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安全性試験 [safety evaluation test]

化粧品そのものや化粧品に配合される成分の安全性について検討を行う試験.化粧品の安全性試験は最終的には製品そのものについて行われるのが基本であるが、化粧品に配合される成分は主として合成化学物質、または天然成分抽出物の混合物であることが多いので、それぞれの成分の安全性についても試験を行って確認する必要がある.化粧品の成分、すなわち原料に対する安全性評価は、標準的な毒性試験で実施されている.しかし、試験を行う前に原料メーカーのもつ安全性情報、科学文献やインターネットなどを通じて得られる情報、さらに国内外の公的機関による評価結果などを十分活用していくことも有効である.化粧品を新たに申請する場合、必要とされるほとんどの安全性データは、これら原料に関したものである.2001年の制度改正により作成された“化粧品の安全性評価に関する指針”では、基本的に評価しなければならない安全性の試験項目を、①単回投与毒性、②皮膚毒性、③眼粘膜刺激性、④皮膚アレルギー性、⑤変異原性の5項目に分類している.また、製品の最終的な安全性評価については、その製品の使用方法や使用部位などを考慮し、それぞれのメーカーが責任をもって実施することになっているが、指針では原料の安全性評価試験と同様の5項目の試験が適用される.単回投与毒性単回投与毒性試験は、被験物質を1回投与することによって生じる影響を調べる試験で、化粧品原料の試験では経口投与あるいは経皮投与が実施されている.この試験は、ヒトが被験物質を誤飲・誤食した場合に急性毒性反応を起こす量や症状について予測するためのものである.その方法としては、一般的な化学物質の試験はいくつかの濃度段階を設けて行われ、LD50(50%致死量)を求めることになるが、化粧品の原料や製品を試験する場合には、2 g/kgの1濃度を投与してとくに問題が生じなければ、それ以上の詳細な試験は行わなくてもよいことになっている(限度試験).皮膚毒性化学物質は、皮膚に接触すると刺激性皮膚炎を起こすことがある.この反応は免疫系を介しておらず、化学物質の直接的な傷害作用によって起こるものである.化粧品は皮膚に適用するものであるから、皮膚トラブルを防止するために事前に原料などの皮膚刺激性の程度を調べる次のような試験が実施されている.(1)皮膚一次刺激試験被験物質を、健常な(あるいは異常な状態も含む)皮膚に単回接触させることによって生じる紅斑、浮腫、落屑(らくせつ)などの変化を観察する.(2)連続皮膚刺激性試験被験物質を皮膚に繰り返し接触させることによって生じる紅斑、浮腫、落屑などの変化を観察する.(3)光毒性試験被験物質を皮膚に単回接触させ、さらにそこに紫外線を照射することによって生じる紅斑、浮腫、落屑などの変化を観察する.ヒトが被験物質を適用後、太陽光(紫外線)にさらされることによって起きる皮膚反応の予測を目的に実施されている.(4)ヒトパッチテストこの試験は被験物質の皮膚に対する安全性が、ほかの試験や毒性情報などによって立証された後、ヒトの皮膚に対する安全性の最終的な確認試験として実施されている.眼粘膜刺激性ある物質が眼に直接接触したときに、結膜に発赤・浮腫・分泌物、虹彩の変化、および角膜の混濁などの変化が生じる場合がある.これを観察するのが眼粘膜刺激性試験である.現在もっとも代替試験の研究が進んでいる.皮膚アレルギー性化学物質を皮膚に接触させたときに起きる皮膚炎で、免疫系を介して起きる皮膚反応からの傷害の有無や程度を予測するために次のような試験が実施される.(1)感作性試験アレルギー性評価試験法ともいう.被験物質を皮膚に数回接触させ、さらに一定期間後に被験物質を単回接触させることによって生じる紅斑、浮腫、落屑などの特異的な皮膚免疫反応を観察する.(2)光感作性試験被験物質を紫外線の照射下で皮膚に繰り返し接触させ、一定期間後に紫外線照射下で、被験物質を単回接触させることによって生じる紅斑、浮腫、落屑など、太陽光を介した特異的な皮膚免疫反応を観察する.変異原性変異原性試験は、被験物質を細菌や細胞と接触させたり、また腹腔内あるいは経口で投与したとき、細菌、細胞、臓器に生じる遺伝子突然変異、または染色体異常を観察する試験である.ヒトが皮膚に被験物質を繰り返し適用したとき、体内に経皮吸収あるいは経口的に摂取されることによって生じる発がんの危険性の有無を、短期間で予測するために実施されている.(鈴木惠子)

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