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炎症反応 [inflammatory reaction]

生体にとって有害な刺激が侵入または内部で形成された場合に生じる、局所的な生体反応の総称.局所の反応に伴う急性の全身症状を含める場合もある.炎症反応は刻々と変化する多様でダイナミックな連鎖反応の過程そのものであり、局所の生体調節反応の表現であるととらえることもできる.炎症反応は生体にとって有害な刺激を認識し、排除することで、局所の機能や構造を回復して正常に保ちつづけるために重要な役割を果たしている.しかしながら、活性化されたさまざまな生体反応システムは、自己免疫疾患などに見られるように、ときに正常な組織や機能に障害を与える場合もあることから、過剰なものは病的現象として治療の対象となる.炎症反応を引き起こす要因としては、バクテリアやウイルスなどの感染性物質、アレルギー反応を生じさせる抗原物質(内因性物質も含む)、組織の損傷を生じさせる刺激因子などがあげられる.とくに外因性の刺激により皮膚において生じる炎症を接触皮膚炎という.
炎症反応の過程
炎症反応は非常に複雑で動的なプロセスであるため、その全体像を把握することは容易ではないが、大きく次の四つの過程に分けてとらえることができる(図).①炎症部位における血流量の増加:血管の拡張によって一時的に血流促進が生じるが、後には緩慢になる.②血管内皮細胞の収縮による毛細血管透過性の亢進:内皮細胞間の間隔が開くことや小胞輸送が増加することによって透過性が増加することで、通常透過することのない高分子(補体、抗体、酵素など)が血管外に遊離し、炎症メディエーターなどが炎症部位に集中する.③白血球などの炎症性細胞の血管外への遊走と組織への浸潤:炎症初期には好中球やマクロファージ、後期にはリンパ球がおもに毛細血管から周囲の組織に向かって遊出する.④線維芽細胞の増殖を中心とした組織破壊の修復過程:最終過程において炎症反応はネガティブに制御され、さらに炎症性細胞の浸潤などにより損傷を受けた組織を修復することで、反応前の状態に回復する.
炎症の症状
炎症反応の特徴として、発赤、腫脹、灼熱、疼痛(とうつう)が知られている.炎症時の痛みの特徴は自発痛と痛覚過敏である.皮膚における炎症の場合、自発痛は多くの場合灼熱痛であるが、ときに拍動痛となることがあり皮膚温に影響を受けることが知られている.さらに炎症部位においては、痛みに関する感受性が高くなっており、通常では痛みを生じないような刺激においても痛みを引き起こすことがある.たとえば日焼けにより炎症を生じた皮膚では、通常問題ないシャワーの刺激を強く感じるといったことである.
炎症の治療
過剰な炎症反応は、ときに正常な生体の組織および機能に障害を与えるばかりでなく、たえがたい痛みを生じることから、治療が必要とされる.ここでは接触皮膚炎を中心に述べる.まずなにより重要なことは、医療機関によって原因となる因子を同定し、その因子との接触を絶つことである.接触皮膚炎の原因となる因子の追求にはパッチテストがもっとも有効とされている.初期の発赤、腫脹には冷湿布なども有効で、急性で激しい場合には抗炎症剤の投与を行うこともある.抗炎症剤にはステロイドや非ステロイド性のもの、あるいは免疫抑制剤などが知られている.いずれにしても専門的知識のある医師による診療が必要である.(足利太可雄)

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