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紫外線 [ultraviolet light]

太陽光とは太陽内部での水素原子が融合し、ヘリウム原子核となるときに生じる核融合エネルギーによって放射される種々の電磁波のことである.それにはγ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線があり、これらのうち実際に地表に届くのは、赤外線、可視光線、紫外線の3種類の電磁波である.その中で人体に大きな影響を及ぼすとされるのは、わずか6.1%にしか満たない太陽紫外線である.太陽紫外線は地表に到達する電磁波の中で一番波長が短く高いエネルギーをもっている.紫外線は190〜400 nmの範囲の電磁波であり、太陽光線に含まれる.可視光線の紫色よりさらに短い波長の光線という意味で紫外線(UV)とよばれている.紫外線はその生物学的な作用によって長波長(近紫外)域、中波長域、短波長(遠紫外)域、および真空紫外域の紫外線に分けられる.それぞれUVA(320〜400 nm)、UVB(290〜320 nm)、UVC(190〜290 nm)、VacuumUV(100〜190 nm)とよばれている(図1).また、UVAはさらに320〜340 nmをUVAII、340〜400 nmをUVAIに分けられる.UVAはUVBと異なりガラスを透過すること、曇りの日でも雲に遮られることなくかなりの部分が地表に到達するという性質をもっている.
皮膚に対する傷害
日常生活でも多く紫外線を浴びることから徐々に皮膚に障害を及ぼしつづけると考えられている.UVAはその波長の長さから皮膚の深部まで到達する.長期間UVAを浴びることにより皮膚の老化(はりや弾力の低下)を促進することが知られている.また、表皮にある淡色メラニン色素を濃色のメラニン色素に変化させ皮膚を即時的に黒化させる作用がある.UVAは皮膚の内在性の光増感剤を励起させることにより活性酸素を発生させる.発生した活性酸素が皮膚に傷害を与えることはよく知られている(→フリーラジカル).UVBはヒト皮膚に暴露されると炎症性の紅斑反応を引き起こすことからサンバーンスペクトル、あるいは紅斑バンドとよばれている.UVBは即時的な皮膚反応として紅斑や浮腫のような炎症(サンバーン)反応を引き起こす.炎症後の皮膚では、色素沈着が観察され、これは紫外線により活性化された色素細胞によりメラニンの産生が高まったことが原因である.また、UVBは皮膚の免疫機能を低下させ、長期間浴びることによって皮膚がんの発症の原因となる.細胞内DNAはUVBの波長を吸収し、光化学反応を核内で起こす.UVBは核酸塩基の二量体(シクロブタン型、6-4光付加体)を形成し、DNA損傷を引き起こす.また、皮膚内で活性酸素を発生させ、発生した活性酸素が皮膚に傷害を与えることはよく知られている.また、UVCは細胞内のDNAに吸収されDNAの損傷を引き起こすことから殺菌作用を示すことが知られている.地表に届く紫外線にはUVBの一部とUVA全部が含まれている.UVCは成層圏に存在するオゾン層によって吸収され、地上に到達することはない.太陽放射エネルギーに占める紫外線の割合は約6%程度である.
紫外線量の地域差と年間および日内変動
国内7都市の紫外線量を5年間測定した年平均照射量を図2に示した.北から南に行くほど、また、高地に行くほど紫外線量は強くなる傾向がある.また、図3、図4はUVAおよびUVBの年間変動および8月の1日の日内変動を示したものである.UVA、UVBともに5月〜8月にピークがあり、日内変動では12時にピークがあることがわかる.

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