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抗酸化剤 [antioxidant]

抗酸化剤はその作用から大きく二つに分けることができる.酸化ストレスの原因となる種々の活性酸素およびフリーラジカルの消去を行う予防的な抗酸化剤と、ラジカルによる過酸化反応の連鎖開始反応を抑制する、あるいは過酸化反応の連鎖成長反応を阻止するラジカル捕捉型抗酸化剤である.予防的な抗酸化剤としては生体内にすでに存在しているスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼグルタチオンペルオキシダーゼに代表される抗酸化系酵素群、トランスフェリンなどに代表される金属キレート剤がある.そのほか生体由来抗酸化成分としてグルタチオン、また亜鉛、カドミウム、銅、銀、金などの重金属によって生体内で合成されるメタロチオネインやチオレドキシンがある.メタロチオネインはスーパーオキシドを、チオレドキシンは生体内においてH2O2を消去する可能性が考えられている.また、哺乳類における含硫アミノ酸代謝過程に存在するチオタウリンは、一重項酸素捕捉作用があることが報告されている.ラジカル捕捉型抗酸化剤として働く物質としては、抗酸化ビタミン類のビタミンC、ビタミンE、カロテノイドがある.代表的なラジカル捕捉型抗酸化剤であるビタミンCあるいはアスコルビン酸(AsA)は壊血病の予防に関与したビタミンとして古くから知られてきた.AsAが内在性の水溶性抗酸化剤として活性酸素、フリーラジカルの消去に優れた作用をもつことが明らかにされている.アスコルビン酸は生体内で生じたラジカルの終末的な抗酸化剤として働くと考えられている.また、1922年に発見されたビタミンEは代表的な脂溶性抗酸化剤であり、ビタミンEにはα−、β−、γ−、δ−トコフェロールとトコトリエノールの8種類がある.このうちα−トコフェロールがもっとも生理活性が高いことがわかっている.ビタミンEはフリーラジカルを、みずからがビタミンEラジカルになることで消去する.ビタミンEラジカルは二量体をつくることにより、フリーラジカルを完全に消去する.ビタミンCは、抗酸化剤として働いたビタミンEを再生するので、ビタミンEとビタミンCは相乗的な抗酸化作用を示すことが明らかになっている.β−カロテンに代表されるカロテノイドは、基本構造として長い共役二重結合をもつ炭素数40のイソプレノイド骨格を有する色素で、600種類ものカロテノイドが見出されている.カロテノイドは植物により合成され、動物に摂取された一部は生体内においてビタミンAに変換される.このことから一部のカロテノイドはプロビタミンAともよばれる.カロテノイドには一重項酸素(→フリーラジカル)捕捉作用がある.植物中のポリフェノール類は抗酸化剤として働くことはよく知られている.とくに、緑茶に多く含まれているエピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートは高い活性酸素消去作用、抗酸化作用がある.そのほか、植物に含まれるアピゲニン、カンフェロール、ミリセチン、ケルセチンのようなフラボノイドも抗酸化剤として働く(図).(正木仁)

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