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ヘアリンス(ヘアトリートメント剤) [hair rinse、 conditioning agent]

洗髪した毛髪に油分を補い、静電気の発生をおさえ、毛髪のくし通りをよくするとともに、つややうるおいなどの風合いを向上させる働きの成分.リンス剤、コンディショナーともいう.おもに、陽イオン性界面活性剤高級アルコール、保湿剤、油分などが配合されている.            
(1)陽イオン性界面活性剤
リンス、トリートメントの基本機能を有する成分.代表的なものとして塩化アルキルトリメチルアンモニウムがあげられる(図1).毛髪はいくつかのタンパク質からできており、それらの構成成分は、まわりのpH環境によって物性が変わるポリペプチド(アミノ酸が多く結合したもの)で、その等電点はおよそ3〜4といわれている.したがって、水道水やシャンプーは一般的にpH5〜6の弱酸性なので、ぬれた髪の毛はマイナスに帯電しているといえる.そのためプラスの電荷をもつ陽イオン性界面活性剤は、その親水基部分(陽イオン部分)を毛髪表面に向けて静電的に吸着し、疎水基(親油基)部分を外側に向けることから(図2)、毛髪表面が陽イオン性界面活性剤の親油基で覆われなめらかになる.その結果、静電気の発生をおさえ、毛髪のくし通りがよくなるというわけである.しかしながら、陽イオン性界面活性剤は皮膚(頭皮)に対する刺激が比較的高く、また陽イオン性界面活性剤だけでは製品に粘性をもたらすことはできない.粘性を与えることは、リンスの使用時に眼への混入を避けることができると同時に、塗布感触を向上させるなど商品価値を高めることにもつながる重要な点である.
(2)陽イオン性界面活性剤-高級アルコール-水の形成するゲル
実際の製品では、陽イオン性界面活性剤の助剤として高級アルコールを組み合わせ、それらの形成するゲル(会合体)を使用している.このゲルは、陽イオン性界面活性剤と高級アルコールと水からなる層状の構造になっており(図3)、この層状構造がさらに重なり合いネットワーク構造を形成し、製品に粘稠性を与え、使用時の眼への混入を避けるとともに使用感触を向上させる働きをしている.
(3)油分
シリコーン流動パラフィンなどの液状油分、ワックスエステルなどの固形油分があげられる.これらの油分は、乳化粒子として陽イオン性界面活性剤と高級アルコールと水からなるゲルに分散され、その結果、乳液状、クリーム状のリンスが得られる.これを髪に塗布し洗い流すと油性の薄い保護膜が毛髪表面に残り、つや、うるおいを与える.
(4)保湿剤
髪にうるおいを与えしっとりさせるために配合される.おもに、グリセリン1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどがあげられる.これらのほか、実際の製品には、高分子化合物類、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤が目的に応じて添加される.なお、ヘアトリートメントとよばれるものは、油分、保湿剤の種類と量を調整し、通常のリンスよりリンス機能を高めたものである.(中間康成)

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