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pH [pH]
水溶液中の水素イオン濃度を表す方法.水溶液の酸性度、塩基性度の尺度である.25℃の水溶液において、pHが7より小さいものを酸性、7のものを中性、7より大きいものをアルカリ性(塩基性)の溶液という.pHという概念は、1909年デンマークの生化学者セーレンセンによって導入された.彼は、水素イオン濃度(H+)を溶液1、000mL中の溶質のモル数、つまりモル濃度で表したとき、水素イオン濃度の対数にマイナスの符号をつけた値、−log(H+)をpHと定義した.この定義によって、水溶液の水素イオン濃度を0〜14の間の数値で表すことができるようになったのである.pHの値は対数値なので、pHが1小さいということは、水素イオン濃度が10倍になっているということである.
pHバランス(pH balance)
生体環境のpHを一定に保持すること.生体内のpHを適切なレベルに保つことは生命の維持にきわめて大切であり、そのために、生体にはさまざまなシステムによる酸-塩基平衡調節系が存在する.水素イオンのモル濃度(mol/L)を(H+)としたとき、pH=−log(H+)であり、25℃の中性の水では、(H+)=(OH−)、pH=7.0である.血液のpHは通常7.40程度の弱アルカリ性を維持している.
皮膚のpHバランス
健常皮膚表面のpHは通常5〜7の弱酸性を維持している.皮膚表面のpHバランスを弱酸性に維持することによって、細菌、ウイルス、真菌などの発育を阻止する働きを助けていると考えられている.女性の皮膚pHは、男性に比べ平均で0.5程度、高値を示すことが報告され、また部位差も認められている.アトピー性皮膚炎、魚鱗癬(ぎょりんせん)、脂漏性皮膚炎などの疾患皮膚のpHは高い値を示し、pHバランスの乱れが関係していることが示唆されている.角層剥離(→角化)に重要な役割をもつ角層プロテアーゼには、弱酸性で活性化するものがある.したがって、適正なpHバランスは、酵素バランスを整えるための一つの条件といえる.なお、皮膚のpHはガラス電極を用いて測定できる.皮膚pHに影響を与える因子としては、各種の生体内因子、皮膚状態のほかに、環境温度、湿度、気圧などの環境因子があるため、皮膚pHを測定するときには、発汗しない程度の恒温・恒湿状態を保った環境に十分馴化させてから行うことが重要である.(今中宏真、土屋徹)