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アルブチン [arbutin]
化学名は4-ヒドロキシフェニル-β-D-グルコシピラノシド(図).コケモモ、ウワウルシ、ナシなどの植物の葉に含まれるヒドロキノンの配糖体である.“メラニンの生成をおさえしみ・そばかすを防ぐ”効能として美白用医薬部外品主剤として承認され、化粧品に配合されている.1980年代までは、美白を訴求する医薬部外品用薬剤としてアスコルビン酸塩や胎盤抽出物などが汎用されてきたが、アルブチン配合化粧品が発売されて、1990年以降美白化粧品ブームが高まった.その先駈けとなった薬剤である.チロシナーゼは、メラノソーム内におけるメラニンの生成過程の最初の段階でチロシンからドーパへの水酸化反応と、次の段階であるドーパからドーパキノンへの酸化反応を触媒していて、この反応がメラニン生成の律速段階とされている.アルブチンはこのメラニン生成のキー酵素であるチロシナーゼの活性を抑制する.アルブチンのチロシナーゼに対する作用様式は、基質であるドーパとチロシナーゼの活性部位を競合しあう拮抗阻害である.メラニン生成抑制作用を示す薬剤には、化学構造が似ているヒドロキノンやヒドロキノンモノベンジルエーテルがあるが、アルブチンの作用機序はこれらとは異なることが明らかにされている.(八木栄一郎)