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アウトバストリートメント [outbath-treatment]
シャンプー後のヘアリンスと同じ要領で使用し、使用後に洗い流すトリートメントをインバストリートメントというのに対し、使用後に洗い流さないタイプのトリートメントをアウトバストリートメントという.近年、女性のヘアケア意識の高まりと、ヘアスタイルの多様化ともあいまって、ヘアダメージに対するヘアケア化粧品の期待は高くなり、従来のヘアトリートメントに期待されたつや、柔軟性、さらさら感の付与といった毛髪の保護効果から積極的なダメージ防止、そして修復といった機能まで要望されるようになった.この流れから、枝毛や切れ毛だけでなく髪のパサつきなどのヘアダメージに対する防止効果への強い期待、スキンケアの夜用・昼用の手入れに準じた洗髪後のナイトリペアによる効果感への期待、そして、翌朝のスタイリングのしやすさやまとまりやすさなどより、洗い流さないアウトバスのヘアトリートメント剤が注目されるようになってきている.剤型別種類と特徴成分(1)リキッドタイプ現在のアウトバストリートメントの先駆的存在となった.枝毛コート剤が代表格で、ロングヘアの流行を背景に、つやつや、さらさらの髪へ導き、枝毛の予防・修復を目的とする.主成分は高分子シリコーン(ジメチルポリシロキサン)で、揮発性油分(低沸点イソパラフィンなど)に溶解したものである.また、その後開発された髪と同じケラチンタンパク質を加水分解した液状の加水分解ケラチンを配合し、傷んだ髪の組織を補修・補強する商品も本分類に入る.(2)エアゾールタイプヘアムース®剤型が中心であるが、ヘアスプレーも該当する.ヘアムース®では、枝毛・切れ毛の防止、ドライヤーの熱から髪を守るといった損傷防止タイプ、パサつき防止のうるおい補給タイプ、さらに硬い髪を柔軟にするとか、軟らかい髪にはり・こしを与えるなどの髪質改善タイプなどが商品化されている.ヘアスプレー剤型では、髪一本一本にはり・こしを与え、つやと弾力のあるまとまりやすい髪にするポリアクリレート6を配合した髪質改善タイプが上市されている.(3)ヘアクリームタイプ乳化型の製品で、比較的さっぱりとした使用感をもち、油分によるコンディショニング効果に加え、水分の補給効果をもつ.乳化タイプから水中油(o/w)型、油中水(w/o)型に分けられる.o/w型はべたつきが少なく、さっぱりした使用感が一般的であり、一方、w/o型は油性感があり、やや重い使用感ではあるがつや、コンディショニング効果に優れる.(4)ヘアブロー/ミストタイプディスペンサー式スプレー、トリガー式スプレーにより霧状で噴霧するタイプである.陽イオン性界面活性剤、保湿剤やタンパク質加水分解物などをベースに、シリコーン油やエステル油分などをミクロエマルション化して粘度を下げ、霧状にして噴霧するタイプである.機能成分の特徴(1)高分子シリコーン(ジメチルポリシロキサンの高粘度タイプ)分子量が30万〜60万と高い直鎖状のジメチルポリシロキサンで、軟らかいゴムである.毛髪表面のキューティクルのコート効果、平滑性、密着性、耐水性に優れ、感触も独特のつるつる感があるため、枝毛の修復防止を目的とした毛髪保護剤として使用される.(2)タンパク質加水分解物毛髪は損傷を受けると、毛髪の組成成分であるケラチンタンパク質や毛髪細胞膜複合体のタンパク質であるコラーゲンタンパク質が洗髪のさいに溶出し、パサつきやすくなり、はり・こしの低下からヘアスタイルのまとまりがなくなる.この状態の改善のため、補充成分としてケラチンタンパク質やコラーゲンタンパク質の加水分解物が使用される.(3)陽イオン性界面活性剤毛髪に吸着しやすく、毛髪表面の摩擦係数を低下させるため手の指通りやくし通りをよくし、毛髪をなめらかにする効果が高い.(4)保湿剤毛髪にうるおいを与え、しっとりさせる効果がある.プロピレングリコール、グリセリンなど.(5)pH調整剤パーマ剤やヘアカラー剤を使用すると毛髪はアルカリ性となり、そのまま放置すると切れ毛や枝毛になりやすい.そのため、使用後のアウトバストリートメントには、毛髪のpHを弱酸性に戻すため、pH調整剤を使用する場合がある.クエン酸、コハク酸、リンゴ酸など.(6)油性成分毛髪につやや、なめらかさを付与するために配合される.ジメチルポリシロキサン、エステル油など.(植村雅明)