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メークアップ化粧品 [make up cosmetic]

仕上げ化粧品ともいい、顔や爪などに塗布し、色彩の効果により皮膚や爪の色を変えてみせたり、陰影をつけて立体感を出したり、あるいは欠点を隠して魅力的な容貌に演出するために用いる化粧品のこと.魅力的な容貌とひとくちにいっても、その表現は地域や人種といった文化的背景によって異なり、またそれも時代とともに変化していく.そのためメークアップ化粧品は、スキンケア化粧品に比べ形態や色み、質感などが多彩である.
歴史
その歴史はたいへん古く、一説では4〜5万年前にすでに化粧品が存在していたとされる.古代には、人々は有害な生物や微生物などから顔やからだを保護するため、宗教・呪術的な意義、あるいは階級や職業を示す社会的な意義などによって、天然の顔料などをからだに塗布しメークアップをしていたのではないかと考えられている.また、現代と同じく、本能的に美しく魅力的な容貌を求めてメークアップを施していたのではないかと想像することもできる.その後、しだいに宗教・呪術的な意味合いは薄れ、現代のようにファッション性の高いものへと位置づけが変化してきた.メークアップ化粧品は、高いファッション性だけでなく化粧くずれしにくい機能や、紫外線を防止する機能、スキンケア効果など、優れた機能をあわせもつことが求められるようになってきている.さらに最近では、メークアップすることによって安心感が得られたり、積極的になれる、自信がもてるといった心的効果も報告され、関心が寄せられている.
種類
ベースメークアップ化粧品とポイントメークアップ化粧品の二つに大きく分けることができ、それぞれ目的や使用部位ごとに細かく分類される(表).
組成・剤型
メークアップ化粧品の組成や剤型は時代とともに変化してきたが、基本的には色材を中心とする粉体を基剤中に分散させたものがほとんどである.メークアップ化粧品では被覆性(カバー力)や着色性が重要になるが、このような機能はとくに粉体成分によるものが大きい.メークアップ化粧品に用いる粉体には、体質顔料、有機・無機の着色顔料、白色顔料、真珠光沢顔料(パール剤)をはじめ、感触や滑りをよくし、保湿性を高める機能が期待できるナイロンパウダーポリエチレン粉末などの合成高分子粉末、シルクパウダーやデンプン粉といった天然物、また皮膚への付着性を高めるステアリン酸マグネシウムやミリスチン酸亜鉛塩をはじめとする金属石けんなどがある.またメークアップ化粧品の機能として重要な紫外線防御機能をもたせるため、酸化チタン*や酸化亜鉛などの粉体が配合されることもある.基剤のおもな成分は精製水流動パラフィンワセリンろう(ワックス)類、スクワランなどの油脂類、グリセリンプロピレングリコールなどの保湿剤、界面活性剤などであり、このほかに香料防腐剤酸化防止剤、安定剤などが用いられる.メークアップ化粧品では、このような粉体成分と基剤の比率を変化させるなどして、使用目的や部位に応じ、粉末状、固形状、乳化状などさまざまな剤型のメークアップ化粧品が製品化されている.
心身への効果
女性にとっては、メークアップをすることで自信がもてたり気持ちが明るくなるといった心理的な効果があることは日ごろから経験的に実感されていることである.実際、メークアップは精神的に好ましい効果をもたらし、さらにその快適さがよい刺激となってからだにも好ましい効果を及ぼすということが最近の研究で明らかにされている.さらにメークアップ以外にもスキンケアフレグランスの心身への効果についても研究が進んでいる.このような、メークアップ化粧品をはじめとする化粧品の心身への好ましい影響は、人の健康や幸福に大きく寄与し生活の質を向上させうる.そのような意味で改めて見直したとき、化粧品は一生活用品でありながら医学的にも文化的にも、また社会的にも意義のあるたいへん興味深く奥の深いものであることがわかる.
健常女性へのメークアップの効果
メークアップの心身への効果について、1960年代ごろからさまざまな方法で研究が行われている.1990年ごろに行われた研究では、一般の健常な20歳代女性をメークアップアーティストによるメークアップを施したグループ、自分でメークアップを行ったグループ、素顔のグループに分けその影響を調査したところ、素顔の女性に比べメークアップを施した群の女性は心理的に自信と満足感が上昇し、さらに声のトーンが高くなることが明らかにされた.また最近では、メークアップをすることで免疫力の指標の一つである唾液中のs-IgA(免疫グロブリンA)濃度が上昇し、唾液中コルチゾール濃度が減少するという報告もある.
臨床場面でのメークアップの効果
メークアップによる心身への好ましい効果は対健常女性だけでなく医療の一つとして臨床場面へも応用され、良好な成果が報告されている.例をあげると、治療後に残る皮膚の変色や瘢痕(はんこん)をカバー力のあるメークアップ化粧品を用いてメークアップを施したところ、内向的な性格が平均的な性格へと変化が現れるという良好な効果を示した.また、精神障害のある患者にメークアップを施したところ心理的な改善が見られた、といった報告も多数あげられている.このような臨床場面でのメークアップの好ましい効果は、メークアップの可能性や意義を考える上でたいへん興味深い.
高齢者に対するメークアップの効果
高齢化社会を向かえ、日本では高齢者に対する社会的、法的対応が模索されている.化粧品関連の分野でも、高齢者、とくに痴呆症などの疾患を抱えた高齢者に対し、メークアップが症状を改善し患者の生活の質を向上させるために有効であるという研究結果が多数報告されている.その改善効果の現れ方は個人により異なるが、積極性や社会性が増したり、おむつが不要になる、徘徊の程度がおさえられるなど、いずれも生活を豊かに楽しむ上で意義のある変化が認められている.今後も増加しつづけるであろう高齢者が、自立して社会とのかかわり合いをもちながら豊かな生活を送る上で、メークアップという女性にとってたいへん日常的で容易な手段がこのような効果を生み出すことは、これからの化粧品を考える上で重要な意味をもつと思われる.(柴谷順一、角田依子)

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