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筆 [brush]
通常、先端をそろえた毛を束ねて、金属(あるいは接着剤)などを用いて柄に固定した構造からなり、白粉(おしろい)、頬紅、口紅、アイライナー、エナメル、マスカラなどの化粧料を塗布する用具として幅広く用いられる(図).白粉や頬紅などに用いられる筆は毛の量が多く、毛足の長いものが大半であり、粉末を顔の比較的広い範囲にぼかしながら塗布するのに適した形をしている.逆に、口紅、エナメルなど指では塗布できないような細かい部分に使われる筆は毛の量も比較的少なく、さらに口紅やアイライナー用は細い線を描きやすくするため毛先のとがった形状となっている.毛の材質としては、馬、山羊、リスなどの天然毛のほかに、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維があり、毛のもつ使用感や中身による劣化などを考慮し、各化粧料に適した材質が選定される.馬毛は肌あたりがよく、なかでも馬の胴毛はとくにソフトでしなやかな使用感がある.ただし、馬毛特有の異臭や異物があるため、それを取り除くのに、前処理や洗浄を十分行う必要がある.山羊毛は馬毛に比べてこしがあるが、独特の縮れがあり、化粧料の含みがよい.また、一般に毛が太いため、肌あたりが強くなる傾向にあり、毛足の短い筆には適していない.リス毛は非常にしなやかで使用感がよいが高価なため、高級品のみに用いられるか、馬毛と混合して用いられる場合が多い.また、口紅用には短くてこしの強いイタチの毛を使用することもある.なお、ネイルエナメルなどのブラシには溶剤に強いナイロンなどの合成繊維が用いられる.柄はプラスチック製のものが多い(アクリロニトリル-スチレン共重合体あるいはポリスチレン製).(南孝司)