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機能性ナノコーティング色材 [functional nano-coating pigment]
表面がコーティングされた色材の一つ.超薄膜シリコーン被覆色材ともいう.粉末、とくに無機顔料は、親水的な性質を示すことから油やろうに対して分散しにくいため、表面を疎水性(はっ水性)に変える必要がある.その一般的な方法としては、無機顔料とシリコーンを加熱、かくはん、さらに焼成する方法があり、油への分散性を改良している.さらに近年、超薄膜のシリコーンによるコーティングである化学気相蒸着法(CVD法)が開発された.この方法は、無機顔料表面上に多かれ少なかれ存在する触媒活性点を利用したものである.シリコーンは環状タイプ(1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン)のものを使用し、窒素気流中で気化されたものを無機顔料と接触させる.無機顔料表面上にある触媒活性点でこの環状シリコーンが開環し、次に開環したシリコーンどうしが架橋反応と開環重合を起こして(図)、その重合物が無機顔料表面を均一にコーティングするというしくみである.このコーティングされたシリコーンの膜厚は、無機顔料によって異なるが、1 nm以下という超薄膜である.このような方法で得られたものが機能性ナノコーティング色材で、これにより、無機顔料表面の性質はシリコーンに含まれているメチル基(CH3)によって親水性から疎水性に変化する.また油やろうに対する分散性は、未処理(親水性)のものと比べて良好となり、表面にシリコーンが存在するためシリコーン系の油に対してはとくに優れている.通常の油に対して分散性をさらに改良するためには、次の方法が有効である.このコーティングされた膜には、架橋反応に関与しない部分があり、この部分にはSi-H基が一部残存している.このSi-H基に塩化白金酸を触媒に用い、不飽和化合物を付加することができる.とくに炭化水素系の油に対しては、顔料に炭化水素鎖を修飾することにより油に対する分散性が向上し、さらに発色も良好になることが確認されている(南孝司)