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[sweat]

体温を調節する目的で、体内から分泌される成分.高温下では、2〜3 L/hの水分を蒸発させ、その気化熱により体温を低下させる.これが温熱性発汗で全身に認められる.これに対して、精神的緊張で起こる精神性発汗があり、手掌、足底、額に発汗する.また、辛い料理を食べるとすぐ汗が出るといった味覚刺激による味覚性発汗もある.からだを冷やすと汗は止まるので、温熱性発汗に上乗せして出てくるものといえる.これは辛味成分(赤トウガラシに含まれるカプサイシンなど)が温受容器を刺激するためである.汗腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺があるが、体温調節はエクリン汗腺が担っている.エクリン汗腺はほぼ全身の皮膚に分布し、200万〜500万個あるといわれており、手掌、足底、腋窩(えきか)にもっとも多く存在する.(→発汗) しょっぱい汗 汗は一般にしょっぱいと思われているが、塩分は再吸収されるので、初期の汗はあまりしょっぱくない.しかし曲導管(→汗腺)が塩分を再吸収する能力には限度があるため、汗が多くなると塩分が再吸収を免れてしまう.そのため汗が多いほどしょっぱくなる.汗のpHも発汗量によって変化する.量の少ないときは酸性で発汗量が多いほどアルカリ側に偏る.これは、初期の汗は乳酸が高く酸性であるが、汗の量が多くなるとともに重炭酸イオンの濃度が高まるためである. 発汗量 汗の量は季節によって変化する.これを季節順化という.夏の暑さに慣れるに従って発汗活動が著しく増加する.しかしながら、熱帯地方に住んで一年中暑さにさらされている人のほうが日本人より汗が少ない.これはあくまで環境要因によるものと考えられ、人種間による汗の量や質に大きな差はないと思われる.汗の量には明らかに男女差がある.個々の汗腺の最高発汗量は男子のほうが多い.塩分濃度にも差があり、女子では発汗量のわりに塩分濃度が多い. 成分 皮表に出てくる汗(最終汗)は、その99%以上が水分であり、そのほか、微量の塩化ナトリウム、乳酸、2価の金属イオン、アミノ酸尿素などを含む.乳酸を含むため弱酸性で、pH5.7〜6.5である.疾患によっては組成が変わり、薬物、抗原、免疫グロブリン(Ig)A(s-IgA)などが排泄される. 分泌と機能 神経末端より分泌されたアセチルコリンの作用により、ナトリウムイオン(Na+)とともに細胞内に流出した水分は、さらに管腔内に漏出してやや高張(比較する溶液より浸透圧が高いこと)な前駆汗となる.そして、エクリン汗腺の分泌部から中央の腺腔へ分泌され、Na+、K+(カリウムイオン)、乳酸、水分は導管部で再吸収される.皮表に出てくるのが最終汗である.エクリン汗器官は大量の水分を分泌して体温を調節し、皮表に適当な湿度を与える.腋窩、乳輪、外陰、会陰、肛門周囲に存在するアポクリン汗腺は、体表面に開口することはなく、毛包上部に開口し、思春期とともに急激に発達、分泌を開始する.分泌されたアポクリン汗は弱アルカリ性で、皮膚に付着する菌が有機成分を臭気成分に変えるため臭いを発するが、その臭いは性的刺激となる.(日比野利彦)

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