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脂肪酸 [fatty acid]
RCOOH(Rは飽和または不飽和の炭化水素鎖)の一般式で表される化合物.広く、天然の油脂、ろうなどにエステル類として含まれている.動植物油脂類に含有されるものには直鎖カルボン酸が多く、それらのほとんどが炭素数偶数であることが特徴であり、その大部分は飽和酸ではC8〜C24、不飽和酸ではC18の炭素数を有している.動植物油脂、ろう類は800種以上にものぼるが、工業的に実際利用されるものはおもに、やし油、パーム油のほか数種類にすぎない.動植物油脂からの脂肪酸はいずれも数種類の飽和および不飽和脂肪酸の混合物で、これらから高純度の単体脂肪酸を分離するには、一般にメチルエステルを精製分留した後、分解する方法がとられている.しかし、同じ炭素数の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を蒸留によって分離することは非常に困難で、この場合は脂肪酸、エステルあるいは金属石けんなどを適当な溶剤を用い、溶解度の差を利用して分別結晶法で分離する.石油化学の進歩に伴って種々の合成脂肪酸も製造されており、工業化されているものとしては真鎖パラフィンの空気酸化によるもの、オキソ反応によるアルデヒドまたはアルコールの酸化によるもの、酸触媒の存在下にオレフィンと一酸化炭素の反応によるものなどがある.しかしながら、まだ動植物油脂からのものが品質もよく安価であるため、石油からの脂肪酸は天然に比較的少ない炭素数10以下のもの、あるいは分枝構造で低融点のものなどに限定されている.(西田勇一)