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ケラチノサイト [keratinocyte]

表皮の大部分を占め、角化という特殊な分化を示す細胞で、表皮角化細胞、表皮細胞、角化細胞ともいう.何層にも重なった構造を示すが、この細胞は表皮の一番下にある基底細胞が分裂を繰り返すことによってつくられている.基底層でつくられた細胞は、最初は核をもった細胞であるが、有棘細胞(有棘層*)、顆粒細胞(顆粒層)と次々に形を変えながら、約4週間で核のない平らな角層細胞になり、一番上の角層に押し上げられていく.そしてこの角層に、さらに2週間とどまって皮膚を保護するために働き、やがて役目が終わると垢(あか)やふけとなってはがれていく.最下層の基底細胞は1層で基底膜に接し、中心に核をもった円柱状の細胞で、約2週間に1回分裂して新しい細胞を生み出している.新しい細胞をつくるのに必要な栄養分は、体内から毛細血管を通して運ばれてくる.基底細胞の分裂で生まれた細胞の一方は、有棘細胞となり、数層重なって有棘層を形成する.細胞どうしがデスモソームとよばれる接着構造を通して接合しており、細胞内ではそこにケラチン線維が結合し、顕微鏡下ではこれが棘(とげ)のように見えるため、この名がある.有棘層では、顆粒層や角層を形成するのに必要な物質がつくられているが、はっきりと形態が確認できるものには層板顆粒(オドラント小体)がある.これは有棘層上層から顆粒層において出現する.内部には層状の脂質を有し、それを細胞外に放出し、相互に融合することにより、細胞膜を外から覆うようになる(細胞間脂質).さらに分化が進み、顆粒細胞になると細胞膜は肥厚し、ケラトヒアリン顆粒が出現してくる.これは顆粒細胞の由来となっているもので、天然保湿因子(NMF)の原料となるフィラグリンとよばれる物質が含まれている.角化の最終過程である顆粒細胞から角層細胞への変化は非常に劇的で、細胞の核や細胞内小器官は消失し、強化された細胞膜と内部をケラチンパターンとよばれる構造が占めるようになる.この過程ではいわば生きている細胞から死んだ細胞へと変化していくわけであるが、表皮の防御機能を考えた場合、ケラチノサイトが分化して正常な死を迎えてはじめて表皮のもっとも重要な役割(外界に対する生体の防御機構)が完成する.(→総論6章)(日比野利彦)

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