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肌の質感 [visual quality、 feeling of quality]
素肌あるいは化粧肌の仕上がり状態はそれらの観察者に対して“ふんわり”“きりっと”などさまざまな印象を与える.このような感覚的に評価される肌の状態を総称して肌の質感という.とくに、質感を調整することはメークアップ化粧品、おもにファンデーション類にとって非常に重要である.質感はつやのないマットな仕上がりと、つやのある仕上がりの2種類に大きく分けられる.果実でたとえると、同じ赤色の果実でも桃とリンゴの見え方の違いがこれにあたる.メークアップ化粧品の仕上がりを美しくするためには、マット、つやのバランスを適正に調整することが望ましい.一般に明るい色白の肌色にはマットな仕上がりが、一方、健康的な小麦色の肌色にはつやのある仕上がりが美しいといわれている.どちらも美しい仕上がりの重要な要因である透明感につながるためである.
(1)マットな仕上がり
肌に照射された光をさまざまな方向へ拡散させることによって肌を明るく見せることで、肌表面の凹凸状態を自然にぼかして光反射を均一にする.これは球状粉体や二酸化チタンなどの比較的表面反射光の少ない粉体による光拡散効果によって得られる.これら粉体塗布面の受光角ごとの反射光強度を測定すると、ほぼすべての方向に均一な光反射強度が存在する(図1).
(2)つやのある仕上がり
肌への入射光を一定方向へ強く反射させることで奥行き感を出して肌を明るく見せたり、立体感を与える効果がある.これには表面反射光の多いマイカやアスペクト比(粉末の厚さに対する粒子径の比)の高い扁平な板状粉体、パール剤などの正反射光の強い粉体が用いられる.これらの粉体塗布面の受光角ごとの反射光強度測定は、正反射方向へ強い反射光が見られる(図2).
(3)透明感のある仕上がり
仕上がりの透明感を増加させるには、肌全体が明度の高い色白肌の場合、肌表面の凹凸状態を均一にしてなめらかに補正することでより効果的である.球状粉体などによってもたらされる光拡散にはその効果があり、凹凸状態の肌をまるですりガラス越しに見るようなふんわりぼかした仕上がりにする.一方、比較的肌明度の低い小麦色肌の場合は、適度なつやを与えることで肌全体にめりはりがつき、顔の立体感・奥行き感が出て仕上がりの透明感が向上する.(南孝司)