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免疫抑制 [immunosuppression]
免疫反応において、その反応を抑制する現象のこと.生体には、自己と非自己を認識し、非自己を排除することによって自己体の恒常性を維持しようとする免疫機構が存在するが、この生体の基本機能が逆に、生体にとって好ましくない作用を示す場合がある.臓器移植のさいの拒絶反応や、自己と認識されるべき生体構成成分がなんらかの原因で抗原性を獲得したり、免疫機構が誤作動するなどして非自己と認識され、抗体産生されて免疫反応が起こり、組織破壊につながる自己免疫疾患などが、その代表例である.免疫抑制は、こうした生体に不利な免疫反応を回避するもので、生体内にはリンパ球やマクロファージが関与する免疫抑制機構が備わっている.抑制は抗原特異的サプレッサーT細胞や抗体による抗原特異的な抑制機序によって行われていると考えられているが、不明な点も多い.なお、こうした望ましくない免疫反応を抑制するために使用される薬を免疫抑制剤とよぶ.免疫抑制剤は、免疫反応にかかわるリンパ球の増殖、種々の細胞からのサイトカイン類の分泌や作用など、免疫反応が発現するさいにかかわるさまざまなステップに対して作用する.代表として、グルココルチコイド、シクロスポリン、FK506、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミドなどがある.また、表皮に存在する免疫担当細胞であるランゲルハンス細胞は、紫外線によって免疫機能が抑制される.紫外線照射によって、ランゲルハンス細胞の樹状突起構造が傷害されるとともにランゲルハンス細胞密度も低下して、接触過敏反応の誘導が抑制されることが報告されている.(土屋徹)