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血管拡張 [vasodilation]
血流を促進するなどの目的で末梢血管を拡張すること.血管の拡張や収縮には自律神経が支配的な役目を担っており、血管に分布する交感神経は血管を収縮させる作用があるので血管収縮神経ともいわれ、副交感神経は血管を拡張させるので血管拡張神経ともいわれている.医薬部外品または医薬品に分類される育毛剤においては、養毛・育毛効果を発揮させるための血管拡張による血行促進を目的とて血管拡張剤が重要な成分の一つとして配合されている.
育毛剤における血行の重要性
6〜14万本あるといわれている頭髪は、1日に約0.3〜0.4 mm成長するが、つねに成長しつづけているわけではなく、成長期→退行期→休止期→脱毛という過程を繰り返している.この周期はヘアサイクル(毛周期)とよばれる.成長期は2〜7年であり、この間、毛球部に存在する毛母細胞の活発な細胞分裂が行われている.この細胞分裂は、毛乳頭とよばれる部位にある毛細血管から血液を介して栄養源が毛母細胞に供給されることによって営まれる(→総論8章).男性型脱毛症のおもな原因としては、①男性ホルモンの関与による毛包機能低下、②血液循環の不良、③栄養不良、④ストレス、⑤遺伝などが指摘されている.しかしながら頭部における血行を促進し、毛母細胞へ栄養源を補給することは、育毛・養毛作用を発揮させるのに有効なアプローチの一つとなっており、血管拡張作用を有する成分が育毛剤の成分としてよく用いられる.
育毛剤における血管拡張剤
末梢血管における血流を改善し血行を促進したり、毛根を刺激する作用のある局所刺激剤などが用いられる.血行促進剤としては、ビタミンEおよびその誘導体、センブリエキス(スウェルチノーゲン)、セファランチン、塩化カルプロニウム、ミノキシジルなどがある.局所刺激剤としては、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、カンタリスチンキ、ニコチン酸ベンジルなどがある.チンキ剤は皮膚を刺激する成分を含有しているので、この刺激により二次的に血流が促進される.このほか、育毛を目的とした薬剤には代謝賦活剤、栄養剤、保湿剤、殺菌剤、消炎剤、抗男性ホルモン剤などがあり、複数の薬剤を組み合わせて用いることが多い.(小林秀)