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毛髪の耐摩耗性 [resistant-weariness of hair]
ブラッシング時や洗髪時の摩擦を中心とした物理的刺激に対し、毛髪を保護する働きを表すさいに用いられる.その中心的な役割を担うのが、毛髪の外側に存在するキューティクルである.キューティクルはSS結合(ジスルフィド結合)を豊富に含んだ硬い構造となっているため、摩擦などの物理的刺激に対し抵抗性が高く、毛髪内部を保護する働きをもっている.キューティクルと耐摩耗性毛髪の耐摩耗性は、層状構造であるキューティクル(通常は6〜8枚ぐらい)の枚数の減少とともに低下していく傾向にある.キューティクルの摩耗や剥離によって軟らかいコルテックス(毛皮質)が露出すると、毛髪はさまざまな損傷を受けやすくなり枝毛や切毛などが顕著に表れる.毛髪の損傷をおさえ、毛髪の耐摩耗性を維持するためには健康なキューティクルを保つことがなにより重要といえる.測定毛髪の耐摩耗性は、動摩擦、静摩擦と同様に、オイラーのベルトの理論を利用したプーリー法のレダー式摩擦試験機によって測定されることが多い.プーリー法では、1本の毛髪の両端に同じ重さの荷重を加えて、アルミニウム製のプーリー(滑車)にかけてつり下げ、一定速度でプーリーを回転させる.そのさい摩擦係数は時間とともに急激に上昇する.この現象は毛髪表面のキューティクルが毛髪とプーリー間に生じる摩擦によって摩耗または剥離して、内部のコルテックスが露出し、粗い表面になるために起こる.この、キューティクルの完全な剥離によって摩擦係数が上昇するまでの時間を、毛髪の耐摩耗性の尺度として表すことが多い.(川副智行)