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チュベローズアブソリュート [tuberose absolute]
アマリリス科のチュベローズ(Polyanthes tuberosa L.)の花びらから溶剤抽出法または冷浸法で得られる精油.チュベローズは夜になると甘く魅惑的な香りを漂わせることから、月下香ともよばれる.その特徴的な香気のおもな成分はγ-ノナラクトンとジャスミンラクトンなどである.また、この香りはホワイトフローラル調の香りには欠かせない香料素材で、“プワゾン”(クリスチャン・ディオール社)や“ビューティフル”(エスティローダー社)などの香水に特徴的に使用されている.なお、チュベローズはジャスミンとよく調和する.チュベローズからは水蒸気蒸留法ではほとんど精油が採れず、採れる精油も花らしい香りがしないため、古くから石油エーテルによる溶剤抽出法や豚脂や牛脂を用いた冷浸法(アンフルラージュ法)が用いられてきた.しかし、溶剤抽出法は採油率が低く、アンフルラージュ法は人件費コストが高いため、双方とも得られる精油価格が非常に高くなり、現在では天然の香気を再現した調合香料を使用することが多い.(大森祥弘)