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毛髪のなめらかさ [smoothness of hair]
髪を触ったときに感じる感覚を中心とした感覚評価量で、風合いを表す官能表現.単一の物性値ではなく、毛髪の柔軟性、毛髪の摩擦、毛髪の水分量などの要因が複雑に絡みあって成立していると考えられる.この感覚は毛髪1本での感覚評価ではなく、一定量以上の毛髪が存在するさいに成立する.毛髪のなめらかさは髪の理想的な状態を表す条件の一つである.なめらかさは、毛髪が高湿度下に存在した場合や毛髪表面の摩擦が低下した場合に上昇する.測定一定量以上の毛髪で認識される感触なので、毛髪1本ではなく、毛束で測定される実験系が多い.ある測定器では、一定量の毛髪束と人の指の感触に類似したNBR(アクリロニトリルブタジエンラバー)素材との間で、指の圧力とほぼ同じ荷重で発生する摩擦力を測定する方法を用い、なめらかさを評価している.また、コーミング動作における反力(せん断力)をなめらかさの指標にすることもある.くし通りでなめらかさを決定する要因には大きく三つあり、キューティクルの損傷状態などの毛髪表面形状、毛髪自体の太さやくせ毛などの毛髪性状、絡まり、接着、摩擦などの毛髪間および毛髪とくしとの相互作用とされている.(植村雅明、川副智行)毛髪のはり・こし毛髪の曲げ強度を中心に、毛髪のねじり強度や毛髪間の摩擦による影響など複数の物理特性が関連して成立する官能表現.おもに加齢に伴い認識されることが多く、個人差はあるが、通常30代後半から頭髪のボリューム感や頭頂部のふんわり感の低下が実感され始め、以後、毛髪の細毛化につれ重大な悩みの一つとなっていくことが多い.毛髪構造との関連が大きく、毛髪の直径が大きい太い毛髪であるとはり・こしが実感されやすく、逆に毛髪の直径が小さい細い毛髪であるとはり・こしが実感されにくい.水分量とも深くかかわっており、はり・こしには水でぬれた状態の毛髪では毛髪内部のSS結合(ジスルフィド結合)が優位に働き、乾いた毛髪では毛髪内部の水素結合が優位に働いていることが知られている.また、最近では毛髪の最外層構造であるキューティクルの寄与する割合が高いことも報告されている.測定簡易には、水平もしくは垂直になるように毛髪の一端を固定し、固定していない方の一端が、自重によって生じたたわみの大小によって評価する方法がある.この場合は毛髪のたわむ方向を変えて何回か測定し、ばらつきを少なくする必要がある.また、力学的機器測定としては、毛髪の伸張方向の力学的特性を評価する方法である毛髪の引っ張り特性値を測定し、得られるデータより曲げ特性を算出する方法がこれまで用いられていた.しかし最近では、毛髪の屈曲を再現する純曲げ試験により測定されることが多くなっている.この試験法は数十本もしくは1本の毛髪を測定に用い、その一端を固定し、もう一端を毛髪が水平方向に曲がるように設置された移動式のチャックに固定し、実際に毛髪が屈曲されるように変形を与えたときの応力を測定するものである.この測定によって毛髪の曲げ剛性が求められる.(川副智行)