よく大変わかりやすく講演いただいた。
(中間康成(株)資生堂)
テーマ:「お客様品質を目指して−品質保証に必要な技術・知見を学ぶ−」
期日:2012年2月27日(月)
会場:きゅりあん(品川区総合区民会館)7,8F
今回は310名のご参加を頂きました。
SCCJセミナー委員会より、レポートが届きましたので掲載致します。また、こちらのレポートはSCCJ Journal Vol.46-No.2(6月末発行号)へ掲載予定です。
1.【皮膚科医の見地からの化粧品の安全性】
和歌山県立医科大学皮膚科/古川福実教授
化粧は患者のQOL(生活の質)の向上につながると考えられる。古川先生の皮膚科の患者へのアンケートでは、望ましい化粧品は医師が効果・安全性を確認したものとの回答が最も多かった。そのため、皮膚科医と化粧品メーカーとが連携して、有用性を正しく評価し、その情報を提供することが重要である。また、化粧品の安全性の評価で用いられているヒトパッチテストの方法論や、最近、問題となっている石鹸中の加水分解小麦による小麦依存性運動誘発性アナフィラキシーの概要と研究状況を、そして、医療安全の観点からの安全性確保について、お話しになられた。「人は誰でも間違える」との観点に立ち、事故に至っていないインシデントを報告させ、その傾向をつかんで対策を実行するという、日々の安全管理活動による安全性を保証する体制が重要であるとされた。安全性の意味を考え直させる、大変意義深い講演であった。
(吉武裕一郎 オッペン化粧品(株))
2.【低刺激性製剤の開発】
(株)資生堂リサーチセンター/杉山真理子氏
化粧品使用による刺激は、誰にでも起こりうる問題で、化粧品の低刺激化は常に課題に挙げられる。低刺激性製剤の代表格ともいえる敏感肌用化粧品の開発では、刺激を単回性、累積性の両面から捉え、それらにあわせた代替法やヒトによる評価法を適用した刺激性原料のスクリーニングが行なわれている。その現状をスティンギングテストの感覚刺激の感度向上、感性工学的手法による評価導入の試みや、低刺激性洗浄料開発時におけるin vitro試験と健常人及び皮膚疾患患者によるパッチテストの相関性を評価した有用性検討の実例を取り上げてお話しされた。また、刺激性のある原料の刺激性低減化のため、原料組合せによる刺激低減化や、感覚刺激の抑制する試みについても触れられ、一口に低刺激化への試みといっても、原料、評価法、処方など様々な観点からの試みがあり、低刺激性製剤の開発のためにやるべきことが多いと感じる講演であった。
(吉武裕一郎 オッペン化粧品(株))
3.【化粧品開発における微生物汚染対策(1)−使用方法から見た汚染対策−】
(株)コーセー基礎研究室 微生物研究グループ/畑 毅氏
化粧品の品質設計において、微生物汚染を防止することは非常に重要であり、この設計を誤ると消費者の健康被害にもおよぶ事故を招きかねない。本公演では品質設計の際に考慮すべき微生物について紹介いただくと共に、商品が消費者に渡ってから生ずる二次汚染の防止に向け、容器や使用方法なども含めた総合的な考え方について講演いただいた。
薬事法の下にある化粧品は、日本薬局方に準じた形で保証され、第56条に「販売、製造等の禁止」が掲げられており、これに該当する化粧品を製造、販売することは薬事法違反となる。日和見感染を起こす病原性の特定微生物種の解説。使用中に生ずる二次汚染について、容器・使用方法といった要因について具体的な事例と注意点を紹介され、使用行動を踏まえた容器、防腐設計等、総合的な対策が必要であるとの見解を示された。多岐にわたる実例を踏まえた有用な講演であった。
(永原恭生 ライオン(株))
4.【化粧品開発における微生物汚染対策(2)−製剤開発から見た防腐設計−】
(株)マンダム/岡本裕也氏
生活者が化粧品を使用する際に、使いはじめから使い切るまで安全に使用できることは化粧品が有すべき重要な品質である。本公演では製品の防腐設計をする際の留意点として、防腐剤の特徴や他の成分から受ける防腐力の影響について講演いただいた。
製品の防腐力を評価するための保存効力試験法の概略、製品の防腐力を付与するために配合する「防腐剤」の種類と化粧品における最近の使用頻度について紹介いただいた。さらに製品の防腐力向上のために留意する点として、水分活性量を下げ微生物を増殖させない環境を作ること、製品中に油相、水相が存在する場合、防腐剤の油相への分配による防腐力低下を防ぐこと、界面活性剤ミセル中に防腐剤が取りこまれ防腐力が低下すること、多価アルコール種の防腐力に対する知見等、多岐にわたる実例をご紹介いただいた。防腐処方を設計するうえで、有用な講演であった。
(永原恭生 ライオン(株))
5.【化粧品開発における微生物汚染対策(3)−製造工程からみた微生物制御−】
�カネボウ化粧品 品質統括グループ(微生物)/福林智子氏
化粧品メーカーは製品に対し微生物学的な保証をする必要がある。そのために、衛生的な製造環境の整備が重要である。本公演では製造性における留意すべき点について具体例を持って講演いただいた。
製造環境の衛生度向上のためには微生物を「持ち込まない」「拡散させない」「増殖させない」3対策が重要である。製造設備の衛生対策上「洗浄」「乾燥」が最も重要な因子であり、汚れのたまりやすい個所等に対する具体的な知見も紹介いただいた。さらに製造工程の微生物を殺菌する方法である熱、薬剤、紫外線等の殺菌における留意点、原材料、作業者から持ち込まれる微生物に対する留意点をご講演いただいた。製造工程の特徴と対象となる汚れや微生物に対し適切な衛生管理を行うと共に、恒常的に維持するための管理体制が重要であるとの見解を示され、今後の衛生管理に有用な講演であった。
(永原恭生 ライオン(株))
6.【化粧品の安定性を保証するスケールアップの技術】
みづほ工業(株)/木和行氏
化粧品製剤技術者にとって、スケールアップに伴う製剤の安定性確保は大きな課題である。ビーカースケールで目標の製剤を作り上げても実製造では目標とするものが得られないことはよく経験する。本講演では、乳化製品に焦点を絞りスケールアップでの留意点を講演いただいた。
乳化を行う方法には処方的な力(界面化学的な手法)と機械力があり、ここでは後者について言及された。乳化に効果的に利用できる機械力としては、せん断力、衝撃力、キャビテーション力を挙げられ、図解により詳しく説明された。そして、スケールアップ技術において重要となるのは、同じ性状の製品の評価項目の中で、一番影響するファクターを探し出し、その要因をもとにスケールアップを検討することであると指摘された。その上で、安定性への影響の大きい粒子径や粒度分布について、添加剤及び主剤の分散性や乳化機のせん断力、回転数の観点から理論的に説明された。製造技術の実践に示唆を与える講演であった。
(中間康成 (株)資生堂)
7.【化粧品GMP−その目的・意義と実施事項概要】
(株)アルビオン 熊谷工場/宮田徹氏
化粧品の製造管理及び品質管理に関する技術指針であるGMPは”Good Manufacturing Practices” の略である。その制定経緯から始まりその目的と意義、実施事項の概要について述べられた。
GMPの狙いは「顧客が安心して化粧品を使えるために化粧品製造所が行うべきこと」を定めたガイドラインであり、「どの担当者がいつ作業しても定められた品質の製品を作るために行うべきこと」が規定されている。この内容について、先ずGMPの三原則(①混合、手違い等の人為的な誤りを最小限にする。②汚染及び品質低下を防ぐ。③高い品質を保証するシステムを作る。)やその考え方を述べられた。その上で、現在の化粧品GMP(IS22716)の要求事項17項目の内容について、従業員、文書化、構造設備、機器、原料及び包装材料、生産、最終製品、品質管理など概要を説明された。化粧品開発に携わる者が知っておくべき内容を要領よく大変わかりやすく講演いただいた。
(中間康成(株)資生堂)