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天然保湿因子 [natural moisturizing factor]

皮膚に元来備わっている保湿成分の総称.自然保湿因子ともいい、NMFと略記される.成分としては、アミノ酸類、ピロリドンカルボン酸(およびその塩)、尿素、ミネラル塩類、有機酸(およびその塩)などの低分子である.アミノ酸およびその誘導体が大半を占めるため、その挙動などについてはよく研究されている.角層に含まれるNMFの量が減少すると、角層保湿機能が低下し、乾燥肌になりやすい.実際に、冬季の乾燥肌、老人性乾皮症、アトピー性乾皮症などにおいて角層中のアミノ酸含量が低下し、角層水分量が低下することが報告されている.
角層中アミノ酸の組成
角層にはケラチンなどのタンパク質が多く含まれているが、遊離アミノ酸も存在し、これがNMFとして機能し(図1)、セリンやグリシンが多く含まれている.また、グルタミンの代謝によって生じる保湿性の高いピロリドンカルボン酸も多く含まれている.
角層中アミノ酸の由来
角層中アミノ酸は、顆粒層で産生されるプロフィラグリン(→フィラグリン)におもに由来する.プロフィラグリンはケラチノサイト(表皮角化細胞)内でケラトヒアリン顆粒に蓄えられ、表皮ターンオーバーに従って角層細胞に移行してからフィラグリンに変換される.さらにはタンパク質構成単位であるアミノ酸にまで分解され、一部はさらに代謝を受けて、角層内でNMFとして機能する(図2).したがって、角層中アミノ酸組成は、フィラグリンを構成するアミノ酸組成にほぼ一致する.
角層におけるアミノ酸代謝
フィラグリンの分解によって生成したアミノ酸のいくつかは、角層内でさらに代謝を受ける.グルタミンからは、より保湿性の高いピロリドンカルボン酸が、ヒスチジンからはtrans-ウロカニン酸が、アルギニンからは尿素とオルニチンが、アスパラギン酸からはアラニンが、それぞれ生成する.これらのアミノ酸の変換は、ケラチノサイトの異常な増殖を伴う肌荒れによって低下し、角層中のアミノ酸代謝過程を示す重要なマーカーとなる.すなわち、不全角化(→角化)を伴うような角層においては、アミノ酸量が低下するのみならず、アミノ酸変換率も低下する.(平尾哲二)

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