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ケラチン [keratin]
中間径フィラメント(太さ約10 nm)の一つで、約20種類が知られている.微小管(太さ約25 nm)およびマイクロフィラメント(太さ約5〜6 nm)とともに細胞骨格の重要な要素で、タイプIの酸性ケラチンとタイプIIの中性ないし塩基性ケラチンに大別され、線維構造には両者が必要である.一般に上皮細胞に広く分布するが、これらはソフトケラチン(軟ケラチン)とよばれ、毛や爪のハードケラチン(硬ケラチン)と区別される.(1)ソフトケラチンケラチノサイト(表皮角化細胞)は分化とともに異なったケラチン遺伝子を発現することが知られている.基底細胞ではK5およびK14のケラチン遺伝子を、分化した有棘層*より上方ではK1およびK10のケラチン遺伝子をペアで発現している.これらはそれぞれケラチノサイトの分化マーカーの一つとして利用されている.角層ではケラチンパターンという特徴的なパターン配列を示し、角層細胞の強靭で柔軟な内部骨格を形成する.(2)ハードケラチン毛包や爪にあるケラチンは、アミノ酸であるシステインの含有量が多く、システイン間の共有結合によりケラチン線維どうしの結合を強固にし、ソフトケラチンに比べるとより強い丈夫な線維構造をつくり出している.
ケラチンパターン
表皮の最外層では、ケラチノサイトが死んで細胞形態が消失した扁平な細胞が重なった層状構造となる.核や細胞内小器官が消失し、細胞質内は凝集したケラチン線維とその間を埋める無構造の物質で満たされるようになる.電子顕微鏡で観察すると、ケラチン線維は低電子密度であり、ケラチン間の物質は高電子密度なため、特徴的なパターンが形成される.これをケラチンパターンとよぶ.ケラチンとケラチンの間を埋める物質はフィラグリンであり、角層上層では分解されて、天然保湿因子(NMF)のもとになる.(日比野利彦)