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パッチテスト [patch test]
被験物質を皮膚に適用することで人為的に経皮吸収させ、人工的な接触皮膚炎が生じるかどうかを評価する試験.皮膚貼付試験ともいう.その主たる目的は、アレルギー性の接触皮膚炎の原因となった物質を特定することであるが、被験物質の皮膚一次刺激性を評価する目的でも行われる.前者を目的とする試験を診断パッチテスト、後者を予知パッチテストとそれぞれよぶ.パッチテストは19世紀末の水銀過敏症の研究に始まり、しだいに試験法として改良、定着してきた.本試験は方法が比較的簡単で、接触皮膚炎の原因究明および治療に対して有用であるため、現在では皮膚科領域において広く行われている.しかしながら本試験の判定にはしばしば困難な場合があり、さらに被験物質を人為的に塗布することでアレルギーが成立してしまう可能性もあるために、皮膚科医など高度な専門的知識のある人の監督下で行われるのが望ましい.パッチ(貼布)テストはその名が示すように、布あるいはアルミニウム皿などを絆創膏の上につけたパッチテストユニットを用いることが多いが、その目的に合わせてオープンテストやクローズドパッチテストなどさまざまな方法がある.オープンテストはパッチテストユニットを用いず、揮発性の高い物質、あるいは刺激性が高いと考えられる物質を検査する場合や即時型反応を検査する場合に行われる.一方、クローズドパッチテストは、被験物質を皮膚病変のない背部(傍脊椎部)や上腕部に通常48時間閉塞塗布を行う.クローズドパッチテストで用いるパッチテストユニットとしてはアルミニウム皿を用いるフィンチャンバー®などのほか、不織布やプラスチック製のものも使用されている.判定は、除去時に生じる一過性の反応が消えるのを待って、パッチテストユニット除去後一定時間後(通常1時間後)に行い、さらに24時間あるいは48時間後なども含めて数回行う.ただし物質によっては陽性反応が遅く出現する場合もあるので継続して観察しておくことが必要である.また、光エネルギーの関与が疑われる場合には、塗貼後にUVAを照射する光パッチテストを行う場合もある.判定の基準にはICDRG(International Contact Dermatitis Research Group)基準と本邦基準が用いられており、アレルギー反応はICDRG基準、刺激反応は本邦基準でそれぞれ判定することが多い.反応の解釈に関しては、陰性・陽性いずれの場合でも経験に裏打ちされた慎重な判断が求められる.(足利太可雄)