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毛髪のダメージ [hair damage]

毛髪において、頭皮より外に出た部分を毛幹というが、この部分は毛髪が伸びつづける過程において、さまざまな処理や外的ストレスにさらされつづける.毛幹は死細胞の集合体のため修復機能がない.そのために、感触的にはパサつきが目立ち弾力もなくすべりも悪いものとなる.美容上からもヘアスタイルのまとまりやもちも悪くなる.そして、外観的にはつやがなくなり、赤っぽく変色し、枝毛切れ毛の発生などの現象が起こり、毛髪本来の美しさを損なってしまう.このことを毛髪のダメージという.毛幹部の外側をとりまいているキューティクルは、外的ストレスの影響を直接受けることにより複合的に累積したダメージを受けることになる.図1に示した毛髪の外観からもわかるように、健康な毛髪はキューティクルの先端がなめらかで紋理が規則的であるが、ダメージが進行するにつれキューティクルの剥離が起こり、かなり傷んだ毛髪では、キューティクルの大部分が剥離し、内部のコルテックス(毛皮質)が露出するようになる.このような毛髪は、累積されたダメージにより枝毛、切れ毛へと形態を変化させるのである.
ダメージ要因
(1)化学的要因
毛幹に化学的障害を起こしやすい要因としては、パーマネント・ウェーブ剤と染毛剤がある.なかでも、強いアルカリ性の条件下で作用させる永久染毛剤(酸化染毛剤)やブリーチ剤によるケラチンの損傷はもっとも著しく、メラニン色素も破壊される.これら薬剤は、キューティクルとキューティクルの間の細胞膜複合体(CMC)から、コルテックス内のCMCを通じて毛髪内部に影響を及ぼすため、CMCそのものや毛髪内部のタンパク質の溶出が起こることが知られている.これにより、コルテックスの毛髪の水分を保持する機能が損なわれてしまうので.毛髪は環境の湿度変化の影響を受けやすくなり、パサついたり、ヘアスタイルのもちが悪いといった問題が生じるようになってくる.
(2)環境的要因
紫外線やドライヤーの熱などがあげられる.紫外線は水との共存下で、毛髪中のSS結合(ジスルフィド結合)を開裂させシステイン酸を生成するため、毛髪の引っ張り強度を低下させダメージを引き起こす.このとき、毛髪の赤色化も起こるが、これは毛髪中のユウメラニンの紫外線による酸化分解と推定される.実際の海浜やプールで起こる毛髪のトラブルに、赤くなるなどの変色があるが、このようなヘアダメージに紫外線が大きく関与し、海水や水の存在下で加速されていくのである.また毛髪は、大部分がタンパク質でできているため熱に弱く、ドライヤーも使い方を誤れば毛髪にダメージを引き起こす原因になる.毛髪には普通10〜15%の水分を含んでいるが、加熱するに従い水分が蒸発してカサカサになり手触りも悪くなる.さらに、80℃以上の熱を日常的に髪にさらすと毛髪内のタンパク質が壊され、ブラッシングなどのさいにキューティクルがはがれやすくなる.ドライヤーを使用するさいは、ヘアトリートメントなどを使用し、毛髪に長時間近づけて使用しないなどの注意が必要である.
(3)物理的要因
乱暴なシャンプーやぬれたままのブローは、いずれもキューティクルの剥離を促す.シャンプーは日常生活に欠かせないが、毛髪と毛髪をこすり合わせてシャンプーすると、キューティクルは摩擦に弱いため除々にはがされていく.また、髪がぬれたままのブロー(ドライヤーで乾燥しながらブラッシングする操作)も、コルテックスが水に膨潤しやすいのに対し、キューティクルは膨潤しにくいためキューティクルに無理な力がかかってはがれやすくなり、パーマ剤や染毛剤などによる化学的要因と同様に枝毛、裂け毛となることがある.このため、ブローするさいはタオルドライを十分に行ってから、毛髪を適度に乾燥させた後行うことがたいせつである.枝毛毛幹部の累積されたダメージの最終形態としては枝毛になることであるが、図1からも明らかなように、毛髪のキューティクルはほとんどなくなっている.実際に枝毛になった長さ30 cmの女性の毛髪について、根元から10 cmごとに毛先までのキューティクルの枚数を、走査型電子顕微鏡で観察した結果を図2に示した.図2からも明らかなとおり、枝毛になった毛髪でも根元部のキューティクルの枚数は7枚あり、健康毛とかわりはない.しかし、10 cmごとに毛先に進むにつれキューティクルの枚数が減少し、毛先部では0枚になっていることが観察された.30 cmの毛髪では、1カ月に約1 cm伸びるとして、だいたい2年半〜3年という時間をかけて物理的、環境的そして、化学的なさまざま要因によって、キューティクルの枚数が減少したものと考えられる.このように枝毛は、キューティクルの枚数が減少し、2枚以下になった状態で、シャンプーやブラッシングなどの物理的な刺激によって発生するものと考えられる.ダメージの評価法毛髪のダメージの評価法としては、毛髪の力学的性質を利用した引っ張り試験法がある.これは、一定の長さの毛髪を一定速度で伸長し、とくに伸長前の毛髪長に対し15%伸長したときの応力(降伏点)を測定するものである.この原理は、毛髪のダメージが起こると降伏点が低下することを利用したものである.本法は、環境湿度による測定値への影響が大きいため、一定の環境条件下で行うことが大切である.(植村雅明、濵田和人)

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