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食品香料 [flavor]
食品においしさを与えるために使われる香料のことで、一般にはフレーバーとよばれる.天然にある食品、たとえばオレンジ、レモン、バナナやブドウなどの果物や、緑茶、紅茶やコーヒーなどの飲み物の香りを再現して、さらにおいしくするために、あるいは多くの人から好まれるように工夫したものである.食品のおいしさは食品自体はもちろん、食べるときの環境にも左右されるが、ここでは食品の状態、すなわち外観(色、形状、大きさ)、食感(テクスチャー)、温度、音、香りと味などに焦点をあてる.これらのうち、香りと味にかかわるのが食品香料で、使われる分野は多岐にわたる.飲料(炭酸飲料、果実飲料、乳性飲料、スポーツ飲料、コーヒー、紅茶、緑茶飲料)、酒精飲料(リキュール、薬用酒)、製菓(キャンディー、チョコレート、チューインガム、スナック菓子、パン製品)、冷菓(アイスクリーム、シャーベット)、デザート(ゼリー、プリン、ヨーグルト)、油脂加工品(マーガリン、ホイップクリーム、チーズ製品)、スープ(即席ラーメン粉末スープ、レトルトパウチスープ)、調味料(ドレシング、ソース、たれ、だしの素)、食肉加工品(ハム、ソーセージ、ハンバーグ)、水産加工品(魚肉ハム、水産練り製品)、農産加工品(ジャム、ペースト)、調理食品(冷凍食品、レトルト食品、電子レンジ食品)、歯磨き、マウスウォッシュ、医薬品ドリンクなどがあげられる.食品香料はその形態から次の四つに分類することができる.
(1)水溶性香料
食品の通常の使用条件で水に溶ける香料.エッセンスともよばれる.新鮮な香り立ちが特徴で、製造工程で熱の加わらない飲料や冷菓に使われる.
(2)油性香料
フレーバーベース(各形態の香料のもとになる調合香料のこと)を植物油、プロピレングリコールやグリセリンに溶解したもの.たんにオイルともよばれる.耐熱性が高いのが特徴で、製造工程で熱が加わるキャンディー、ビスケット、チョコレート、チューインガムなどに使われる.
(3)乳化香料
油性のフレーバーベースを天然ガム類や乳化安定剤を用いて乳化した香料.クラウディーともよばれる.水に添加すると、分散するとともに白濁するという特徴がある.清涼飲料にマイルドな香りと乳白な色を与える目的で使われる.
(4)粉末香料
フレーバーベースを乳化安定剤、界面活性剤などを用いて乳化し、賦形剤(デキストリンなど)を加え噴霧乾燥し粉末状にした香料.パウダーともよばれる.香料成分の揮散や酸化などが防止できるのが特徴で、粉末ものがよく使われるインスタント食品、チューインガム、錠菓、スナック菓子などがおもな用途である.(浅越亨)