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ネイルエナメル [nail enamel]

強靭かつ柔軟な被膜を塗って爪を保護すると同時に、光沢や美しい色調で指先を飾るもの.ネイルラッカー、マニキュア、エナメルともよばれる.歴史的には旧約聖書時代にエジプトで染料を直接爪に塗っていたという説や、それ以前にもすでに爪を塗っていたという説もあり定かではない.現代のものは、ニトロセルロースを被膜の主成分とし、可塑剤、溶剤などを調節することで塗りやすく、手早く乾き、はがれにくく長もちするようになっている.最近は、個人的な趣味のバリエーションも広がり、それに応えるようにマットタイプやラメ剤、ホログラムの入ったものもある.ネイルエナメルは主として、皮膜形成高分子(被膜形成剤)、可塑剤、揮発性溶剤、ゲル化剤、色材(パール剤)などでできている.さらに製品によっては、紫外線吸収剤のような安定化剤や、爪を保護する成分が加えられている.爪へのトリートメント性に優れるものとして、水・保湿剤を配合した乳化タイプネイルエナメルも開発されている.
皮膜形成高分子(被膜形成剤)
溶剤が揮散した後、薄い膜(塗膜)をつくる物質.ニトロセルロースがもっとも一般的であるが、これだけでは密着性や光沢が不十分なため、アルキッド樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂などが併用される.
可塑剤
ニトロセルロースと樹脂の混合塗膜に柔軟性を与えて耐久性をもたせるために配合される物質.カンファー(樟脳)、クエン酸エステルが代表的.
揮発性溶剤
各成分との相溶性がよく、適当な粘度になり、乾燥速度が速いことを考慮して配合する.酢酸エチル、酢酸ブチルを主として使用するのが一般的である.過去においてはトルエン、キシレンなども使用されたが、安全性の点で最近は使用しなくなっている.
ゲル化剤
比重の大きい色材や形状の大きいパール剤を多用する場合、安定に分散させるために配合する.ネイルエナメルの溶剤によくなじみ、チキソトロピー性を付与し、沈殿を防止するためおもに有機変性粘土鉱物などが用いられる.
色材とパール剤
色材としては染料と無機・有機顔料がある.透明系のネイルエナメルには染料のみが用いられているが、一般には無機・有機顔料が用いられる.パール剤は上記の色材だけでは表現しきれない微妙なニュアンスや印象を付与するために使用される.初期のものは天然魚鱗箔*(ぎょりんぱく)であったが、現在は、雲母チタン(二酸化チタン被覆雲母)が主流である.
はがれ peeling 
ネイルエナメルの塗膜は本来、強靭かつ柔軟な性質であるが、ときにはより硬いものにこすりつけられたり、入浴して石けん、シャンプーなどにつかったりしてはがれることがある.原因としてはおもに、①塗膜の爪への密着性の悪さ、②耐水性と耐洗浄剤性(石けんやシャンプーなど)の不足があげられる.塗膜は硬すぎても軟らかすぎても爪との密着性が悪くなり、また、耐水性、耐洗浄剤性が不足していると爪と塗膜の間に水や洗浄剤が入り込み、同様にはがれの原因となる.さらに、経日変化で密着性に影響を受けたり、硬度が低下してはがれることもある.ネイルエナメルのはがれを防ぐには、樹脂類の選択が必要であり、爪との密着性を高める効果のあるベースコートや塗膜自体を保護するトップコートの併用も有効である.(南孝司)

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