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s-IgA [secretory immunoglobulin A]

免疫グロブリンまたはイムノグロブリンとよばれる抗体としての構造をもつ分子の一つ.免疫グロブリンA、分泌型IgAともいう.免疫グロブリンにはIgA、IgG、IgE、IgM、IgD、の5種類がある.IgAには血清型と分泌型があるが、s-IgAは分泌型IgAのことである.血清型IgAの大部分は、2本のH鎖と2本のL鎖からなる単量体(分子量16万)であるが、一部は複数個の単量体が1分子のJ鎖を介してSS結合(ジスルフィド結合)した多量体IgAとして存在する.s-IgAは、この血清型多量体IgAに分泌成分1分子ジスルフィド結合した構造(分子量39万)である.分泌成分は、免疫グロブリンとは無関係につくられるタンパク質で、消化管に存在する酵素によるIgAの分解から守る働きをする.s-IgAは、消化管、気管などの粘液や母乳、唾液、涙、鼻汁などの外分泌中に存在する.s-IgAは、消化器、呼吸器、体表面の粘膜における局所免疫機構の一つとして重要である.初乳中にも高濃度に含まれ新生児の感染防御に役立っている.唾液中のs-IgAは化粧品関連の生理指標の一つとして利用され、専門技術者による一連のスキンケア施術によって唾液中のコルチゾール濃度の低下と唾液中s-IgA濃度の増加が認められたという例もある.また、連続的に採取した唾液を分析すると、s-IgA濃度は大きく変化しない、もしくは若干の低下を示すが、香りの吸入を始めることによって唾液中のs-IgA濃度が上昇することが確認されている.被験者の快適評価も香り吸入で上昇しており、また、香りに対する嗜好度と濃度上昇率の間には相関関係があり、一方、不快な香りを吸入してもs-IgA濃度は変わらないことが報告されている.(土屋徹)

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