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チロシナーゼ [tyrosinase]
銅を含む酸化還元酵素で、動植物のメラニン色素産生にかかわる.その構造は、タンパク部分の分子量が約55,000で、糖が付加されて約65,000になる.アミノ酸の一種であるチロシンからドーパへのヒドロキシル化反応と、ドーパからドーパキノンへの酸化反応の二つの反応を行う.ドーパキノンは化学的反応性が高いため、自発的に、ドーパクローム、インドール−5,6−キノンヘと変化し、最後に酸化・重合して黒褐色のメラニン色素(ユウメラニン)となる.また、ドーパキノンにシステインが付加されると黄色のフェオメラニンとなる.メラニン色素の粒子はメラニン顆粒あるいはメラノソームとよばれ、メラニン顆粒の直径はおよそ0.4〜1.0 mmと小さい.このように、メラニンは、チロシンを原料としてチロシナーゼの働きで生成される(→メラニン).ヒトにおいて、チロシナーゼはメラノサイトというメラニン色素を生成する細胞に存在する.チロシナーゼは粗面小胞体のリボソームで生成され、ゴルジ器官関連小胞体(GERL)で糖鎖付加を受けて成熟し、メラノソームに転送配置されて、メラニン生成を触媒することができるようになる.このように、チロシナーゼの活性化のためには、糖鎖付加とメラノソームへの転送配置が律速段階になっている.また、糖鎖阻害剤であるグルコサミンやツニカマイシンがチロシナーゼの成熟(活性化)を阻害しメラニン生成を抑制することや、チロシナーゼの遺伝子欠損がチロシナーゼ陰性型眼皮膚白皮症(白子症)という遺伝病の原因であることなどが明らかにされている.なお、チロシナーゼと相同性が高いメラノソームタンパクとして、チロシナーゼ関連タンパク-1(TRP-1)、チロシナーゼ関連タンパク-2(TRP-2)がある.TRP-1の生理機能はまだ解明されたわけではないが、チロシナーゼの活性をサポートする働きがある.一方、TRP-2はドーパクロムトートメラーゼともよばれ、ドーパクロムからDHICA(5,6−ジヒドロキシインドール−2−カルボン酸)への変換を触媒する.(前田憲寿)