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くすみ補正 [control of dark patches on the face]

くすみを視覚的現象としてとらえ、その現象に対応したメークアップ技術により、健康な肌に見せるメークをすること.通常、くすみを目立たなくさせるには、パープル系の肌色補正料、いわゆるコントロールカラーがもっとも適切であるといわれている.
くすみへの技術対応
くすみ発生の要因は、肌の色相の変化、形態の変化、質感の変化に分けてとらえられているが、かつてはよくわからなかったので、対応する技術もくすみ全体をたんに覆い隠す、いわゆる隠ぺいが主流であった.しかし近年、ナチュラルメークが好まれる傾向が強まってくると、厚づき感があり、仕上がりが人工的になってしまうこの技術対応は、市場性に欠けると考えられ、最近は、従来の隠ぺいに加えて肌色補正、質感調整に着目した技術対応が行われている.
肌色補正
くすみの肌における色調変化の現象としては、赤みの減少、黄みの増加、明度の低下があげられる.
(1)赤みの減少
肌色を構成する主要要因としてヘモグロビンメラニンの存在があり、赤みの減少については、ヘモグロビンが関与しているといわれている.素肌の分光反射率によるとくすみが目立つ肌と目立たない肌とでは、酸化型ヘモグロビンの吸収波長付近の540 nmと575 nmで大きな違いが見られる.この酸化型ヘモグロビンは鮮赤色をしていて、血流が減少したり、酸化型ヘモグロビンの血中濃度が減少することにより肌色の赤みが減少し、くすみが生じる.
(2)黄みの増加、明度の低下
黄みの増加と明度の低下の原因については、褐色を呈するメラニンの関与が大きいとされる.このメラニン性のくすみは、その分布状態の違いによって2種類存在する.比較的全体的にメラニン量の多い、いわゆる色黒であるくすみと、軽度の色素沈着がある程度以上の大きさの集合体となったくすみとがある.
肌色補正メーク
このような肌色を補正するメーク品として肌色補正料、いわゆるコントロールカラーが使われるが、くすみに対応する代表的な色みとしてはパープルがあげられる.パープルは色彩的に青と赤でできているが、青によって補色である肌の黄色がおさえられたところへ残りの赤が発色し、くすみをおさえる.また、干渉色のあるパール剤も用いられる.たとえばマイカに被覆する酸化チタン*の膜厚によって、光の干渉色を黄、赤、青とさまざまな色に発色させることができる.さらに、このような酸化チタン被覆雲母に着色を施すことによって、干渉色と着色性との二色性を特徴とするパール剤が得られるわけである.このとき、干渉色を赤に調整して、ファンデーションに配合し、くすみのある部分に塗布すれば、光補色理論の応用によって、くすみを自然なメークでかくすことができる(→肌色補正).
質感調整
くすみをとらえる場合、色としてとらえるほか質感の要素も存在する.その質感としては、つや感の減少と透明感の低下があげられる.
(1)つや感の減少
その原因としては、季節、環境、体調の影響で皮膚表面が乾燥状態になることにあると考えられる.つやを付与するには、マイカやパール剤のような平面状の形をしていて、当たった光を正反射する素材を配合する方法がある.しかし、配合したものをファンデーションとして顔に使用すると人工的なつやを感じさせ、不自然な仕上がりになってしまう.そこで、近年パール剤の表面をさらにコーティングして、光沢強度を調整した粉体が開発されている.このように適度なつや感をもたせた粉体をファンデーションに配合することにより、自然なつや感を演出することが可能になった.
(2)透明感の低下
原因としては角層の重層化が考えられる.角層は半透明なので、厚みが増加した分、透明感が減少する.透明感の欠如とくすみが密接な関係があることは理解できるが、透明感という言葉はくすみ同様、あいまいではっきりしないものである.ただし光学的な特性値が重要な尺度になると考えられ、角層の屈折率(nD=1.55)と化粧膜の屈折率が大きく異なる場合は、肌との境界をはっきりと認識させることになり、透明感のある肌にはならない.粉末の中でマイカは、肌に近い屈折率(nD=1.58〜1.59)をもつものであるが、合成によってつくられるマイカ(合成フッ素金雲母)は従来の天然の鉱物から精製、処理したマイカと比べると高純度で白色度が高く、それ自体くすみのない粉末が得られる.このようなマイカを実際の製品に配合することにより、透明感が演出できる.(南孝司)

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