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くま [dark eye circle]
目のまわり、すなわち上下眼瞼(がんけん)あるいはその一部が黒みがかっている状態のこと.“くま”あるいは、“目のくま”は、広く一般に使用されている言葉であるが、実際にくまとはどんなものなのか、あるいはどのようなものをさすのか改めて問いかけてみたとき、ある人は下眼瞼皮膚に限局した青紫色の色調を思い浮かべるであろうし、またある人はパンダの顔と同様に、目のまわりだけが丸く色素増強して黒ずんでいる状況を想像するかもしれない.それぞれの念頭に浮かぶイメージはおそらく各人各様で、ニュアンスに微妙な違いがあるだろう.
発生要因
要因としては皮膚血流の停滞と色素沈着によるものが考えられている.眼瞼皮膚は身体各所の皮膚の中でもっとも薄く、また皮下の結合組織が細く粗く伸縮性に富んでいるため、容易に動く.こうした解剖学的特徴は真皮、皮下組織の状況を容易に反映させることになる.つまり、眼瞼のうっ血や充血などの血液循環やメラニン色素の状態が皮膚の色により反映されることになる.また、眼瞼皮膚には汗腺がなく、皮脂腺も小型のものがわずかしかない.保湿機能は顔のほかの部分に比べて低く、皮膚のバリア機能*も著しく低い.これらの理由から目のまわりではきめが乱れ、小じわが発生しやすいが、こうした形態的変化もくまを目立たせる要因になっていると考えられる.
目のくまの測定
機器によるくまの測定はこれまでほとんどなされていなかった.しかし、最近の皮膚測定装置の開発により、測定結果がいくつか報告されている.くまは上下眼瞼あるいはその一部の皮膚の黒ずんだ状態であることから、その有効な評価法は皮膚色(明度)の測定である.また、くまが皮膚血流のうっ血と色素沈着に起因することを考えると、より精細な測定も可能となる.皮膚血流のうっ血が発生すると血流速度が低下し、それに伴って血液量(ヘモグロビン量)の増加やヘモグロビン酸素飽和度の低下が起こる.このため、うっ血由来のくまの測定法としては血流速度、血液量、ヘモグロビン酸素飽和度の測定が有効である.また、色素沈着由来のくまの測定法としては、皮膚メラニン量の測定が有効である.くま部位の皮膚色および皮膚血流の測定では、皮膚の明度が低く、皮膚表層部の血液量は多く、血流速度が遅いと報告されている.また、皮膚のメラニン量、ヘモグロビン量およびヘモグロビン酸素飽和度の測定では、くま部位のヘモグロビン量は多く、ヘモグロビン酸素飽和度は低く、メラニン量は多いことが判明した.
実態と対応化粧品
くまに悩んでいる、もしくはくまができやすい女性を調査すると、くまの予防策としては“睡眠を十分にとる”などがあげられ、くまへの対処方法としては“ファンデーションでカバーする”などが一般的にあげられる.最近では、くまをカバーする粉末の配合や、くまの原因である皮膚血流の停滞や色素沈着に対応して、血行促進剤や美白剤を配合した商品が開発されており、各社からくま対応を目的としたスキンケア化粧品として発売されている.(舛田勇二)