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まつ毛 [eyelashes、 cilia]

まぶたの縁に生えている毛.眼に異物が入るのを防ぐ機能を有すると考えられている.近年アイメークの中でも非常に注目を集めている部位で、メークアップの仕上り状態によって驚くほど表情が変わって見える.まつ毛はまぶたに2〜3列をなして生えており、一般に上まつ毛のほうが密生して長く、上方に曲がり、下まつげは下方に曲がっている.上まぶたには100〜150本、下まぶたに50〜75本あるといわれており、長さ7〜8 mm、太さ直径約91 μmで、眉毛の10 mm、約107 μmよりも短く、細い.また、まつ毛のほとんどには髄質があり、キューティクルの数が人体の毛髪中で一番多いといわれている.個人差や人種差も大きく、日本人と欧米人(白人と黒人)では、日本人のほうが短くて本数が少なく、また上まつげの生え方(水平に対する角度)も欧米人では上向きが多いのに対して、日本人では下向きが多いと、異なっている.一般にまつ毛の毛周期(ヘアサイクル)は1サイクルが3〜5カ月で、成長期が4週間、休止期が4カ月といわれるが、この約2倍の長さであるとの報告もある.また、まつ毛の伸長速度は0.18 mm/日で、上まつ毛の成長期毛率が41%、下まつ毛の成長期毛率が15%といわれている.
ボリューム効果 volumizing effect 
まつ毛を太く濃く見せる効果のこと.まつ毛にボリューム効果を与えると目の印象が強くなり、アイラインを引いたような効果を付与して、目元がはっきり大きく見える仕上がりになる.ボリューム効果はマスカラに求められるもっとも重要な機能であり、とくにボリュームマスカラは欧米人を中心に人気が高い.日本においても1990年後半から、目元へのアイメークが復権し、まつ毛にボリュームを与えて目の印象を強めるメークが流行になっている.若い世代では、とくにボリューム効果の高いマスカラが望まれている.日本人は欧米人に比べ、まつ毛が下向きで本数自体も少ないため、ボリューム効果がカール効果とともに必須な機能である(図).
ボリューム効果の向上
ボリューム機能を発現させるには、付着力が高いこと、まつ毛に残る固形分が多いこと、そして塗りやすいブラシが必要となる.技術的には、処方中に炭化水素系などの固形ワックス(ろう)を多く配合している製品が多い.ワックスの種類も硬さが軟らかいものから硬いもの、極性が低いものから高いものまで多種多様に使用され、工夫が施されている.また、化粧もちの向上と均一なきれいな仕上がりを付与するためには、アクリル酸系、シリコーン系などの樹脂が併用される場合が多い.さらに、付着力を上げるため、ポリビニルアルコールポリビニルピロリドンなどの接着力の高い高分子も汎用されている.ブラシは、中身に合わせてたっぷりと中身原液が含まれるように工夫されており、ブラシの隙間(ピッチ)が大きく、毛足が長いものが一般的である.最近では、ブラシの毛をねじったタイプや毛先がばらけるように処理したタイプ、また1回でしっかり塗布できるくし型のコームタイプなども多く使われている.
カール効果 curling effect 
まつ毛をクルッとカールさせて、上向きにする効果.カール効果により目元がはっきりして、いわゆるぱっちり目の仕上がりになる.通常はビューラーを使用し、その後マスカラを塗布してカール効果を維持させる.カール効果はマスカラに必須な機能であり、とくにカールタイプのマスカラは、約80%の割合で下向きのまつげを有する日本人やアジア系民族に人気が高い.カール効果の向上マスカラにカール機能を発現させるには、根元からの塗りやすさ、乾燥の速さ、そして強い固化力が必要となる.技術的には、処方中に固形ワックスや酢酸ビニル系、シリコーン系などの硬い樹脂が配合され、強い固化力を実現している.また、カール効果を維持するため耐水性や耐皮脂性に優れていることも重要であり、シリコーン系やフッ素系の樹脂が併用されることも多い.マスカラのブラシは、根元からもち上げやすい細身のタイプが主流でもっとも効果を出しやすい.最近では、目の形に合わせて湾曲したカーブタイプや、まつげに均一に塗りやすい細い毛のフロッキーブラシなどもあり、さまざまな工夫がされている.(辻善春、南孝司)

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