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第266回「学術講演会」

  • 学術講演会全景
  • 講演されている藤堂先生
  • 藤堂先生の講演に聞き入る聴講者の皆さん
  • 講演されている古賀先生
  • 古賀先生の講演に集中している聴講者の皆さん
第266回「学術講演会」が7月18日ゆうぽうとにおいて123名の聴衆を集めて、以下の2題のテーマで開催されました。

1題目は、城西大学薬学部薬粧品動態制御学研究室 准教授 藤堂浩明氏より、『経皮吸収促進技術の基本的な考え方及び化粧品開発に向けた応用』という演題でご講演いただきました。化粧品の開発過程において化粧品有効成分の有効性を高める考え方及び化粧品添加物の安全性を確保するための方法について、今話題のロドデノールを例に挙げてわかりやすくお話しいただきました。

紫外線防御剤は皮膚の表面に、保湿剤は角層・表皮部に、美白化剤は表皮に、抗シワ剤は皮膚の最深部である真皮に作用する。このように化粧品の有効成分は皮膚の表面から深部までを標的部位とし、一方、化粧品の主な作用部位は皮膚局所および皮膚表面であるため、その評価には皮膚中濃度が重要になる。生体への化粧品の有効成分浸透性を評価するにあたっては、皮膚表面で作用する有効成分では基剤から皮膚への分配を、皮膚深部において作用する成分では皮膚に分配した後に皮膚中を拡散し深部に達する違いを強く意識しなければならない。この経皮吸収促進技術は、有効成分の効用を判断するだけではなく、化粧品の安全性にも積極的に用いるべきとの有意義なご講演でした。

2題目は、杏林大学医学部精神神経科 教授 古賀良彦氏より、『香りと脳機能』という演題でご講演いただきました。古賀先生は、精神医学全般のなかでも、特に統合失調症、うつ病の治療をご専門にされており、アロマテラピーや食品の効果を科学的に検証し、臨床への応用を試みておられます。研究面では、精神生理学がご専門で、脳波分析や脳機能画像を用いた研究をされており、本講演会では、ストレスに対する香りの効果についてご講演いただきました。ストレスへの対応は、3つのR、すなわちRest(休養)、Relaxation(癒し)、Recreation(活性化)が重要で、なかでもRecreationが一番大切と言われています。このRecreationの方法として、3つのキーワード:香り、食品、ぬり絵に着目し、これらがストレスを防ぐ効果について、脳波(α波、事象関連電位P300)、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)、PETを用いて評価されており、講演では、香り、食品の効果についてご紹介がありました。

脳波やNIRSの測定結果を脳機能画像として色別に表示する方法を導入することで、非常にわかりやすい結果として示されており、ラベンダーの香りには鎮静効果があり、レモンの香りには覚醒効果があること、またカビ臭やタバコ臭によりα波(リラックスしたときに出やすい)の減少がみられたとの事例を紹介されました。また、コーヒー豆の香りによるα波、P300の測定結果より、グァテマラやブルーマウンテンはリラックス効果が高く、マンデリンはリラックス効果は低いがP300の脳波検査では高い数値が出ており、情報処理速度を高める効果があることを示され、コーヒーの香りには、「リラックス効果のある香り」と「集中力を高める香り」があるという結果をご紹介いただきました。

「たかが香り、されど香り。上手に使えば人の気持ちを動かすことができます。」とのことで、非常に興味深いご講演でした。
(学術部会A)