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トラネキサム酸 [tranexamic acid]
略称t-AMCHA(trans-4-aminomethylcyclohexanecarboxylic acid)(図).プラスミノーゲンをプラスミンに変換するプラスミノーゲンアクチベーターを阻害する作用と、プラスミンによるフィブリン溶解を阻害するなどの抗プラスミン作用を示す.また、トラネキサム酸のもつ抗プラスミン作用は、歯周病(歯槽膿漏)による歯茎からの出血の防止効果が知られている.一方、皮膚の表皮でプラスミンは、肌荒れの発生過程に働いていることが明らかになっており、表皮におけるプラスミノーゲン活性化系の役割が注目されてきた.近年、肌荒れに対するトラネキサム酸の有効性が明らかになり、薬用スキンケア化粧品の有効成分として開発された.トラネキサム酸は、プラスミノーゲン活性化系の働きを抑制する作用をもち、肌荒れに伴う皮膚表面状態(かさつき、粉吹き状態)を予防、改善する効果をもっている.しかしその作用は、プラスミノーゲン活性化系の過剰な働きを抑制することによる、皮膚のバリア機能*や緩衝能(アルカリ中和能)を担う角層の機能の維持改善である.(北村謙始)