EVENT イベント
第52回 SCCJセミナー in 京都「エイジングに挑む ― 外部要因による老化とその対応化粧品技術―」
本部主催のSCCJセミナー in 京都に、広報委員会からの取材で参加させていただきました。今回のテーマは「エイジングに挑む - 外部要因による老化とその対応化粧品技術-」で、実に10年ぶりにエイジングをテーマにしたセミナーとのことでした。
セミナーでは処方技術、評価法に加え、化粧品原料の機能特性、老化の基礎的なメカニズムを学ぶ貴重な機会を得ることができました。また今回は、株式会社ワコール 徳光様から、50年に及ぶ女性の体形変化についての研究をご紹介いただきました。加齢変化を小さく、そして進行を遅くするためにと、50年続けてこられた研究に対する思いは、化粧品の技術開発に通じるものがあり、変化を見逃さない視点、数値化の重要性、膨大なデータの解析、結果の表現手法について、多くを学び、、、 学ぶという言葉では言い表せない、「衝撃」に近い感覚を得ました。そして、何よりも、「年は美しく重ねたい!!」と、強く思いました。
SCCJセミナーの最大の特徴は、フリーディスカッションです。講演後に講師の方々に直接質問できることもあり、日常業務の悩みや意見交換をするため、多くの受講者の方で列ができていました。質問をされた方にお話しをうかがったところ、「業務上の不明点について質問ができた」、「評価法についてアイデアをいただいた」という意見がありました。また、講師の方に質問をされておられた受講者同士で、さらに意見交換が生まれている場面もありました。同じ化粧品業界の中において、化粧品技術の向上を目指して、業界内で切磋琢磨できるのは、SCCJの魅力だと改めて感じました。
今回のSCCJセミナーは、初めて京都にて開催されました。会場の京都テルサは、京都駅から徒歩約10分の距離だったこともあり、近畿圏以外の方も参加しやすいと感じられたのではないでしょうか。 SCCJセミナーは、企画から開催まで1年半の準備期間を経ていると伺いました。セミナー委員の皆さまを始め、これまでの貴重な経験をお話くださいました講師の皆さまに感謝申し上げます。次回は来年2月21日に東京(会場:きゅりあん)でセミナーの開催が予定されています。SCCJセミナーは新しい発見を得られる場ですので、次回また参加できる機会があればと思います。
講演①「シワを「目立たなくする」から「改善する」までの製剤技術と有効性」
加齢による「シワ」との戦いは、美容的な観点から最も関心を寄せる肌悩みのひとつであり、薬事法上、「シワ」に対する訴求が可能となったことで、ますます「シワ」に関する製剤技術へ期待が高まることが考えられる。
本講演では、シワを「目立たなくする」と「改善する」製剤技術について説明いただいた。
まず、「目立たなくする」紛体製剤技術であるが、シワを埋めて凹凸を少なくすることは重要であるが、新開発のファンデーションでは、光を透過、散乱する製剤でシワを埋めることにより、シワを隠しながらも従来よりも自然な仕上がりを実現している。
次に、「改善する」製剤については、刺激性の少ないレチノールに着目し、そのヒアルロン酸産生促進作用、ターンオーバー促進作用により真皮マトリックス成分の密度が高まるというエビデンスに基づき、有意にシワ改善の効果が見られる製剤開発を実現している。
新たな視点から試行錯誤を繰り返し、効果に裏付けられた製剤を開発する重要性を再認識させられる興味深い内容であった。
セミナーでは処方技術、評価法に加え、化粧品原料の機能特性、老化の基礎的なメカニズムを学ぶ貴重な機会を得ることができました。また今回は、株式会社ワコール 徳光様から、50年に及ぶ女性の体形変化についての研究をご紹介いただきました。加齢変化を小さく、そして進行を遅くするためにと、50年続けてこられた研究に対する思いは、化粧品の技術開発に通じるものがあり、変化を見逃さない視点、数値化の重要性、膨大なデータの解析、結果の表現手法について、多くを学び、、、 学ぶという言葉では言い表せない、「衝撃」に近い感覚を得ました。そして、何よりも、「年は美しく重ねたい!!」と、強く思いました。
SCCJセミナーの最大の特徴は、フリーディスカッションです。講演後に講師の方々に直接質問できることもあり、日常業務の悩みや意見交換をするため、多くの受講者の方で列ができていました。質問をされた方にお話しをうかがったところ、「業務上の不明点について質問ができた」、「評価法についてアイデアをいただいた」という意見がありました。また、講師の方に質問をされておられた受講者同士で、さらに意見交換が生まれている場面もありました。同じ化粧品業界の中において、化粧品技術の向上を目指して、業界内で切磋琢磨できるのは、SCCJの魅力だと改めて感じました。
今回のSCCJセミナーは、初めて京都にて開催されました。会場の京都テルサは、京都駅から徒歩約10分の距離だったこともあり、近畿圏以外の方も参加しやすいと感じられたのではないでしょうか。 SCCJセミナーは、企画から開催まで1年半の準備期間を経ていると伺いました。セミナー委員の皆さまを始め、これまでの貴重な経験をお話くださいました講師の皆さまに感謝申し上げます。次回は来年2月21日に東京(会場:きゅりあん)でセミナーの開催が予定されています。SCCJセミナーは新しい発見を得られる場ですので、次回また参加できる機会があればと思います。
SCCJ広報委員(株)マンダム 久加 亜由美
講演①「シワを「目立たなくする」から「改善する」までの製剤技術と有効性」
(株)資生堂 大田 正弘 氏
加齢による「シワ」との戦いは、美容的な観点から最も関心を寄せる肌悩みのひとつであり、薬事法上、「シワ」に対する訴求が可能となったことで、ますます「シワ」に関する製剤技術へ期待が高まることが考えられる。
本講演では、シワを「目立たなくする」と「改善する」製剤技術について説明いただいた。
まず、「目立たなくする」紛体製剤技術であるが、シワを埋めて凹凸を少なくすることは重要であるが、新開発のファンデーションでは、光を透過、散乱する製剤でシワを埋めることにより、シワを隠しながらも従来よりも自然な仕上がりを実現している。
次に、「改善する」製剤については、刺激性の少ないレチノールに着目し、そのヒアルロン酸産生促進作用、ターンオーバー促進作用により真皮マトリックス成分の密度が高まるというエビデンスに基づき、有意にシワ改善の効果が見られる製剤開発を実現している。
新たな視点から試行錯誤を繰り返し、効果に裏付けられた製剤を開発する重要性を再認識させられる興味深い内容であった。
座長:SCCJセミナー委員 (東洋ビューティ(株) 村山智洋)
講演②「化粧品用保湿剤の種類と特徴 ~両親媒性ポリエーテルとリン脂質ポリマーの応用~」
日油(株) 関口 孝治 氏
保湿は、外界から生体を守る皮膚を健やかに保つために重要な因子であり、角層の水分保持力を高める保湿剤は化粧品の製剤開発に欠かすことのできない成分である。
本講演では、基本的な保湿剤の種類と特徴をわかりやすく説明いただき、それらの性質を応用した新規水溶性保湿油、リン脂質ポリマーの開発とその応用について説明いただいた。
化粧品の保湿剤は大きく分けて①NMF成分、②ポリオール類、③高分子保湿剤に分類され、それぞれの長所と短所を理解した処方設計が必要である。
新規水溶性保湿油はポリオールと油剤の特長を兼ね合わせた分子設計で、保湿性と使用感を両立させるだけでなく、防腐剤や紫外線吸収剤の皮膚浸透を抑制する効果も実現している。
リン脂質ポリマーは生体適合性の高い安全なポリマーで、乾燥から皮膚を守るだけでなく、汚染物質や菌、紫外線等の環境ストレスから皮膚を守る生体防御素材としての応用が可能である。
保湿を考えることで、化粧品の新たな付加価値の創造を期待できる興味深い講演であった。
日油(株) 関口 孝治 氏
保湿は、外界から生体を守る皮膚を健やかに保つために重要な因子であり、角層の水分保持力を高める保湿剤は化粧品の製剤開発に欠かすことのできない成分である。
本講演では、基本的な保湿剤の種類と特徴をわかりやすく説明いただき、それらの性質を応用した新規水溶性保湿油、リン脂質ポリマーの開発とその応用について説明いただいた。
化粧品の保湿剤は大きく分けて①NMF成分、②ポリオール類、③高分子保湿剤に分類され、それぞれの長所と短所を理解した処方設計が必要である。
新規水溶性保湿油はポリオールと油剤の特長を兼ね合わせた分子設計で、保湿性と使用感を両立させるだけでなく、防腐剤や紫外線吸収剤の皮膚浸透を抑制する効果も実現している。
リン脂質ポリマーは生体適合性の高い安全なポリマーで、乾燥から皮膚を守るだけでなく、汚染物質や菌、紫外線等の環境ストレスから皮膚を守る生体防御素材としての応用が可能である。
保湿を考えることで、化粧品の新たな付加価値の創造を期待できる興味深い講演であった。
座長:SCCJセミナー委員(東洋ビューティ(株) 村山智洋)
講演③ 長波長紫外線UVAの防御技術
花王㈱ 猪股 幸雄 氏
紫外線は、肌に様々な悪影響を引き起こすことが知られている。その影響は光の波長により異なり、紫外線を深く理解した上での防御対策が必要とされる。地表に到達する紫外線はUVAとUVBであるため、主にこれらの防御が必要となる。しかし、赤みや浮腫を伴わないUVA暴露においては、防御対策が疎かになりがちである。
本講演では、UVAの肌への影響、防御効果を示す指数やその評価方法、UV吸収剤と散乱剤の応用例を説明いただいた。UV吸収剤には最大配合上限量があり、高融点であるために油剤との相溶性に注意が必要である。また、製剤色への影響があるため、他の配合成分との相性も想定して製剤化すべきである。
UV吸収剤と併用される主な散乱剤としては、酸化亜鉛が挙げられる。その形状や表面状態を制御した「オクチルシリル化薄化状酸化亜鉛」は、防御効果の増大と透明感の付与等の良好な使用感が得られる素材である。形状や表面のコントロール技術は、UVA防御製剤の効果と使用感を両立できる有効な手段であるため、今後の研究開発が期待される。
花王㈱ 猪股 幸雄 氏
紫外線は、肌に様々な悪影響を引き起こすことが知られている。その影響は光の波長により異なり、紫外線を深く理解した上での防御対策が必要とされる。地表に到達する紫外線はUVAとUVBであるため、主にこれらの防御が必要となる。しかし、赤みや浮腫を伴わないUVA暴露においては、防御対策が疎かになりがちである。
本講演では、UVAの肌への影響、防御効果を示す指数やその評価方法、UV吸収剤と散乱剤の応用例を説明いただいた。UV吸収剤には最大配合上限量があり、高融点であるために油剤との相溶性に注意が必要である。また、製剤色への影響があるため、他の配合成分との相性も想定して製剤化すべきである。
UV吸収剤と併用される主な散乱剤としては、酸化亜鉛が挙げられる。その形状や表面状態を制御した「オクチルシリル化薄化状酸化亜鉛」は、防御効果の増大と透明感の付与等の良好な使用感が得られる素材である。形状や表面のコントロール技術は、UVA防御製剤の効果と使用感を両立できる有効な手段であるため、今後の研究開発が期待される。
座長:SCCJセミナー委員(牛乳石鹸共進社(株) 中村葉子)
講演④「女性の加齢による体型変化の実態」
(株)ワコール 徳光 奈美子 氏
(株)ワコールは、1949年の設立当初から女性用インナーウェアを中心に事業展開を行い、現在はベビーからシニア世代まで各世代向けのインナーウェアを開発している。
物作りにおいて、身体のサイズデータは不可欠であり、160箇所の身体計測をマルチン式計測法にて行い、50年間4万人以上のデータを収集した。また近年では、非接触3次元計測装置を用いて3次元データも蓄積し、年代別やサイズ別の身体特徴がより正確に把握できるようになった。
同一人物の加齢に伴う体型変化を解析し、「全ての人が同じ順序で体型変化すること」が確認された。また「加齢変化が小さく体型を維持している人」の身体や生活には、「体力があり健康」、「適度な運動」や「適度な食事量」といった特徴があった。更に興味深いことに、「正しいサイズの下着を着用している」といった特徴も見られた。
体型維持には、「加齢による体型変化とその理由」を正しく理解し、スキンケアと同様にボディもケアすることが重要である。そして、インナーウェアにより日常習慣として体型変化のケアができることを説明いただいた。
(株)ワコール 徳光 奈美子 氏
(株)ワコールは、1949年の設立当初から女性用インナーウェアを中心に事業展開を行い、現在はベビーからシニア世代まで各世代向けのインナーウェアを開発している。
物作りにおいて、身体のサイズデータは不可欠であり、160箇所の身体計測をマルチン式計測法にて行い、50年間4万人以上のデータを収集した。また近年では、非接触3次元計測装置を用いて3次元データも蓄積し、年代別やサイズ別の身体特徴がより正確に把握できるようになった。
同一人物の加齢に伴う体型変化を解析し、「全ての人が同じ順序で体型変化すること」が確認された。また「加齢変化が小さく体型を維持している人」の身体や生活には、「体力があり健康」、「適度な運動」や「適度な食事量」といった特徴があった。更に興味深いことに、「正しいサイズの下着を着用している」といった特徴も見られた。
体型維持には、「加齢による体型変化とその理由」を正しく理解し、スキンケアと同様にボディもケアすることが重要である。そして、インナーウェアにより日常習慣として体型変化のケアができることを説明いただいた。
座長:SCCJセミナー委員 (牛乳石鹸共進社(株) 中村葉子)
講演⑤「皮膚老化概論:酸化ストレスと糖化ストレス」
同志社大学大学院生命医科学研究科 アンチエイジングリサーチセンター・糖化ストレス研究センター
教授 米井 嘉一 先生
老化に関わる様々なストレスの中で、酸化ストレス(光老化)は皮膚ではシワ、シミに関わり、紫外線暴露から生じる活性酸素により様々な影響を受ける。
また、糖化ストレスは、還元糖、脂質、アルコールに由来する様々なアルデヒドが生体内で過剰に生成される状態を現わし、それを引き起こす原因は、血糖スパイク、脂質異常症、過剰な飲酒などがある。これらはどれもアルデヒドが関与し、生体内物質と反応してカルボニル修飾蛋白や糖化最終生成物(AGEs)を生成し、AGEs/RAGEシグナルを刺激して様々な変化が生じ、老化に伴う退行性変化や疾病の病因となる。
皮膚への影響についても、加齢に伴ってコラーゲンやエラスチン等の蛋白が糖化反応によってブドウ糖架橋形成され皮膚の硬化が起こったり、ケラチンの糖化により皮膚の透明感が失われたりする。
講演では、特に糖化ストレスに焦点をあて、皮膚で起こる糖化とその影響に関する話から、今後の化粧品分野における抗老化研究のヒントを頂くとともに、技術開発の重要性を感じる大変興味深い内容であった。
同志社大学大学院生命医科学研究科 アンチエイジングリサーチセンター・糖化ストレス研究センター
教授 米井 嘉一 先生
老化に関わる様々なストレスの中で、酸化ストレス(光老化)は皮膚ではシワ、シミに関わり、紫外線暴露から生じる活性酸素により様々な影響を受ける。
また、糖化ストレスは、還元糖、脂質、アルコールに由来する様々なアルデヒドが生体内で過剰に生成される状態を現わし、それを引き起こす原因は、血糖スパイク、脂質異常症、過剰な飲酒などがある。これらはどれもアルデヒドが関与し、生体内物質と反応してカルボニル修飾蛋白や糖化最終生成物(AGEs)を生成し、AGEs/RAGEシグナルを刺激して様々な変化が生じ、老化に伴う退行性変化や疾病の病因となる。
皮膚への影響についても、加齢に伴ってコラーゲンやエラスチン等の蛋白が糖化反応によってブドウ糖架橋形成され皮膚の硬化が起こったり、ケラチンの糖化により皮膚の透明感が失われたりする。
講演では、特に糖化ストレスに焦点をあて、皮膚で起こる糖化とその影響に関する話から、今後の化粧品分野における抗老化研究のヒントを頂くとともに、技術開発の重要性を感じる大変興味深い内容であった。
座長:SCCJセミナー委員((株)コーセー 石田 一弘)