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体臭 [body ordor]

人がからだから発散しているさまざまな臭い.その臭いは個人による差が非常に大きく、乳幼児、青少年、高齢者、男・女によって臭いが異なることは、日常生活の中でわれわれが感じているところである.からだからの臭いとして頭皮臭、口臭、皮膚汗臭、腋臭、足臭などがあるが、一般には皮膚汗臭と腋臭*(えきしゅう)を体臭として扱うことが多い.これら皮膚汗臭と腋臭の原因となる分泌物は二つの汗腺(エクリン汗腺とアポクリン汗腺)および皮脂腺(→脂腺)から排出され、エクリン汗腺は全身に分布し発汗により体温調節作用を担っている.一方、アポクリン汗腺は*腋(わき)下にもっとも多く集まっており、さらに外陰部、乳輪、外耳道などに存在し思春期以降に機能し始めることから、起源的には性フェロモンのような役割をもっていたと考えられ、本来は個体を識別するための臭い発生器官であったと推定される.エクリン汗腺の出口は直接皮膚表面につながっており、塩化ナトリウム、乳酸尿素などを含んだ透明水様の液体を分泌する.アポクリン汗腺は毛嚢口につながっておりタンパク質、脂質、ミネラルなどを含んだミルク様の粘性のある液体を分泌するが、これらはいずれも分泌直後は無臭である.毛包に開口する皮脂腺からの分泌物は、トリグリセリド、スクワレン、コレステロールとそのエステル類が主成分で、汗腺からの分泌物とともに体臭の原因物質となっている.しかし実際に人が体臭として感じる臭いは、汗腺、皮脂腺からの分泌物が皮膚常在菌により代謝、分解されてできた揮発性物質である酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン、カプリン酸などの低級脂肪酸が主である.これらは人による分泌物の構成の違いに加え、皮膚常在菌叢も違うことから、菌などによる産生物の量や構成成分の比率も異なり、その結果として発生する体臭は千差万別となると考えられる.さらに年齢による体臭変化の一つとして、皮脂の酸化分解により発生する中高年に特徴的な古本のような臭いがあり、この臭いの主成分としては不飽和アルデヒドであるノネナールが特定されている.これらの体臭の防止のため種々のデオドラント化粧品が考案されているが、とくに制汗、殺菌成分を配合し医薬部外品とした製品が多く見受けられる.(伊佐尚)

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