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原臭 [primary odor]
立体化学説を提唱した(1952年)アムーアが定めた基本臭がよく知られている.立体化学説とは、香りや匂いの分子の立体化学的な構造を鍵と考えて、嗅覚受容体の鍵穴の構造が一致したものが、その香気を知覚できるという説である.アムーアは基本臭として、エーテル臭、ショウノウ臭、麝香(じゃこう)臭、花香、はっか臭、刺激臭、腐敗臭の七つをあげている.その後、アムーアは嗅盲の研究から、次の八つを原臭の候補とした.l-ピロリン、トリメチルアミン、イソブチルアルデヒド、5α-アンドロスト-16-エン-3-オン、ω-ペンタデカラクトン、l-カルボン、1、8-シネオールである.原臭という考え方は、視覚の三原色(赤、緑、青紫)を嗅覚に応用したものであるが、嗅覚の場合は、原臭を組み合わせればすべての香りができるというわけではなく、科学的な根拠がないため、現在ではあまり支持されていない.(浅越亨)