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毛髪のつや [luster of hair]
毛髪の表面状態を示す光学的性質で、毛髪の美しさを判断する基準の一つ.毛髪のつやは毛髪1本単位で議論されるミクロなつやと、髪全体(毛髪1本1本の集合体)としてのマクロなつやの二つに大別される.化粧品の観点から求められるつやは髪全体のつやであるが、それを具現化するために毛髪1本1本に対するつや付与が研究されている.毛髪1本のつや毛髪1本の光学的なつやを研究するには、2種類の反射を考慮しなければならない.一つは表面からの反射成分である表面反射もしくは界面反射であり、もう一つは内部構造状態もしくはメラニン色素粒子での光散乱による内部反射もしくは拡散反射である.(1)毛髪の表面反射毛髪はキューティクル、コルテックス(毛皮質)、メデュラ(毛髄質)の大きく三つの構造から構成されているが、毛髪の表面での光の反射は、キューティクルの状態によって左右される.キューティクルは屋根がわら状に根元から毛先に向かって積み重なった構造をしているため、表面での正反射は入射角に対し反射角では3〜5°ほどずれが発生する.なお、毛髪の損傷が進行し、キューティクルの平滑性が失われると正反射光は低下し、つやの低下が起こる.(2)毛髪の内部反射内部反射は、入射光が透明なキューティクル層を通過し毛髪内部構造によって拡散されて反射されるものである.内部に入った光のある部分は毛髪の背壁において反射され、光散乱解析では第二のピーク(背面反射光)として観察される.この背面反射光の強度は、金髪ではより高く、暗色の毛髪では含まれるメラニン色素が光を吸収することから低い値となる.最近の研究では、この背面反射光が高まると毛髪の奥行き感(立体感)が出ててくるとの報告もある.毛髪全体のつや1本の毛髪の反射特性は、毛髪の集合体でのつやの状態にかならずしも反映されない.通常、頭髪は15万本以上あり1本1本が独立した動きをしており、鏡や金属などの固い表面とは異なって不連続的で、絶対に静止状態にならないものである.この毛髪の不連続性が頭髪全体のつやの確かな評価を、きわめて困難なものにしている.頭髪全体でみた場合、1本1本の毛髪が乱れた状態よりも毛の流れがそろっているほうがつやを強く感じる.これは、頭髪全体がとても大きい面として存在しているため、毛髪1本1本の表面の正反射がそろうことに起因している.測定方法一般に物体のつやは、入射角と同じ角度の反射光、すなわち正反射光が多いほどつやがあると感じ、拡散反射光が多いほどつやがないと感じる.毛髪の場合も同様で、一定の入射角に対する正反射光と拡散反射光の強度比を測定することによりつやを測定できる.すなわち、毛先と根元の方向をそろえた毛髪約10本に対し、入射角30°で光を照射し、それに対するさまざまな角度での反射光を変角光度計(ゴニオフォトメーター)を用いて測定する.通常、毛髪はキューティクルの重なりによる傾斜のため、入射角に対し5〜7°ずれた反射が正反射光となる.このほか最近では、ビデオカメラで撮影した後頭部の画像をRGBに分け解析する方法も用いられている.(植村雅明、川副智行)