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アルコール感受性 [sensitivity to alcohol]

一般には、酒類摂取時の酩酊状態や顔面紅潮の程度の差をさす場合が多いが、ここでは化粧品に含まれるアルコール類に関して述べる.化粧品の中には清涼感を与える、菌の繁殖をおさえる、および配合成分の溶解性の向上などを目的として、アルコール類を配合する製品が存在する.このようにアルコール類は化粧品原料として有用であるが、化粧品中のアルコール類によって非免疫性のじんま疹や紅斑などの皮膚トラブルが塗布部位に生じる場合がある.このトラブルは使用者のアルコール感受性の度合いによって起こるもので、そうした事態を避けるためには、事前に使用者の体質を把握することが必要である.その検査方法の一つとしてアルコールパッチテストが知られている.そこで陽性と出た場合は、アルコールフリーの製品を使用することが望ましい.アルコールにより皮膚トラブルを起こすメカニズムは、以下のように考えられている.アルコールを皮膚に適用すると経皮吸収され、皮膚中でアルコール脱水素酵素により酸化を受けてアルデヒドが生成する.アルデヒドはアルデヒド脱水素酵素によりさらに酸化されることになるが、その酵素の活性が低いか欠損している場合、アルデヒドが皮膚内に蓄積されて毛細血管の拡張が生じ、紅斑などの皮膚反応が生じると考えられている.したがってアルコール感受性の度合いには、経皮吸収を左右する角層バリア機能および皮膚中でのアルコール代謝酵素の活性の違いが大きく影響していると考えられる.角層バリア機能に関しては個人、体調、あるいは部位による違いがすでに知られている.また、アルコール代謝酵素についても、遺伝的な違い(遺伝子多型)により個人差が大きく、また人種によって異なることが明らかとなっている.ちなみに日本人の場合、約40%がアセトアルデヒド脱水素酵素の活性が低く、約5%は欠損しているとされている.(足利太可雄)

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