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第41回「SCCJセミナー」スキンコンプレクション:美しく魅せるための最新の技術と応用
第41回SCCJセミナー
テーマ:「スキンコンプレクション
−美しく魅せるための最新の技術と応用−」
2013年2月1日(金)
於:きゅりあん
参加者222名
講演①【顔面表情の知覚について:形態の持つ情動的情報】
日本大学大学院文学研究科 高橋望 先生
顔の表情は他者に好意を伝達する上で重要な役割を担っている。本講演では、他者との円滑なコミュニケーションを行うために重要な顔に焦点をあて、表情と呼ばれる顔の情動的情報について解説いただいた。顔面の湾曲性・開示性、眉や目の傾斜性、口の傾斜性といった形態変化が表情判断の視覚的情報次元になっていること、また快・不快や活動性という感情的意味次元と関連性があることなど、顔の情動的情報について貴重な実験データをもとに説明いただいた。メイクなどの化粧行為は、知覚される顔パーツの形態を変化させることから、化粧の下にある表情とは異なって知覚される可能性を示唆され、化粧により同じ表情でも他者への見られ方が異なる可能性を説明いただいた。他者に知覚される表情と化粧との関係性を知り、有効な化粧を行う上でも非常に有益な講演であった。
[(株)ノエビア 鳥居宏右]
講演②【視覚・光・色—見るしくみと見せる技術—】
立命館大学 情報理工学部知能情報学科 教授 篠田博之 先生
多様な照明手法や新しい光源の普及により、既存の尺度だけでは照明や視環境を適切に評価できない状況が増えている。本講演では人間の視覚・色覚特性につて光学的および心理物理学的な側面から解説いただいた。雰囲気重視の光環境評価のために心理的な尺度を取り入れた明るさ感指標、物体色の演出に関わる照明光の特性、同じ色を異なるデバイスから再現するためのカラーマネジメントシステム、加齢により起こる見え方の変化とそれを解決する彩度回復照明など、それぞれの特性および実用例についての多岐にわたる豊富な内容であった。また、色の見え方が変化する色順応については実演を交えて説明いただき、視覚特性の理解を深めることができた。新しい技術は古い尺度では適切に評価できないことがあり、新規のテクノロジーに合わせて新しい尺度や指標を考案することの重要性を具体例とともに紹介いただいた大変意義深い講演であった。
[(株)ノエビア 鳥居宏右]
講演③【シニア女性の若々しく生きいきと輝く肌と表情をつくる美容法の開発】
(株)資生堂 リサーチセンター 大坪充恵 氏
加齢とともに老化現象は、肌に顕著に現れてくる。しかし、同年齢であっても、老けて見える人と若々しく見える人がおり、見ための印象年齢の差は10歳以上にも及ぶ。この見ための老若、2群の肌調査の結果、実年齢以上に老けた印象に見える要素は「しわ」「たるみ」「肌色」の3つにあることがわかった。この老けて見える要素である「肌色」「たるみ」に関して、シミュレーション画像や顔の表情筋のメカニズムをまじえて分りやすくご説明いただいた。また、「肌色」改善のために有効な「リズム呼吸マッサージ」、及び「たるみ」改善のために有効な「フェースマッスルプログラム」については、動画を用いた、新たな美容法の提案という実践型の内容であり、製剤開発だけでない化粧品技術について学ぶ機会をいただけた、貴重な講演であった。
[(株)コーセー 奥山雅樹]
講演④【素肌の状態と見えの美しさについて】
花王(株) 総合美容技術研究所 岡田絵真 氏
多くの女性は、自身の顔を美しく見せたいという願望を持っている。顔の美しさは、骨格やパーツ形状、そのバランスも重要だが、肌の美しさも非常に重要な要素のひとつである。本講演では、素肌の美しさの視覚的構成要素を、感性的要素(なめらか・透明感等)と肌状態要素(しわ・毛穴等)から表現する手法についてご説明いただいた。13歳から79歳の日本人女性201名から得られた情報を解析したところ、感性的様子の多くに頬のシワが大きく関与していること、また、肌荒れ因子、微細老化因子の両因子に対して頬のシワの負荷量が高いことから、素肌の見た目の美しさには頬のシワが大きく関与すると位置づけられる。これをもとに、実際に化粧品を使用した際の改善アプローチ例は、今後も新たな着眼点から肌の美しさをとらえる手法として期待が感じられる内容であった。
[(株)コーセー 奥山雅樹]
講演⑤【肌を美しく見せるメイクアップ化粧料】
ポーラ化成工業(株) 開発研究部 坂﨑ゆかり 氏
肌を美しく見せるために使用されるベースメイク化粧料において、その機能の根幹を支えているのは粉体による光のコントロールである。肌状態を表現する感性的な言葉、例えば「透明感がある、みずみずしい」「くすんだ、キメが粗い」等を光という物理量に変換し、そのデータを活用して新素材、新製剤の開発を行うという手法が化粧品業界では行われている。本講演では、肌の光学特性から粉体を設計する手法について具体的な事例をもとにご報告いただいた。肌の皮溝皮丘によって生じる光の拡散に着目して設計した、ナイロン繊維粉体、人の角層の積層規則性による光沢感を再現するために設計した、ポリエステル−ナイロン積層粉体、また、肌の分光反射率のへこみに着目し、設計した異型断面を有する着色繊維粉体の開発事例は、いずれもオリジナル性が高く、メイク製品の製剤開発に有用なヒントとなる有益な講演であった。
[(株)コーセー 奥山雅樹]
講演⑥【トレンドからみるきれいの変遷〜装いから日常、そして本質をつくり出す時代〜】
(株)コーセー研究所 研究企画室 本田佳子 氏
40年代から現代に至る社会背景や市場変化を振り返り、更に「肌」の変遷に焦点を絞り、過去30年におけるコーセーの発行している季刊誌を参照しながら、きれいの移り変わりについてご講演頂いた。例えば、肌づくりの変遷としては、80年代前半はしっかりとしたメイクが流行し、リキッドファンデーションが主として使用されていた。一方、80年代後半になるとパウダーファンデーションの使用者が増えてきた。その背景としては女性が自分の肌質や好みに合ったメイク選びをするようになったことと、化粧品製材技術の向上といった2つのことが影響しているとのこと。歴史を振り返り、まとめることにより、女性の美しさの基準の変化や化粧品の流行を生み出す要因は社会背景、生活様式、技術の進歩が影響し合っている事がわかり、今後は、デジタル技術向上の影響により、素肌の美しさを求める動きが引き続き続くとのこと。また、高齢者が年齢に合った美しさを求め、「シワがあっても魅力的な表情ジワであれば可」のように、ありのままの美しさを追求するのではないかという示唆を頂いた。
[(株)ナリス化粧品 寺内友広]
講演⑦【簡単に「キレイ」を実現する顔画像センシング技術とその応用】
オムロン(株)技術・知財本部 技術開発センタ 川出雅人 先生]
画像センシング技術とは、人間の視覚が持つ情報処理能力に迫り、さらには人間の視覚では捉えるに困難な情報を処理することを目指し開発が進められている技術のことである。画像センシング技術の市場範囲は非常に広く、省エネ・ロボットの視覚などのヒューマンインタフェース市場、ドライバーの安全を守る車載機器市場、個人認証のセキュリティ市場、また身近なところでは我々が日常的に使用するスマートフォン、デジタルカメラやプリクラなどのデジタル画像機器市場など生活の様々なシーンに応用されている。本講演では、顔検出、顔認証、顔属性推定など、さまざまな顔画像センシング技術の概要・原理とその検出能力などオムロンの世界最先端の顔画像センシング技術とその応用をデモを交えてお話いただきました。中でも興味深かったのは、目や口等の顔の器官の位置を正確に検出する3Dモデルフィッティングという技術をベースにリアルタイムで笑顔度を推定するもので、撮影した画像から人の顔を高速で見つけ出し、その人の笑顔度(0〜100%で表示)をリアルタイムで測定する技術でした。近い将来、機械が人間の感情を読み取ることができる可能性を感じる大変意義深い講演であった。
[(株)ナリス化粧品 寺内友広]
テーマ:「スキンコンプレクション
−美しく魅せるための最新の技術と応用−」
2013年2月1日(金)
於:きゅりあん
参加者222名
講演①【顔面表情の知覚について:形態の持つ情動的情報】
日本大学大学院文学研究科 高橋望 先生
顔の表情は他者に好意を伝達する上で重要な役割を担っている。本講演では、他者との円滑なコミュニケーションを行うために重要な顔に焦点をあて、表情と呼ばれる顔の情動的情報について解説いただいた。顔面の湾曲性・開示性、眉や目の傾斜性、口の傾斜性といった形態変化が表情判断の視覚的情報次元になっていること、また快・不快や活動性という感情的意味次元と関連性があることなど、顔の情動的情報について貴重な実験データをもとに説明いただいた。メイクなどの化粧行為は、知覚される顔パーツの形態を変化させることから、化粧の下にある表情とは異なって知覚される可能性を示唆され、化粧により同じ表情でも他者への見られ方が異なる可能性を説明いただいた。他者に知覚される表情と化粧との関係性を知り、有効な化粧を行う上でも非常に有益な講演であった。
[(株)ノエビア 鳥居宏右]
講演②【視覚・光・色—見るしくみと見せる技術—】
立命館大学 情報理工学部知能情報学科 教授 篠田博之 先生
多様な照明手法や新しい光源の普及により、既存の尺度だけでは照明や視環境を適切に評価できない状況が増えている。本講演では人間の視覚・色覚特性につて光学的および心理物理学的な側面から解説いただいた。雰囲気重視の光環境評価のために心理的な尺度を取り入れた明るさ感指標、物体色の演出に関わる照明光の特性、同じ色を異なるデバイスから再現するためのカラーマネジメントシステム、加齢により起こる見え方の変化とそれを解決する彩度回復照明など、それぞれの特性および実用例についての多岐にわたる豊富な内容であった。また、色の見え方が変化する色順応については実演を交えて説明いただき、視覚特性の理解を深めることができた。新しい技術は古い尺度では適切に評価できないことがあり、新規のテクノロジーに合わせて新しい尺度や指標を考案することの重要性を具体例とともに紹介いただいた大変意義深い講演であった。
[(株)ノエビア 鳥居宏右]
講演③【シニア女性の若々しく生きいきと輝く肌と表情をつくる美容法の開発】
(株)資生堂 リサーチセンター 大坪充恵 氏
加齢とともに老化現象は、肌に顕著に現れてくる。しかし、同年齢であっても、老けて見える人と若々しく見える人がおり、見ための印象年齢の差は10歳以上にも及ぶ。この見ための老若、2群の肌調査の結果、実年齢以上に老けた印象に見える要素は「しわ」「たるみ」「肌色」の3つにあることがわかった。この老けて見える要素である「肌色」「たるみ」に関して、シミュレーション画像や顔の表情筋のメカニズムをまじえて分りやすくご説明いただいた。また、「肌色」改善のために有効な「リズム呼吸マッサージ」、及び「たるみ」改善のために有効な「フェースマッスルプログラム」については、動画を用いた、新たな美容法の提案という実践型の内容であり、製剤開発だけでない化粧品技術について学ぶ機会をいただけた、貴重な講演であった。
[(株)コーセー 奥山雅樹]
講演④【素肌の状態と見えの美しさについて】
花王(株) 総合美容技術研究所 岡田絵真 氏
多くの女性は、自身の顔を美しく見せたいという願望を持っている。顔の美しさは、骨格やパーツ形状、そのバランスも重要だが、肌の美しさも非常に重要な要素のひとつである。本講演では、素肌の美しさの視覚的構成要素を、感性的要素(なめらか・透明感等)と肌状態要素(しわ・毛穴等)から表現する手法についてご説明いただいた。13歳から79歳の日本人女性201名から得られた情報を解析したところ、感性的様子の多くに頬のシワが大きく関与していること、また、肌荒れ因子、微細老化因子の両因子に対して頬のシワの負荷量が高いことから、素肌の見た目の美しさには頬のシワが大きく関与すると位置づけられる。これをもとに、実際に化粧品を使用した際の改善アプローチ例は、今後も新たな着眼点から肌の美しさをとらえる手法として期待が感じられる内容であった。
[(株)コーセー 奥山雅樹]
講演⑤【肌を美しく見せるメイクアップ化粧料】
ポーラ化成工業(株) 開発研究部 坂﨑ゆかり 氏
肌を美しく見せるために使用されるベースメイク化粧料において、その機能の根幹を支えているのは粉体による光のコントロールである。肌状態を表現する感性的な言葉、例えば「透明感がある、みずみずしい」「くすんだ、キメが粗い」等を光という物理量に変換し、そのデータを活用して新素材、新製剤の開発を行うという手法が化粧品業界では行われている。本講演では、肌の光学特性から粉体を設計する手法について具体的な事例をもとにご報告いただいた。肌の皮溝皮丘によって生じる光の拡散に着目して設計した、ナイロン繊維粉体、人の角層の積層規則性による光沢感を再現するために設計した、ポリエステル−ナイロン積層粉体、また、肌の分光反射率のへこみに着目し、設計した異型断面を有する着色繊維粉体の開発事例は、いずれもオリジナル性が高く、メイク製品の製剤開発に有用なヒントとなる有益な講演であった。
[(株)コーセー 奥山雅樹]
講演⑥【トレンドからみるきれいの変遷〜装いから日常、そして本質をつくり出す時代〜】
(株)コーセー研究所 研究企画室 本田佳子 氏
40年代から現代に至る社会背景や市場変化を振り返り、更に「肌」の変遷に焦点を絞り、過去30年におけるコーセーの発行している季刊誌を参照しながら、きれいの移り変わりについてご講演頂いた。例えば、肌づくりの変遷としては、80年代前半はしっかりとしたメイクが流行し、リキッドファンデーションが主として使用されていた。一方、80年代後半になるとパウダーファンデーションの使用者が増えてきた。その背景としては女性が自分の肌質や好みに合ったメイク選びをするようになったことと、化粧品製材技術の向上といった2つのことが影響しているとのこと。歴史を振り返り、まとめることにより、女性の美しさの基準の変化や化粧品の流行を生み出す要因は社会背景、生活様式、技術の進歩が影響し合っている事がわかり、今後は、デジタル技術向上の影響により、素肌の美しさを求める動きが引き続き続くとのこと。また、高齢者が年齢に合った美しさを求め、「シワがあっても魅力的な表情ジワであれば可」のように、ありのままの美しさを追求するのではないかという示唆を頂いた。
[(株)ナリス化粧品 寺内友広]
講演⑦【簡単に「キレイ」を実現する顔画像センシング技術とその応用】
オムロン(株)技術・知財本部 技術開発センタ 川出雅人 先生]
画像センシング技術とは、人間の視覚が持つ情報処理能力に迫り、さらには人間の視覚では捉えるに困難な情報を処理することを目指し開発が進められている技術のことである。画像センシング技術の市場範囲は非常に広く、省エネ・ロボットの視覚などのヒューマンインタフェース市場、ドライバーの安全を守る車載機器市場、個人認証のセキュリティ市場、また身近なところでは我々が日常的に使用するスマートフォン、デジタルカメラやプリクラなどのデジタル画像機器市場など生活の様々なシーンに応用されている。本講演では、顔検出、顔認証、顔属性推定など、さまざまな顔画像センシング技術の概要・原理とその検出能力などオムロンの世界最先端の顔画像センシング技術とその応用をデモを交えてお話いただきました。中でも興味深かったのは、目や口等の顔の器官の位置を正確に検出する3Dモデルフィッティングという技術をベースにリアルタイムで笑顔度を推定するもので、撮影した画像から人の顔を高速で見つけ出し、その人の笑顔度(0〜100%で表示)をリアルタイムで測定する技術でした。近い将来、機械が人間の感情を読み取ることができる可能性を感じる大変意義深い講演であった。
[(株)ナリス化粧品 寺内友広]