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「講演会」 皮膚透過を考慮した機能性化粧品開発
『皮膚透過を考慮した機能性化粧品開発』
<講師> 城西大学 薬学部
准教授 徳留 嘉寛 先生
9月5日に大阪薬業年金会館において、133名の参加者を集めて大阪支部講演会を開催いたしました。今回は、経皮吸収促進技術の基本的な考え方から、機能性化粧品開発に向けた内容まで幅広くご講演いただきました。講演会の後には先生への質問で長い行列ができるほどの盛況ぶりでした。
化粧品における経皮適用製剤は、配合成分の蒸発や浸透により、時間経過と共に組成が変化します。この際の皮膚への透過は、角層や表皮への分配と、濃度勾配による拡散に支配されるため、これらの因子をコントロールすることが皮膚透過性を上げるポイントとなります。なお、化粧品の場合は医薬品と異なり、血管まで成分を移行させ血中に流れることを想定していないため、“経皮吸収”という言葉は使わず、“皮膚透過”といいます。その際、角層はバリア機能を有するため、そこを突破することが皮膚透過の第一ステップとなりますが、これには化合物の脂溶性、分配係数、分子量に加え、基剤からの放出しやすさ、基剤そのものの浸透性、角層そのものの状態が重要になります。脂溶性の高い物質は角層に分配しやすいですが、角層との親和性が高いため拡散性は低くなります。そのため、オクタノール/水分配係数(LogP)が1に近いものが、そのバランスがよく好ましいとされています。また、分子量は500以下のものが好ましいとされています(500Daルール)。また、透過を促進させる成分としては、アルコール類や油剤、非プロトン溶媒、保湿剤(α-ヒドロキシ酸、尿素など)があり、リモネンやメントールなども促進に働きます。
皮膚透過においては、油に溶解する化合物は油と共に透過しますが、油の量と相関があり、また分子量とは逆相関があります。これは、水溶性化合物に対するポリオールでも同様のことがいえます。そのため、製剤化の際には、透過させたい化合物だけではなく、油剤やポリオールなど処方全体で考えると、皮膚透過をコントロールすることができます。また、コントロールの手段としては、イオン対を利用する方法もあります。イオン性が強いと透過しにくいですが、中和したノニオン型にすることで吸収しやすくすることができます。
皮膚透過の測定については、in vitroとin vivoの評価を行います。in vitroの試験ではヒトや動物の皮膚、シリコーン膜などを用います。簡便なのはシリコーン膜ですが、これは化合物によって、in vivoとの相関性が高い場合と低い場合がありますので、ヒトや動物の皮膚を使う方法の方が予測しやすい傾向にあります。また、評価の方法としては、Franzセル(縦型)を用いる方法が開放系での評価となるため、実際の肌との相関が得られやすい傾向にあります。
最近は、皮膚透過の測定によって、有効成分だけでなく乳化物も透過していることが示唆されています。それらの技術も上手く用いることで、化合物を安定的に透過させる機能性化粧品への応用が可能だと考えられます。
<講師> 城西大学 薬学部
准教授 徳留 嘉寛 先生
9月5日に大阪薬業年金会館において、133名の参加者を集めて大阪支部講演会を開催いたしました。今回は、経皮吸収促進技術の基本的な考え方から、機能性化粧品開発に向けた内容まで幅広くご講演いただきました。講演会の後には先生への質問で長い行列ができるほどの盛況ぶりでした。
化粧品における経皮適用製剤は、配合成分の蒸発や浸透により、時間経過と共に組成が変化します。この際の皮膚への透過は、角層や表皮への分配と、濃度勾配による拡散に支配されるため、これらの因子をコントロールすることが皮膚透過性を上げるポイントとなります。なお、化粧品の場合は医薬品と異なり、血管まで成分を移行させ血中に流れることを想定していないため、“経皮吸収”という言葉は使わず、“皮膚透過”といいます。その際、角層はバリア機能を有するため、そこを突破することが皮膚透過の第一ステップとなりますが、これには化合物の脂溶性、分配係数、分子量に加え、基剤からの放出しやすさ、基剤そのものの浸透性、角層そのものの状態が重要になります。脂溶性の高い物質は角層に分配しやすいですが、角層との親和性が高いため拡散性は低くなります。そのため、オクタノール/水分配係数(LogP)が1に近いものが、そのバランスがよく好ましいとされています。また、分子量は500以下のものが好ましいとされています(500Daルール)。また、透過を促進させる成分としては、アルコール類や油剤、非プロトン溶媒、保湿剤(α-ヒドロキシ酸、尿素など)があり、リモネンやメントールなども促進に働きます。
皮膚透過においては、油に溶解する化合物は油と共に透過しますが、油の量と相関があり、また分子量とは逆相関があります。これは、水溶性化合物に対するポリオールでも同様のことがいえます。そのため、製剤化の際には、透過させたい化合物だけではなく、油剤やポリオールなど処方全体で考えると、皮膚透過をコントロールすることができます。また、コントロールの手段としては、イオン対を利用する方法もあります。イオン性が強いと透過しにくいですが、中和したノニオン型にすることで吸収しやすくすることができます。
皮膚透過の測定については、in vitroとin vivoの評価を行います。in vitroの試験ではヒトや動物の皮膚、シリコーン膜などを用います。簡便なのはシリコーン膜ですが、これは化合物によって、in vivoとの相関性が高い場合と低い場合がありますので、ヒトや動物の皮膚を使う方法の方が予測しやすい傾向にあります。また、評価の方法としては、Franzセル(縦型)を用いる方法が開放系での評価となるため、実際の肌との相関が得られやすい傾向にあります。
最近は、皮膚透過の測定によって、有効成分だけでなく乳化物も透過していることが示唆されています。それらの技術も上手く用いることで、化合物を安定的に透過させる機能性化粧品への応用が可能だと考えられます。
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