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皮膚表面形態 [types of skin surface]
皮膚は全身を覆い、眼瞼(がんけん)、口唇、肛門部などで粘膜に移行する.皮膚表面には皮溝とよばれる種々の深さ、長さの溝が走行している.浅く細い皮溝で囲まれる細かい隆起を皮丘といい、これらでつくられる紋様を皮紋とよぶ.さらに皮丘はいくつか集まってやや深く太い皮溝で囲まれる三角〜多角形の皮野(ひや)を形成するが、これは表皮の肥厚のさいに著明となる.毛は太い皮溝の交わる部分に生え、エクリン汗腺(→汗腺)の汗孔は皮野に開口する.また、皮溝の走行には部位による特徴があり、指腹、手掌や足底では並行して走り特異な紋理を形成する.これらが指紋、掌紋、足紋(足底紋)である.
皮膚表面の分類
皮膚表面の細かい凹凸については、Wolfにより1940年に提唱された第1次〜第5次のレリーフという語があり、小さいものから順に5段階に分けられる.肉眼的には第4〜第5次レリーフが認められ、皮丘と皮溝は第5次レリーフに相当する.
①第1次レリーフ:表層細胞の表面の微細な凹凸
②第2次レリーフ:個々の表層細胞による凹凸
③第3次レリーフ:表皮細胞の数個以上を超えて走るしわなどの凹凸.表皮の薄い体幹や手背に見られる
④第4次レリーフ:指紋、掌紋、足紋といった皮紋や、円丘群とよばれる肘頭、膝蓋(しつがい)、手足背、指伸側背にある直径0.2 mmほどの円い小丘の密集
⑤第5次レリーフ:皮溝で区切られた凹凸皮膚表面の形状は、一般的にはシリコーン樹脂を用いて鋳型(ネガティブレプリカ)をとって詳しく観察することができる.
皮膚の境界線
皮膚には一定の伸展方向があり、その長軸方向をランゲル割線(Langer's line)という.このほかにも皮膚表面にはさまざまな境界線がある.
①へッド帯(Head's zone):脊髄神経の支配領域ごとの境界
②フォイクト境界線(Voigt's boundary line):末梢神経の分布領域の境界
③ブラシェコ線(Blaschko's line):本態は不明であるが、扁平苔癬(たいせん)の丘疹がこの線に沿って生じることがある.
皮膚表面の微細構造
走査型電子顕微鏡で皮膚表面を拡大すると、顔、体幹、四肢では整然と並ぶ直径約30mmの六角形の角層細胞で覆われている.この細胞の上面には細かい凹みがあり、細胞を剥離して下面をみると細かいいぼ状の突起がある.これにより上下の角層細胞は互いにかみ合い、水平方向へのずれを防いでいるが、この凹凸はとくに手掌、足底で著しい.(松永由紀子)