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製造物責任法 [Product Liability Law]

略してPL法ともいう.製品の欠陥によって生命、身体または財産に被害を被ったことを証明した場合に、被害者は製造業者などに対して損害賠償を求めることができる法律である.
本法律が施行されるまでには、公害問題などを通して多くの議論がなされてきた.わが国で大きな社会問題となった製造物責任事件としては、森永ヒ素ミルク事件(1955年)、サリドマイド事件(1965年)、スモン事件(1955-1980年)、カネミ油症事件(1968-1972年)、さまざまな欠陥車問題などがある.
これらの事件の背景を考えると、戦後しばらくの間は生産-消費のサイクルは、製造者が個別に少量生産した商品を、消費者がみずからの選択眼に基づき購入し消費するのが通常であり、商品の内容も比較的単純で、たとえ欠陥があったとしても、消費者自身がチェックできるものが多かった.しかし、生産力が上昇し、生産-消費のサイクルの主流が大量生産-大量消費の時代に入ると、複雑な機械や化学製品など、消費者の判断能力を超え、製造者の製品管理能力を信頼して購入するしかない製品が多数現れてきた.また、製造者のほうも、広告、マスメディアなどを通じ、直接の契約関係にはない、流通機構の末端にいる消費者に購入を働きかけていく状況が広く出現し、著名ブランドなども数多く現れるに至った.このような状況のもとでは、ブランドを信頼して購入した消費者に対し、その信頼に対応するだけの責任を製造者の過失の有無を問わず認めていくべきではないか、という議論が必然的に浮上してきたわけである.
昭和50年に国民生活審議会の消費者保護部会から“製造物責任法要綱試案”が発表されたが、日本での反公害運動の沈静化、一方、米国では1960年代に保険市場の破綻による製造物責任無過失化等製造物責任法“冬の時代”を経て、1985年(昭和60年)のEU司令(欧州の製造物責任立法)に端を発して全世界的に立法化され、日本では平成7月1日に施行された.(永井昌義)

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