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ふけ [dandruff]

頭部に生じて目に見える大きさの鱗屑(りんせつ)のこと.その特徴は炎症を伴わないこと、および頭部に発生場所が限られることである.頭皮表面から古くなった角層細胞は、常時小さな鱗屑(→スケーリング)として剥離(落屑)しているが、表皮の角化が亢進すると鱗屑は多くなり、目で見える大きさとなる.角化が異常に亢進すると、剥離する量も多くなって目立つようになる.皮脂分泌が少ない場合は、剥離した角層細胞を接着する力も弱くなり乾燥したふけとなる.このようなふけを乾性のふけと称する.皮脂分泌が亢進している場合は、ふけは粘稠性の湿った状態となる.これを脂性のふけと称している.ふけの発生は生理現象であり病気ではないが、放置しておくと悪化し炎症を伴うようになり、次いで発赤・かゆみが増大し、ついには脱毛への進行が指摘される.このためふけの発生を軽減することが必要とされている.
ふけ発生の増悪要因
頭皮も皮膚の一部で皮膚と同様に肌荒れを起こし、頭皮のターンオーバー速度の亢進が直接的なふけの発生原因ともいわれる.ターンオーバー速度を亢進する要因としては、皮脂の過剰分泌による遊離脂肪酸の刺激、過酸化脂質による刺激、頭皮の乾燥などがあげられる.なお、頭皮に常在する微生物の異常増殖により、この微生物が頭皮に対する刺激物質を発生してふけを増悪する考えも提案されていた.しかし、150名の被験者を対象にミクロケルダール法で測定したふけ発生の月間変動を見てみると、冬季の平均ふけ量は夏季の平均ふけ量の約2倍であることがわかる(図).夏季、とくに梅雨の時期は、微生物の繁殖に適している季節であるにもかかわらず、ふけの発生量は逆に減少していることから、頭皮に常在する微生物のふけ発生への直接的な関与はないものと考えられる.
ふけ発生増悪要因の改善
ふけの過剰発生を改善するためには、増悪要因である遊離脂肪酸と過酸化脂質の生成を抑制し、かつ頭皮の乾燥防止が必要である.これらに対応すべく角層剥離作用剤、抗脂漏剤、抗酸化剤、保湿剤などの効果を有する薬剤が必要とされる.また、かゆみや炎症をおさえるためには、殺菌剤、抗炎症剤、鎮痒剤がある.これらの薬剤は、薬用シャンプー、薬用リンスや育毛剤に配合されている.
ふけ防止効果測定法
ふけ防止製品としては、シャンプー、ヘアリンスや育毛剤が市販されている.これらのふけ防止製品のふけ防止効果を測定するには、一般に肉眼判定法が用いられる.この肉眼判定法は、病的なふけ症を対象として、ふけの発生程度を臨床専門医が観察するには適切な方法であるが、一般の健常人のふけ発生を対象として評価を行う場合は効率的な方法とはいえない.そのため、次の方法が提唱されている.
(1)ふけの採取法
頭全体のふけを効率よく、完全に採取する方法として、濾布上での洗髪がある.洗髪終了後、抜け毛とふけが残留している濾布を乾燥させ、産毛を含む抜け毛をすべて完全に取り除いて、ふけ試料とする.
(2)ふけ量の測定方法
精密な天秤で重量をはかる重量法があるが、天秤の精度や、肉眼では判別不能なふけ以外のごみや水分を含んでしまうのではないかという懸念がある.そのため、ふけ量をタンパク質量としてミクロケルダール法にて定量する.すなわち、ふけ試料中の総窒素量を測定し、次いでタンパク質量に換算した値をふけ量とする.本方法を、病的なふけ症でないと判定される頭皮に対して実施し、ふけ防止製品の使用前後におけるふけ量を測定してふけ防止効果を評価する.(植村雅明)

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