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母斑 [nevus]
発生異常による皮膚の先天性、限局性の組織奇形で、淡褐色?褐色まで形、大きさがさまざまな斑のこと.生来のものから青春期に出現するものまで、生涯のさまざまな時期に発現、徐々に発育し、しばしば部分的に小さな色素斑が盛り上がった丘疹が多数散在したり、皮膚面の色ないし形の異常を示す.病理学的には、皮膚奇形もしくは皮膚奇形に基づく良性腫瘍とみなされる.上皮系、神経提系、間葉系に分類される種々の母斑があり、代表的なものに顔面に生じるあざ(母斑)の太田母斑がある.太田母斑は女子に多く、発症は出生直後あるいは思春期である.組識学的には真皮メラノサイトの存在と一部表皮基底層のメラニン色素の増加が認められる.多くは片側性であるがまれに両側性である.出生後まもなく生じたものは年長になるにつれて範囲が拡大し、色調も濃くなる傾向がある.その傾向は、思春期に見られることが多く、また月経や妊娠、不眠に伴い色が濃くなることもある.そうした母斑は自然に消褪することはないが、60歳を過ぎると色調が淡くなって、それほど目立たなくなる.(伊福欧二)