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礎質 [ground substance]
真皮のコラーゲン線維(膠原線維)やエラスチン線維(弾性線維)の間を埋め、皮膚の軟らかさや真皮の水分などを保っているもの.基質ともいう.この主成分は水であるが、その水が自由に拡散しないようにコロイド*状態に維持して組織の形態を保っているのは、プロテオグリカン(PG)の働きによるものである.PGはコアになるタンパク質にグリコサミノグリカン(GAG)の側鎖が多数伸びた複合体で、小さな枝をたくさん出した樹木のような構造をしている巨大分子である.このGAGの周囲に多くの水分子を捕らえている.ヒト皮膚では、コンドロイチン硫酸を側鎖にもつバーシカン、デルマタン硫酸をもつデコリン、ヘパラン硫酸をもつパーレカンなどのPGが存在し、それぞれ存在場所や機能が異なっている.真皮乳頭層にはコアタンパク質にヒアルロン酸結合ドメインをもつバーシカンが存在し、ヒアルロン酸と結合してさらに巨大な複合体となっている.また、デコリンはコラーゲン線維に会合して存在し、コラーゲン線維の太さを制御していることが知られている.PGの成分GAGの含有量の違いによりPGの性質は変化する.GAGはすべて強いマイナス荷電であるため、PG全体がマイナス荷電の集合体として機能しているが、そのため水分子を捕捉しているPGが排斥し合うことにより、組織圧が保たれて真皮組織そのものが膨らむ方向に向かい、また結合している水分子により粘性が維持されることになる.線維成分のみでは硬い構造しかとれないが、礎質がその間に存在することによって弾性や粘性が生じて、液性の因子も拡散することができ、さらに細胞も動くことができるようになる.なお、コラーゲン線維もエラスチン線維も礎質も産生するのはおもに線維芽細胞である.産生され、細胞外に分泌されてそれぞれの構造を構築し、さらに相互に作用し合うことにより、真皮組織の支持体としての堅ろうさや柔らかさ、さらには細胞の成育環境を形成して皮膚を正常に維持している.(西山敏夫)