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微生物汚染 [microbial contamination]
ある対象物に微生物が混入して、生存もしくは増殖すること.微生物汚染は化粧品の製造段階で発生する一次汚染と、消費者の使用段階で開封してから発生する二次汚染の二つに大別される.一次汚染は原材料(原料、容器など)、製造環境(製造設備や水、空気など)および作業者などを介して、微生物が製品に混入し、増殖することである.一次汚染を防止することは製造者(企業)の責任であり、バイオバーデンを調査することによって汚染源を特定し、殺菌や除菌によって汚染源の微生物を減少させるのが基本である.一方、二次汚染は化粧品が使用または保管される環境、使用者の手指などを介して微生物が混入し、増殖することである.消費者が衛生的な使用と保管を心がけることも大切であるが、あらかじめさまざまな状況を想定して、たとえば、防腐剤の配合や衛生的に使用できる容器を使用するなど、製造者(企業)が製品に防止策を施す責任がある.化粧品が微生物汚染を受けると、微生物およびその産生物質による物理的、化学的な影響によって腐敗、変敗による異臭や変色、粘度低下などの品質劣化を生じることがある.また、微生物に病原性がある場合には、健康被害をもたらす危険性もある.微生物汚染を受けた化粧品は、薬事法の第56条に規定される“製造、販売等を禁止される医薬品(化粧品)”の第4項“その全部又は一部が不潔な物質又は変質若しくは変敗した物質からなっているもの”、第5項“異物が混入し、又は附着しているもの”、第6項“病原微生物により汚染され、又は汚染されている恐れがあるもの”などに該当し、製造、販売することが禁止されている.化粧品の微生物汚染およびそれに由来する事故に関しては、海外で、目元に使う製品で重篤な健康被害を引き起こした事例が報告されている.国内では重篤な健康被害の報告はないが、商品が微生物汚染を起こし回収された事例はある.化粧品の微生物汚染は、製品の用途や内容物の化学的、物理的特性などによって、汚染の受けやすさや汚染微生物の種類に特徴があるといわれている.たとえば、シャンプーのように界面活性剤や水の配合量が多く、高温多湿な環境(浴室など)で使用、保管される製品は、汚染の発生件数が多く、グラム陰性の非発酵性菌(おもに緑膿菌:Pseudomonas aeruginosa)が原因している場合が多い.(中島靖夫)